アニポケ転生者物語 作:投稿者
「見えてきたぞ!あれがジョウト地方だ!」
俺の声に、ラプラスが嬉しそうに鳴き、速度を上げた。
緑豊かな丘陵地帯と、点在する白い風車。カントーのマサラタウンを思わせるのどかな風景だが、漂ってくる空気の密度がどこか違う。古き良き伝統が、大地そのものに染み付いているような感覚だ。
俺たちはワカバタウン近郊の、静かな入り江に上陸した。
砂浜に降り立ち、大きく背伸びをする。
「ふぅ……ようやく着いたな。ラプラス、長い船旅をご苦労様」
俺はラプラスの首を撫で、ボールに戻そうとした。その時だった。
ラプラスの大きな背中の、甲羅の影から「プシュッ!」と小さな水鉄砲が飛んできた。
「うわっ!?なんだ?」
驚いて足元を見ると、一匹の小さな水色のポケモンが、ラプラスの影からひょっこりと顔を出していた。
タツノオトシゴのような姿。くるんと丸まった尻尾。
「タッツー?」
オレンジ諸島の海域で見かける、水ポケモンのタッツーだ。
どうやら、アーシア島を出発する際か、あるいは道中で、俺のラプラスのことを母親か何かと間違えて、こっそり背中にしがみついてついてきてしまったらしい。
「
タッツーは慌てて砂浜の波打ち際へ逃げようとしたが、慣れない陸地に足(尾)を取られ、あえなく転倒した。その拍子に、口からピュッと小さな墨を吐いてしまい、自分で真っ黒になっている。
「あはは、ドジなやつだな」
俺は苦笑しながら歩み寄り、ハンカチでタッツーの汚れを拭いてやった。
「お前、オレンジ諸島からはるばるついてきちゃったのか?」
「|タッ……《だって、このポケモンさん、すごく優しそうだったんだもん》」
タッツーは、ラプラスの大きな瞳を見つめ、甘えるようにそのヒレに体を擦り寄せた。
俺のラプラスも、困ったような、しかし愛おしそうな顔で、タッツーの頭をやさしく鼻先で突いた。
「(どうやら、ラプラスのことが相当気に入ったみたいだな)」
ポリゴン2がデバイスから告げる。
『報告。当該個体は、通常のタッツーよりも知的好奇心が強く、新しい環境への適応能力が高いと推測されます。……また、当チームへの同行を強く希望しているようです』
「そうか。……なら、放っておくわけにもいかないな。ジョウトの海は、お前にとっちゃ知らない場所だらけだろうし」
俺は、空のボールをタッツーの前に置いた。
「俺と一緒に来るか?ラプラスも一緒だぞ」
タッツーは、目を輝かせると、迷うことなくボールのボタンを叩いた。
カチッ、と小気味よい音が砂浜に響く。
「タッツー、ゲットだぜ」
ジョウト二匹目の仲間。
進化すれば、キングドラという最強のドラゴンタイプの一角になる可能性を秘めている。
「(ヨーギラスにタッツーか。ジョウトの旅は、序盤から戦力が充実しすぎてるな)」
俺は新しく仲間になった二匹のボールをベルトに収め、丘の上にある町――ワカバタウンを目指して歩き出した。
丘を登りきると、そこには「始まりを告げる風が吹く町」の看板が立っていた。
ジョウト地方、ワカバタウン。
ここから、サトシたちとの再会、そして新しい冒険が本当の意味で始まろうとしていた。
「よし、まずはウツギ博士の研究所だな!」
俺は、新しい風を全身に受けながら、活気に満ちた町の中へと足を踏み入れた。