アニポケ転生者物語   作:投稿者

129 / 344
【閑話】新しい風、始まりの調べ

始まりの空

ワカバタウンに到着した翌朝のことだ。

サトシたちと合流する前、俺は一人で町外れの丘の上に立っていた。

ジョウトの風は心地よく、これからの旅への期待を運んでくる。

 

ふと、空を見上げた時だった。

雲の切れ間から、金色の光が差し込んだ。

太陽の光ではない。もっと神々しく、温かな光だ。

 

「……なんだ?」

 

光の中から、巨大な鳥のシルエットが現れた。

七色の翼を広げ、優雅に大空を舞う、伝説のポケモン。

 

「ホウオウ……!」

 

俺は息を呑んだ。アニポケの第1話でサトシが見たという、あの伝説のポケモンが、今、俺の目の前を飛んでいる。

ホウオウは、一瞬だけ俺の方を見た気がした。

そして、キラキラと輝く何かを落とし、虹の彼方へと消えていった。

 

俺は、落ちてきたものを拾い上げた。

七色に輝く、美しい羽。

『にじいろのはね』だ。

 

「(……俺も、選ばれたのか?)」

 

掌の上で輝く羽を見つめながら、俺は震える手を握りしめた。

このジョウトの旅は、ただの調査では終わらない。

伝説に導かれた、運命の旅になる。

そんな予感を胸に、俺は丘を降りた。

 


道中記・ジョウトの洗礼

ワカバタウンからキキョウシティへ向かう道中。

俺たちは、カントーとは異なるジョウト地方の洗礼を受けていた。

 

「うわあ!なんだこの糸!?動けないぜ!」

サトシが、草むらから飛び出してきたイトマルに糸を吐かれ、ミノムシのようになっている。

 

「あはは、サトシ、じっとしてて。今、俺のハピナスが解いてあげるから」

ハピナスが『いやしのすず』を鳴らすと、サトシを縛っていた糸がサラサラと解けていった。

 

「助かったぜ……。ジョウトの虫ポケモン、一癖あるやつが多いな」

サトシが感心したように言う。

「イトマルの糸は、非常に弾力性があって強固だわ。……ひっ!?ちょっとサトシ、あっち!レディバの群れがいるじゃない!こっちに来ないでよー!」

カスミが悲鳴を上げ、サトシの背後に隠れる。相変わらず虫タイプは大の苦手のようだ。

 

俺は、新しく仲間になったヨーギラスをボールから出して、一緒に歩くことにした。

彼はまだ俺の後ろを三歩下がって歩いているが、俺が振り返るたびに、少しだけ尻尾を振って応えてくれるようになった。

 

「(ゆっくりでいい。お前のペースで、俺たちに馴染んでくれれば)」

 

そんな穏やかな道中。

だが、その平穏を破るように、空から不気味な影が降りてきた。

 


鋼の盾と、古代の斧

ある日のキャンプの夜。

俺はバサギリとエアームドを向き合わせた。

 

「お前たち、どちらも『鋼』と『岩』の性質を持っている。……これから、俺たちのチームの防御の要になってほしいんだ」

 

バサギリは無言で斧を研ぎ、エアームドは静かに翼を広げた。

二匹の間には、武人同士のような独特の緊張感が漂っていたが、それは決して敵意ではなかった。

 

『報告。バサギリとエアームドの防御連携シミュレーション、成功率85%を記録。……これにウインディの機動力が加われば、鉄壁の陣形が完成します』

 

ポリゴン2の分析に、俺は満足げに頷いた。

これまでのエース頼みの戦いから、個々の役割を明確にした「軍隊的」な連携へ。

俺の戦術は、ジョウトの地でさらに進化を遂げようとしていた。

 


タッツーの憧れ

ラプラスの影から飛び出してきたタッツーは、今ではチームのアイドル的な存在になっていた。

特に、俺のカイリューのことが大好きらしく、いつも彼女の大きな尻尾に捕まって、空を飛びたそうにしている。

 

タッ、タッ!(いいなあ、あんなに高く飛べて!)

 

カイリューも、自分を慕う小さなタッツーを可愛がり、時折背中に乗せて低空飛行を楽しませていた。

 

「(いつか、お前もあんな風に、龍として覚悟を決める日が来るさ)」

 

俺は、タッツーの小さな背中を見守った。

進化すれば、海と空を繋ぐ最強の龍、キングドラ。

その夢を、俺が叶えてやる。

 


テスターの報告・不穏な予兆

夜、俺は母さんに現状を報告していた。

 

「……そう。ヨーギラスを保護したのね。しかも、色違いなんて」

母さんの声は、少し驚きを含んでいた。

 

「ああ。……でも、気になることが。あのヨーギラスが入っていたコンテナ、シルフの刻印があったんだ。でも、正規のルートじゃない」

 

『……!やっぱり、ジョウトの支社でも、ロケット団の残党が動いている形跡があるわね。サカキが姿をくらましても、幹部たちが組織を維持している可能性が高いわ』

 

「(トップがいなくなっても、悪意の根はまだ深いということか……)」

 

俺は、ミュウツーの水晶を握りしめた。

「……分かってる。俺のやり方で、必ず突き止めるよ」

 

『無理はしないでね、ミナト。……あ、それから。ジョウトの伝説のポケモンについても、何か分かったら教えてちょうだい。特に、"北風の化身"と呼ばれるポケモンのことを』

 

「北風の化身……スイクンか」

 

旅の歯車が、また一つ大きく動き出した。

伝説の影。ロケット団の残滓。

 


西へと続く道

翌朝。

キキョウシティのゲートをくぐり、俺たちはさらなる西を目指して歩き出した。

 

「次はヒワダタウンだ!ヤドンたちに会えるかな?」

「ヤドンの井戸ね。美味しい水があるって聞いたわ」

 

サトシとカスミの会話を横目に、俺はマップを確認する。

32番道路を抜け、繋がりの洞窟を越えれば、そこは職人の町。

 

「行くぞ、相棒たち」

 

俺の呼びかけに、ヨーギラスが短く鳴き、エアームドが鋭く啼いた。

新しい風が、俺たちの背中を優しく、しかし力強く押していた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。