アニポケ転生者物語 作:投稿者
嵐が去った後のアーシア島は、まるで何事もなかったかのように、穏やかで温かな空気に包まれていた。
島民たちは救世主であるサトシを囲んでお祭りの続きを始め、フルーラも「案外やるじゃない」と、少しだけ素直になってサトシを祝福していた。
俺は、賑やかな広場から少し離れた、海辺の切り立った岩場に一人でいた。
隣には、今回の大戦で死力を尽くしてくれた相棒たちが勢揃いしている。
「みんな、本当にお疲れ様。……怖かっただろ?相手は神様だったんだからな」
フシギバナが重厚な足音を立てて寄り添い、ウインディが潮風に吹かれながら、満足げに鼻を鳴らす。カイリューは空を見上げ、ルギアたちが去っていった水平線を、どこか誇らしげにじっと見つめていた。
「|キュイッ《私たちは、主を信じていただけよ。あなたが前を向く限り、私たちはどこまでも飛べる》」
カイリューが優しく鳴いた。彼女の瞳には、かつてのミニリュウの頃の面影はなく、伝説の龍としての強さと慈愛が宿っていた。
「……ありがとう」
俺は、ポケットから二つの宝物を取り出した。
ニューアイランドでミュウツーから託された、青白く輝く『水晶の欠片』。
そして先ほど、ルギアが去り際に空から落としていった、銀色に輝く『銀色の羽』。
この二つのアイテムは、俺がこの世界で「物語」を書き換え、神と呼ばれる存在たちと心を通わせたという、何よりの証明だ。これらは単なる記念品ではない。俺たちの魂に刻まれた、強さと優しさの結晶なのだ。
「ミナト!」
背後から声がした。サトシ、カスミ、そしてケンジだ。
「なんだ、こんなところでしんみりしてたのか?お祭りの続き、行こうぜ!」
サトシがニカっと笑う。その笑顔には、世界を救った英雄としての驕りなど、欠片もなかった。
「いや、これからのことを考えてたんだ。……俺たちの旅も、一つの大きな区切りだなと思ってな」
「俺は一度マサラタウンに戻って、オーキド博士に頼まれたお使いがあるんだ。このGSボールを、ジョウト地方にいるガンテツさんって人に届けてくれってさ。だから、次はジョウト地方を旅することになるぜ!」
サトシの瞳は、既に次の冒険を見据えていた。
「ジョウトか。いいな。俺も行きたい場所だ」
「ミナトはどうするの?またシルフの本社へ戻って、テストの日々なの?」
カスミが少し寂しそうに尋ねる。
俺は少し考えてから、首を横に振った。
「いや、俺はもう少し、このオレンジ諸島周辺を調査してから行くよ。テスターとして、まだ確認したいデータがたくさんあるし……何より、まだ見ぬポケモンたちにもっと会いたい。俺の旅は、まだ終わっちゃいないんだ」
「そっか!じゃあ、またどこかで絶対に会おうぜ!」
サトシが手を差し出してくる。俺は、その手を力強く握り返した。
「ああ。次はもっと強くなったお前と、本気のフルバトルができるのを楽しみにしてるよ」
ケンジも、俺の横に来て深々と頭を下げた。
「ミナト君、同行させてくれて本当にありがとう。君のポケモンたち、特にあのバサギリの進化データは、僕のこれからの観察眼をさらに鋭くしてくれたよ。……いつか、オーキド博士にこのスケッチを見せるのが楽しみだ。……おっと、サトシ君のケンタロス30匹のスケッチもね!」
「はは、博士もきっと驚くよ」
夕日が、海面を真っ赤に染め上げていく。
俺たちは、それぞれの船に乗り込み、アーシア島を後にした。
振り返ると、アーシア島のシルエットが小さくなっていく。
そこには確かに、神々が住まい、命の旋律が響いていた。
そして、俺がこの世界の一部となり、歴史を動かしたという実感が、心地よい重みとなって胸に残っていた。
俺は前を向いた。
これから待っている、新しい地方、新しい仲間、そしてまだ見ぬ「現実」。
どんな困難が待っていようとも、俺とこの最高の相棒たちなら、きっと乗り越えていける。
「行くぞ、ラプラス。……全速前進だ!」
「キューッ!!」
ラプラスが力強く波を切り、オレンジの海を滑るように進み出す。
眩しい太陽が沈み、代わりに輝き始めた一番星。
俺たちの未来は、あの星のように、どこまでも明るく、そして高く輝いている。