アニポケ転生者物語   作:投稿者

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【閑話】波音の記憶、そして群れへの帰還

カイリューの誇り

三鳥の合体攻撃『雷火氷結の三重奏』を回避した直後のことだ。

俺はカイリューの背中で、彼女の肩が微かに震えているのを感じた。

 

「カイリュー、大丈夫か?……無理をさせたな」

 

カイリューは首を振り、力強く翼を羽ばたかせた。

「|キュイッ《怖くないわ。ただ……あの鳥たちの悲しみが、伝わってきただけ》」

 

彼女は、暴走する三鳥の中に、かつての自分と同じ「強さゆえの孤独」を感じ取っていたのかもしれない。

「(優しいな、お前は……)」

 

俺は彼女の温かな背中を撫でた。彼女がいるから、俺は神々の戦場に立っていられる。その事実に、改めて感謝した。

 


ジラルダンの最期

飛行船が海に没した瞬間、俺は窓越しにジラルダンの姿を見た。

彼は、墜落する船内でもなお、一つのコレクション――ルギアのカードを手放そうとはしなかった。

 

「(彼は彼なりに、何かを愛していたのかもしれないな。……歪んだ形ではあったけれど)」

 

だが、命を弄ぶ芸術など、この世界には必要ない。

俺はポリゴン2を回収し、沈みゆく要塞に別れを告げた。

 


再会の海

アーシア島の戦いが終わり、平和を取り戻したオレンジ諸島の海。

穏やかな潮風が吹く中、前方の海域に不自然な霧が立ち込め始めた。

 

「ミナト、あそこを見てくれ!」

サトシが指差す先。霧の向こうから、無数の巨大な影が浮かび上がってきた。

それは、ラプラスの大群だった。

 

「ラプラスの群れだ!……もしかして」

 

サトシの予感は的中した。

サトシのモンスターボールが勝手に開き、中から子供のラプラスが飛び出したのだ。

「キュー!キュー!」

子供のラプラスは、群れの中の一匹――ひときわ大きな母親らしきラプラスを見つけ、嬉しそうに鳴きながら泳ぎ寄っていった。

 

「お母さんだ!やっと会えたんだな!」

サトシが歓声を上げる。

 

だが、群れのリーダーらしき雄のラプラスが、俺たちの前に立ちはだかり、警戒して威嚇の声を上げた。以前、人間に虐められていた経験があるのかもしれない。彼らにとって、人間はまだ信じられない存在なのだ。

 

「(俺の出番だな)」

 

俺は、自分の相棒のラプラスをボールから出した。

「ラプラス、あいつらに伝えてくれ。俺たちは敵じゃない。あの子を家族の元へ帰しに来たんだって」

 

「キューーーッ……」

 

俺のラプラスが、優しく、そして威厳のある声で群れに語りかける。

海を渡り、嵐を越え、神々と共に戦った彼女の声には、不思議な説得力があった。

リーダーのラプラスも、次第に警戒を解き、俺のラプラスと首を交差させて挨拶を交わした。

 


涙の別れ

「ラプラス……。本当にお別れだな」

 

サトシは、子供のラプラスの首を強く抱きしめた。

「お前は、これから家族と一緒に暮らすんだ。もう、怖い思いはさせないからな。……お母さんを大切にしろよ」

 

「キュー……」

ラプラスも、別れを惜しむようにサトシの頬に何度もすり寄る。

オレンジ諸島の冒険。不慣れな波乗りレースから始まり、氷の山を越え、最後は伝説の神々と対峙した。

短い間だったが、彼らは種族を超えた本当の家族だった。

 

「行け!お母さんが待ってるぞ!」

 

サトシが力強く背中を押すと、ラプラスは一度だけ、俺たちの方を振り返って高らかに鳴いた。

そして、母親の元へと泳ぎ出し、群れの中へと溶け込んでいった。

ラプラスの群れは、夕日を浴びながら、海の彼方へとゆっくりと消えていった。

 

「……元気でな」

サトシは、袖で涙を拭いながら、いつまでも手を振っていた。

 

俺は、その横顔を静かに見守っていた。

出会いがあれば、別れがある。それがトレーナーを、そして人間を強くする。

サトシはまた一つ、命の重みと優しさを知ったのだ。

 


マサラへの帰還と、新たなる誓い

俺たちはついにマサラタウンの港へと到着した。

数ヶ月前、この港から新しい世界へ飛び出した時のことが、昨日のことのように思い出される。

 

「さて、と。俺は一度オーキド博士のところへ行ってくるよ」

サトシが、GSボールの入ったリュックを背負い直した。

「ああ。ガンテツさんのところへ行く準備、しっかりしろよ」

 

「ミナトはどうするんだ?」

カスミが尋ねる。

 

「俺は……もう少し、この海の空気を感じてから行くよ。テスターとしてのレポートもまとめなきゃいけないしな」

 

サトシ、カスミ、ケンジは研究所へ向かって走り出した。

俺は一人、夕暮れの港に残り、静かに目を閉じた。

 

懐には、ミュウツーの『水晶の欠片』と、ルギアの『銀色の羽』。

そして、心にはオレンジ諸島で出会った全ての仲間たちの記憶。

 

「(ジョウト地方、か)」

 

サトシは、オーキド博士に頼まれたGSボールのお使いで、ジョウト地方へ向かう。

俺もまた、シルフから新しい指令……ジョウト地方における、より深い生態系調査とロケット団残党の動向調査を任されることになるだろう。

 

「行くぞ、みんな」

 

俺は、ボールを一つずつ撫でた。

フシギバナ、ポリゴン2、カイリュー、ゲンガー、ウインディ、そしてラプラス。

俺のラプラスは、同族との別れを見届けたことで、どこか吹っ切れたような、清々しい顔をしていた。

 

「次の冒険が、俺たちを呼んでいる」

 

俺は、マサラタウンの潮風を背に受けながら、西の空を見据えた。

そこには、まだ見ぬジョウトの風が吹いているはずだ。

 

 

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