アニポケ転生者物語 作:投稿者
コガネデパートの屋上庭園。
そこで俺たちが見つけたのは、大量の買い物袋を抱えて、噴水の前で途方に暮れている一人の少女だった。
「あー、もう!どっちがジムへの道やったかなぁ……。コガネの街は広すぎて、うちには無理やわぁ……」
ピンク色の髪をなびかせ、独特のアクセントで愚痴をこぼす彼女こそ、コガネジムのジムリーダー、アカネだった。
「あの……アカネさん、ですよね?」
サトシが恐る恐る声をかけると、彼女はパッと表情を明るくした。
「おっ!君ら、もしかして挑戦者!?いやぁ、助かったわー!案内してくれへん?」
……ジムリーダーにジムまで案内されるという奇妙な状況を経て、俺たちはようやくコガネジムへと到着した。
内部は、ピッピの形をした巨大なオブジェがある、ファンシーで近代的なバトルフィールド。だが、そこに漂う緊張感は、これまでのジムとは一線を画していた。
「準備はええ?うちのミルタンク、めちゃくちゃ強いで!」
バトルの火蓋が切られた。ルールは3対3のシングルバトル。まずはサトシの挑戦だ。
アカネの一匹目はニドリーナ。サトシはヒノアラシを繰り出し、スピードを活かした攻撃で先制する。
「ニドリーナ、『どくばり』!」
「ヒノアラシ、かわして『ひのこ』だ!」
激しい応酬の末、ヒノアラシが勝利を収めた。
続いてアカネが出したのはピッピ。
「ピッピ、『ゆびをふる』!」
何が出るか分からないトリッキーな技に翻弄されるが、サトシはワニノコに交代してパワーで押し切った。
「やるやんか!せやけど、ここからが本番や!」
アカネが三匹目を出した瞬間、スタジアムの空気が一変した。
「行け!うちの切り札、ミルタンク!!」
「モォォォォン!!」
丸々とした体格のミルタンクが、重厚な足音を立てて現れた。一見すると可愛らしいが、その筋肉の付き方は尋常ではない。
「ヒノアラシ、『かえんほうしゃ』!」
「ミルタンク、受け流して……『ころがる』や!」
ミルタンクが自らの体を丸め、ボールのような形状になった。そして、高速回転を始める。
一回転、二回転……。回転を増すごとに、ミルタンクの体は巨大な砲弾のようになり、凄まじい速度でフィールドを駆け巡る。
「ヒノアラシ、かわせ!」
だが、一度勢いのついた『ころがる』は、止まらない。壁に当たって反射し、予測不能な軌道で襲いかかってくる。
ドォォン!!
直撃を受けて吹き飛ばされるヒノアラシ。
「ヒノアラシ、戦闘不能!」
「次だ!ワニノコ!」
サトシはワニノコを出すが、さらに威力を増したミルタンクの一撃に、なすすべなく敗北。水鉄砲も回転の勢いで弾かれてしまう。
最後のピカチュウも、フィールドの端に追い詰められ、巨大な肉の塊に押し潰されるようにして沈んだ。
「ピカチュウ、戦闘不能……。よって勝者はジムリーダー、アカネ!」
「うわーん!負けたぁー!」
サトシが泣きつく。だが、それ以上に驚いたのはアカネの反応だった。
「ええっ!?うち、勝っちゃったん?……あかん、なんかサトシ君が一生懸命すぎて、うちまで悲しくなってきたわぁ……うわああぁん!」
「えええっ!?なんで勝った方が泣くのよ!」
カスミのツッコミも虚しく、ジム内は二人の泣き声が響き渡るという、カオスな状況になった。
俺は、フィールドに残されたミルタンクを見つめた。
「(やっぱり強いな……。あの『ころがる』、理屈じゃない暴力だ)」
物理法則を無視した加速。そして、一度でも当てれば手が付けられなくなる連続攻撃。
これを攻略しない限り、次のバッジは手に入らない。
俺は、うなだれるサトシの肩を叩いた。
「サトシ、泣いてる場合じゃないぞ。特訓だ。あの牛を止める方法、一緒に考えようぜ」
俺の中では、既に一つの戦術が組み上がりつつあった。
「物語」の知識と、「現実」の技術。
それを組み合わせた、俺たちなりの『ころがる』攻略が始まろうとしていた。
俺はサトシの手を引き、ジムを後にした。リベンジの炎は、まだ消えていない。