アニポケ転生者物語   作:投稿者

121 / 344
第108話

嵐が去った後のアーシア島は、まるで何事もなかったかのように、穏やかで温かな空気に包まれていた。

島民たちは救世主であるサトシを囲んでお祭りの続きを始め、フルーラも「案外やるじゃない」と、少しだけ素直になってサトシを祝福していた。

 

俺は、賑やかな広場から少し離れた、海辺の切り立った岩場に一人でいた。

隣には、今回の大戦で死力を尽くしてくれた相棒たちが勢揃いしている。

 

「みんな、本当にお疲れ様。……怖かっただろ?相手は神様だったんだからな」

 

フシギバナが重厚な足音を立てて寄り添い、ウインディが潮風に吹かれながら、満足げに鼻を鳴らす。カイリューは空を見上げ、ルギアたちが去っていった水平線を、どこか誇らしげにじっと見つめていた。

 

「|キュイッ《私たちは、主を信じていただけよ。あなたが前を向く限り、私たちはどこまでも飛べる》」

カイリューが優しく鳴いた。彼女の瞳には、かつてのミニリュウの頃の面影はなく、伝説の龍としての強さと慈愛が宿っていた。

 

「……ありがとう」

 

俺は、ポケットから二つの宝物を取り出した。

ニューアイランドでミュウツーから託された、青白く輝く『水晶の欠片』。

そして先ほど、ルギアが去り際に空から落としていった、銀色に輝く『銀色の羽』。

 

この二つのアイテムは、俺がこの世界で「物語」を書き換え、神と呼ばれる存在たちと心を通わせたという、何よりの証明だ。これらは単なる記念品ではない。俺たちの魂に刻まれた、強さと優しさの結晶なのだ。

 

「ミナト!」

 

背後から声がした。サトシ、カスミ、そしてケンジだ。

 

「なんだ、こんなところでしんみりしてたのか?お祭りの続き、行こうぜ!」

サトシがニカっと笑う。その笑顔には、世界を救った英雄としての驕りなど、欠片もなかった。

「いや、これからのことを考えてたんだ。……俺たちの旅も、一つの大きな区切りだなと思ってな」

 

「俺は一度マサラタウンに戻って、オーキド博士に頼まれたお使いがあるんだ。このGSボールを、ジョウト地方にいるガンテツさんって人に届けてくれってさ。だから、次はジョウト地方を旅することになるぜ!」

サトシの瞳は、既に次の冒険を見据えていた。

 

「ジョウトか。いいな。俺も行きたい場所だ」

「ミナトはどうするの?またシルフの本社へ戻って、テストの日々なの?」

カスミが少し寂しそうに尋ねる。

 

俺は少し考えてから、首を横に振った。

「いや、俺はもう少し、このオレンジ諸島周辺を調査してから行くよ。テスターとして、まだ確認したいデータがたくさんあるし……何より、まだ見ぬポケモンたちにもっと会いたい。俺の旅は、まだ終わっちゃいないんだ」

 

「そっか!じゃあ、またどこかで絶対に会おうぜ!」

サトシが手を差し出してくる。俺は、その手を力強く握り返した。

 

「ああ。次はもっと強くなったお前と、本気のフルバトルができるのを楽しみにしてるよ」

 

ケンジも、俺の横に来て深々と頭を下げた。

「ミナト君、同行させてくれて本当にありがとう。君のポケモンたち、特にあのバサギリの進化データは、僕のこれからの観察眼をさらに鋭くしてくれたよ。……いつか、オーキド博士にこのスケッチを見せるのが楽しみだ。……おっと、サトシ君のケンタロス30匹のスケッチもね!」

 

「はは、博士もきっと驚くよ」

 

夕日が、海面を真っ赤に染め上げていく。

俺たちは、それぞれの船に乗り込み、アーシア島を後にした。

 

振り返ると、アーシア島のシルエットが小さくなっていく。

そこには確かに、神々が住まい、命の旋律が響いていた。

そして、俺がこの世界の一部となり、歴史を動かしたという実感が、心地よい重みとなって胸に残っていた。

 

俺は前を向いた。

これから待っている、新しい地方、新しい仲間、そしてまだ見ぬ「現実」。

どんな困難が待っていようとも、俺とこの最高の相棒たちなら、きっと乗り越えていける。

 

「行くぞ、ラプラス。……全速前進だ!」

 

「キューッ!!」

 

ラプラスが力強く波を切り、オレンジの海を滑るように進み出す。

眩しい太陽が沈み、代わりに輝き始めた一番星。

俺たちの未来は、あの星のように、どこまでも明るく、そして高く輝いている。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。