アニポケ転生者物語 作:投稿者
キキョウシティ。
古風な街並みの中に、ひときわ高くそびえ立つ木造の塔。それが、マダツボミの塔だ。
中心にある巨大な柱が風に揺れ、地震を逃がすというその構造は、まさにジョウトの伝統的な知恵の結晶だ。
「よし!俺も特訓だ!行こうぜ、ピカチュウ!」
サトシが元気よく中へ入っていく。俺たちもそれに続いた。
塔の内部は、揺れる柱の影響で常に床が微かに振動していた。
そこでは、多くの修行僧たちが、マダツボミを連れて瞑想やバトルに励んでいる。
「待ちなさい。ここは神聖な修行の場。……挑戦者の方々ですね?」
現れたのは、落ち着いた雰囲気の年配の僧侶、コウエンだった。
「はい。ジム戦の前に、自分たちの力を試したいんです」
俺が言うと、コウエンは優しく微笑んだ。
「よろしい。では、この『揺れる試練』、受けて立ちましょう」
コウエンが繰り出したのは、しなやかな体を持つマダツボミ。
「まずはそちらの少年から。かかってきなさい」
「俺からか!行くぜ、チコリータ!」
サトシが繰り出したのは、ワカバタウン近郊でゲットしたチコリータだ。
「チコリータ、『つるのムチ』!」
チコリータがツルを振るうが、マダツボミは塔の揺れに合わせて体をくねらせ、攻撃を軽々とかわす。逆に、足場が揺れて踏ん張りの効かないチコリータは、バランスを崩して転倒してしまう。
「くそっ、なんで当たらないんだ!」
サトシが焦る。
「サトシ、床を見ろ!」
俺が声をかけた。
「この塔は揺れている。力任せに攻撃しても、軸がブレて当たらないぞ。揺れのリズムを感じるんだ!」
「リズム……?」
サトシは深呼吸をして、床の振動に意識を集中させた。
「……そうだ、ピカチュウ!チコリータにリズムを教えてやれ!」
「ピカッ!」
ピカチュウが尻尾で床を叩き、リズムを刻む。チコリータはその音に合わせてステップを踏み始めた。
「今だ!『はっぱカッター』!」
揺れと同調した動きから放たれた葉っぱは、マダツボミの回避行動を読み切って命中した。
「よし!やったぞ!」
「見事です。……では、次はこちらの青年」
コウエンが俺の方を向いた。
「俺は、こいつで行きます。……ヨーギラス、実戦デビューだ!」
俺は、保護したばかりのヨーギラスを繰り出した。
深緑の体が、塔の薄暗い光の中で鈍く光る。
「(ヨーギラスは岩・地面タイプ。草タイプのマダツボミには圧倒的に不利だが……)」
俺はあえて、相性の悪い相手を選んだ。
新しい仲間が、逆境の中でどう戦うかを見たかったのだ。
「ヨーギラス、サトシたちの戦いを見ていただろ?足場の揺れを感じろ!」
ヨーギラスは、最初はマダツボミの素早いムチに翻弄されていた。地面タイプ特有の重い動きが、揺れる床ではさらに鈍くなる。
「ギ、ギラス……!!」
ムチの一撃を受け、ヨーギラスがよろめく。
「諦めるな!お前のその硬い体は、守るためだけにあるんじゃない。攻めるための鎧なんだ!」
俺の言葉に、ヨーギラスの瞳に火が灯った。
彼は、揺れる床の振動を逆手に取り、自分の体を独楽のように回転させ始めた。
「そうだ!そのまま『あなをほる』!」
ヨーギラスが床下に潜り込む。マダツボミは、どこから現れるか分からず困惑する。
次の瞬間、柱の揺れに合わせて、ヨーギラスがマダツボミの真下から飛び出した。
「『いわなだれ』!」
地中から運んできた岩石を、至近距離から一気に叩きつける。
「マダツ……!?」
マダツボミは岩の重みに耐えきれず、ダウンした。
「……見事です。お二人とも、不利な状況を環境の利用と機転で乗り越えましたね」
コウエンが深く頭を下げる。
「ありがとう、ヨーギラス。いい戦いだったぞ」
俺が駆け寄ると、ヨーギラスは少し照れくさそうに顔を背けた。だが、その短い尻尾が微かに振られているのを俺は見逃さなかった。
「へへっ、ミナトのアドバイスのおかげで、コツが掴めたぜ!」
サトシも嬉しそうだ。
「ああ。サトシのチコリータも、いい動きだったよ」
マダツボミの塔での修行を終え、俺たちは確かな手応えを感じていた。
「よし!この調子でキキョウジムも攻略だ!」
「ああ。……行くぞ、みんな」
俺たちは、夕暮れのキキョウシティを見下ろしながら、次なる戦い――ジムリーダー・ハヤトとの決戦に向けて、静かに闘志を燃やすのだった。