アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第117話

ヤドンの井戸。

地下へと続く階段を降りると、そこにはカビの臭いと、重苦しい機械の駆動音が立ち込めていた。

普段は清らかな水が湧き出るはずの聖域。だが、今のそこは、不法な工事現場のような荒んだ空気に包まれている。

 

「(不自然なエネルギー反応だ……。奴ら、何を持ち込んでるんだ?)」

 

俺はグラス型デバイスを起動し、周囲をスキャンした。

『警告。低周波の音波発信装置を複数検知。ヤドンたちの感覚を麻痺させ、無気力状態に追い込んでいます』

 

「汚い真似を……!」

 

俺たちは岩陰に身を隠しながら、広大な地下空洞の奥へと進んだ。

そこには、無残な光景が広がっていた。

数十匹のヤドンたちが、狭い檻に押し込められ、ぐったりと横たわっている。

そして、白衣を着た男たちが、麻酔銃のようなものでヤドンたちの動きを止め、そのピンク色の尻尾を次々と切り取っていた。

 

「ひどい……!なんてことするのよ!」

カスミが悲鳴に近い声を上げる。

 

「ロケット団!そこまでだ!」

サトシが我慢できずに飛び出した。

 

「おやおや、珍客だな。……いや、シルフのネズミか」

 

檻の奥から、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。

黒いスーツに身を包み、冷徹な笑みを浮かべた男。ロケット団幹部、ランスだ。

 

「サカキ様がいなくなっても、我々のビジネスは止まらない。……ヤドンの尻尾は、ジョウトの闇市場では金よりも高く売れるのだよ。この井戸のヤドンをすべて刈り取れば、組織の再建資金も十分だ」

 

「そんなこと、絶対にさせるか!」

「ピカァッ!」

サトシのピカチュウが、頬から火花を散らして前に出る。

 

だが、その時だった。

俺の腰にあるモンスターボールが、俺の意志を介さずに激しく発光した。

 

「!?ヤドラン、どうした!」

 

カチッという音と共に、ボールから巨大なヤドランが飛び出した。

普段はのんびり屋のヤドラン。だが、今の彼の瞳は、かつてないほどの怒りで真っ赤に染まっていた。

 

「ヤドォォォォン!!」

 

地鳴りのような咆哮。

ヤドランから放たれた凄まじい精神波が、空洞全体の空気を震わせた。

同族が傷つけられ、利用されていることへの、根源的な怒り。

 

「ほう、進化したヤドランか。だが、一匹で何ができる!行け、ゴルバット、マタドガス!」

 

ランスが指示を出す。だが、ヤドランは動かない。

ただ、その右手をゆっくりと、力強く掲げた。

 

次の瞬間、空洞内にあったロケット団の機械や檻が、まるで玩具のように宙に浮き上がった。

 

『警告。ヤドランの脳波エネルギー、測定不能。……これは、通常のサイコキネシスではありません。……怒りによる『覚醒』を確認しました』

 

ポリゴン2のアナウンスが流れる。

ヤドランの周囲に渦巻くサイコパワーは、もはや嵐のようだった。

 

「(すごい……。これがあいつの本気か)」

 

俺は、ヤドランの背中に手を置いた。

「わかった。お前の怒り、俺が引き受ける。……行くぞ、ヤドラン!すべてを薙ぎ払え!」

 

「ヤドォォォォ!!」

 

静かなる守護者が、真の力を解放した。

井戸の奥底で、ロケット団への裁きの一撃が放たれようとしていた。

 

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