アニポケ転生者物語 作:投稿者
第109話
アーシア島での伝説の激闘を終え、俺はラプラスと共にジョウト地方へと続く大海原を南西に進んでいた。
ルギアから授かった『銀色の羽』と、ミュウツーから託された『水晶の欠片』。
ポケットの中で微かな熱を放つ二つの証は、俺が歩んできた道が、単なる夢物語ではないことを証明してくれている。
「
ラプラスが、穏やかな海面に首を伸ばして鳴いた。
「ああ。カントーの力強い海風とは違う、どこか優しくて、懐かしい匂いだ」
ジョウト地方。歴史と伝統が息づくその土地には、まだ見ぬポケモンたちが数多く生息している。
テスターとしての新しい任務、そして一人のトレーナーとしての新たな挑戦。
俺の胸は、期待と少しの緊張で高鳴っていた。
そんな時だった。
水平線の向こうから、不自然なほど白い煙が立ち上っているのが見えた。
「なんだ、あれは……?」
近づいてみると、それは海上を漂流する一つの小型コンテナだった。
どうやらどこかの輸送船から落下したか、あるいは密猟者が放棄したものらしい。
コンテナの側面には、無理やりこじ開けられたような跡があり、そこから微かに「声」が漏れていた。
「ギ、ギラス……!!」
「(中に誰かいるのか!?)」
俺はラプラスをコンテナに横付けさせ、中を覗き込んだ。
薄暗いコンテナの隅。ボロボロになった梱包材に埋もれるようにして、一匹の小さなポケモンが蹲っていた。
「ヨーギラス……?」
岩を食べる習性を持つ、地底ポケモン。将来はバンギラスへと進化する、ジョウト最強の一角だ。
だが、その姿は俺の知っているヨーギラスとは明らかに違っていた。
通常はくすんだ緑色をしているはずの体が、夕闇のような深い紫を帯びた、神秘的な緑色に輝いている。
「色違いのヨーギラス……。なんて綺麗なんだ」
だが、見惚れている場合ではなかった。
ヨーギラスの足は鋭い傷跡で深く裂け、高熱を出しているようだ。意識も朦朧としており、俺の姿を認めると、最後の力を振り絞るようにして小さな牙を剥いた。
「大丈夫だ。俺は敵じゃない。……ハピナス、出てきてくれ!」
俺はハピナスを呼び出した。
「ハピナス、『いやしのはどう』だ。それから、『リフレッシュ』も頼む」
ハピナスの温かな光が、ヨーギラスの体を優しく包み込む。
猛烈な拒絶反応を示していたヨーギラスだったが、痛みが和らぐにつれて、次第にその強張っていた体から力が抜けていった。
「ギィ……」
数分後、ヨーギラスはゆっくりと目を開けた。
俺の顔をじっと見つめる、鋭くも賢明そうな瞳。
彼は、自分が人間に捕らえられ、捨てられ、そして今、別の人間に助けられたことを理解しようとしているようだった。
「ひどい目に遭ったな。……もう安心だ。ここは海の上だけど、もうすぐ陸が見える」
俺は、ウチキド博士の研究所でもらった最高級の栄養補助食品を取り出し、小さく砕いてヨーギラスの口元に運んだ。
ヨーギラスは一瞬ためらったが、一口食べると、その栄養価の高さに驚いたように目を丸くし、次々と平らげていった。
「(食欲が出てきたな。これなら大丈夫だ)」
俺はポリゴン2を起動し、ヨーギラスのデータをスキャンした。
『解析完了。個体名:ヨーギラス。極めて高い潜在能力を確認。……ただし、精神的に深い孤独と、人間への強い不信感を抱えています。信頼関係の構築には時間を要すると推測されます』
「ああ、分かってる。無理強いはしないさ」
食後、体力を取り戻したヨーギラスは、立ち上がってコンテナの縁まで歩き、俺を見上げた。
そして、意外な行動に出た。
俺の腰にある空のモンスターボールを、自らの頭でコツンと叩いたのだ。
「……いいのか?俺と一緒に来て」
ヨーギラスは無言で、しかし力強く頷いた。
助けてもらった恩を返すためか、それとも、この「現実」の中で俺という存在に興味を持ったのか。
光がヨーギラスを包み、ボールの中に収まった。
カチッ。
「ヨーギラス、ゲットだ……」
新しい地方へ足を踏み入れる前に、俺は最高の相棒を手に入れた。
孤高の幼龍。
この出会いが、ジョウトの旅をどんな色に染めていくのか。
俺は、水平線の先にうっすらと見え始めたジョウトの海岸線を見つめながら、決意を新たにするのだった。