アニポケ転生者物語 作:投稿者
ヤドンの井戸。
地下へと続く階段を降りると、そこにはカビの臭いと、重苦しい機械の駆動音が立ち込めていた。
普段は清らかな水が湧き出るはずの聖域。だが、今のそこは、不法な工事現場のような荒んだ空気に包まれている。
「(不自然なエネルギー反応だ……。奴ら、何を持ち込んでるんだ?)」
俺はグラス型デバイスを起動し、周囲をスキャンした。
『警告。低周波の音波発信装置を複数検知。ヤドンたちの感覚を麻痺させ、無気力状態に追い込んでいます』
「汚い真似を……!」
俺たちは岩陰に身を隠しながら、広大な地下空洞の奥へと進んだ。
そこには、無残な光景が広がっていた。
数十匹のヤドンたちが、狭い檻に押し込められ、ぐったりと横たわっている。
そして、白衣を着た男たちが、麻酔銃のようなものでヤドンたちの動きを止め、そのピンク色の尻尾を次々と切り取っていた。
「ひどい……!なんてことするのよ!」
カスミが悲鳴に近い声を上げる。
「ロケット団!そこまでだ!」
サトシが我慢できずに飛び出した。
「おやおや、珍客だな。……いや、シルフのネズミか」
檻の奥から、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。
黒いスーツに身を包み、冷徹な笑みを浮かべた男。ロケット団幹部、ランスだ。
「サカキ様がいなくなっても、我々のビジネスは止まらない。……ヤドンの尻尾は、ジョウトの闇市場では金よりも高く売れるのだよ。この井戸のヤドンをすべて刈り取れば、組織の再建資金も十分だ」
「そんなこと、絶対にさせるか!」
「ピカァッ!」
サトシのピカチュウが、頬から火花を散らして前に出る。
だが、その時だった。
俺の腰にあるモンスターボールが、俺の意志を介さずに激しく発光した。
「!?ヤドラン、どうした!」
カチッという音と共に、ボールから巨大なヤドランが飛び出した。
普段はのんびり屋のヤドラン。だが、今の彼の瞳は、かつてないほどの怒りで真っ赤に染まっていた。
「ヤドォォォォン!!」
地鳴りのような咆哮。
ヤドランから放たれた凄まじい精神波が、空洞全体の空気を震わせた。
同族が傷つけられ、利用されていることへの、根源的な怒り。
「ほう、進化したヤドランか。だが、一匹で何ができる!行け、ゴルバット、マタドガス!」
ランスが指示を出す。だが、ヤドランは動かない。
ただ、その右手をゆっくりと、力強く掲げた。
次の瞬間、空洞内にあったロケット団の機械や檻が、まるで玩具のように宙に浮き上がった。
『警告。ヤドランの脳波エネルギー、測定不能。……これは、通常のサイコキネシスではありません。……怒りによる『覚醒』を確認しました』
ポリゴン2のアナウンスが流れる。
ヤドランの周囲に渦巻くサイコパワーは、もはや嵐のようだった。
「(すごい……。これがあいつの本気か)」
俺は、ヤドランの背中に手を置いた。
「わかった。お前の怒り、俺が引き受ける。……行くぞ、ヤドラン!すべてを薙ぎ払え!」
「ヤドォォォォ!!」
静かなる守護者が、真の力を解放した。
井戸の奥底で、ロケット団への裁きの一撃が放たれようとしていた。