アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第113話

キキョウシティ。

古風な街並みの中に、ひときわ高くそびえ立つ木造の塔。それが、マダツボミの塔だ。

中心にある巨大な柱が風に揺れ、地震を逃がすというその構造は、まさにジョウトの伝統的な知恵の結晶だ。

 

「よし!俺も特訓だ!行こうぜ、ピカチュウ!」

サトシが元気よく中へ入っていく。俺たちもそれに続いた。

 

塔の内部は、揺れる柱の影響で常に床が微かに振動していた。

そこでは、多くの修行僧たちが、マダツボミを連れて瞑想やバトルに励んでいる。

 

「待ちなさい。ここは神聖な修行の場。……挑戦者の方々ですね?」

現れたのは、落ち着いた雰囲気の年配の僧侶、コウエンだった。

 

「はい。ジム戦の前に、自分たちの力を試したいんです」

俺が言うと、コウエンは優しく微笑んだ。

 

「よろしい。では、この『揺れる試練』、受けて立ちましょう」

 

コウエンが繰り出したのは、しなやかな体を持つマダツボミ。

「まずはそちらの少年から。かかってきなさい」

 

「俺からか!行くぜ、チコリータ!」

サトシが繰り出したのは、ワカバタウン近郊でゲットしたチコリータだ。

 

「チコリータ、『つるのムチ』!」

チコリータがツルを振るうが、マダツボミは塔の揺れに合わせて体をくねらせ、攻撃を軽々とかわす。逆に、足場が揺れて踏ん張りの効かないチコリータは、バランスを崩して転倒してしまう。

 

「くそっ、なんで当たらないんだ!」

サトシが焦る。

 

「サトシ、床を見ろ!」

俺が声をかけた。

「この塔は揺れている。力任せに攻撃しても、軸がブレて当たらないぞ。揺れのリズムを感じるんだ!」

 

「リズム……?」

サトシは深呼吸をして、床の振動に意識を集中させた。

「……そうだ、ピカチュウ!チコリータにリズムを教えてやれ!」

 

「ピカッ!」

ピカチュウが尻尾で床を叩き、リズムを刻む。チコリータはその音に合わせてステップを踏み始めた。

 

「今だ!『はっぱカッター』!」

揺れと同調した動きから放たれた葉っぱは、マダツボミの回避行動を読み切って命中した。

 

「よし!やったぞ!」

 

「見事です。……では、次はこちらの青年」

コウエンが俺の方を向いた。

 

「俺は、こいつで行きます。……ヨーギラス、実戦デビューだ!」

 

俺は、保護したばかりのヨーギラスを繰り出した。

深緑の体が、塔の薄暗い光の中で鈍く光る。

 

「(ヨーギラスは岩・地面タイプ。草タイプのマダツボミには圧倒的に不利だが……)」

 

俺はあえて、相性の悪い相手を選んだ。

新しい仲間が、逆境の中でどう戦うかを見たかったのだ。

 

「ヨーギラス、サトシたちの戦いを見ていただろ?足場の揺れを感じろ!」

 

ヨーギラスは、最初はマダツボミの素早いムチに翻弄されていた。地面タイプ特有の重い動きが、揺れる床ではさらに鈍くなる。

 

「ギ、ギラス……!!」

ムチの一撃を受け、ヨーギラスがよろめく。

 

「諦めるな!お前のその硬い体は、守るためだけにあるんじゃない。攻めるための鎧なんだ!」

 

俺の言葉に、ヨーギラスの瞳に火が灯った。

彼は、揺れる床の振動を逆手に取り、自分の体を独楽のように回転させ始めた。

 

「そうだ!そのまま『あなをほる』!」

 

ヨーギラスが床下に潜り込む。マダツボミは、どこから現れるか分からず困惑する。

次の瞬間、柱の揺れに合わせて、ヨーギラスがマダツボミの真下から飛び出した。

 

「『いわなだれ』!」

 

地中から運んできた岩石を、至近距離から一気に叩きつける。

「マダツ……!?」

マダツボミは岩の重みに耐えきれず、ダウンした。

 

「……見事です。お二人とも、不利な状況を環境の利用と機転で乗り越えましたね」

コウエンが深く頭を下げる。

 

「ありがとう、ヨーギラス。いい戦いだったぞ」

俺が駆け寄ると、ヨーギラスは少し照れくさそうに顔を背けた。だが、その短い尻尾が微かに振られているのを俺は見逃さなかった。

 

「へへっ、ミナトのアドバイスのおかげで、コツが掴めたぜ!」

サトシも嬉しそうだ。

 

「ああ。サトシのチコリータも、いい動きだったよ」

 

マダツボミの塔での修行を終え、俺たちは確かな手応えを感じていた。

 

「よし!この調子でキキョウジムも攻略だ!」

「ああ。……行くぞ、みんな」

 

俺たちは、夕暮れのキキョウシティを見下ろしながら、次なる戦い――ジムリーダー・ハヤトとの決戦に向けて、静かに闘志を燃やすのだった。

 

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