アニポケ転生者物語 作:投稿者
コガネシティでのラジオ塔占拠事件――。
俺たちの迅速な介入と、ポリゴン2が仕掛けていたバックアッププログラムのおかげで、被害は最小限に食い止められた。ロケット団の残党たちは、一網打尽にされる前に蜘蛛の子を散らすように逃げ出していったが、彼らが何を目的としていたのか、その全貌はまだ闇の中だった。
「ふぅ……ようやく落ち着いたな」
事件解決から数日後。
張り詰めていた空気をリフレッシュするため、俺たちはコガネシティの北にある『自然公園』へとやってきた。
今日は、年に一度の『虫取り大会』の開催日だ。
「虫取り大会か!俺、絶対に優勝してやるぜ!」
サトシは、貸し出されたパークボールを握りしめ、やる気満々だ。
「私はパス。虫なんて、見るだけで鳥肌が立つわ……」
カスミは、入り口のベンチで、俺のハピナスと一緒に留守番をすることになった。
「さて、と。俺はテスターとしての仕事をさせてもらうかな」
俺は、今回の大会を「ジョウト固有の虫ポケモンの生態調査」の絶好の機会だと捉えていた。
公園内に足を踏み入れると、そこにはカントーでは見られない豊かな生態系が広がっていた。
「ポリゴン2、スキャン開始。……まずは、あの高い木に止まっている個体からだ」
『了解。対象を捕捉。……個体名:ヤンヤンマ。うすばかげろうポケモン。時速150キロ以上の高速飛行、および羽音による超音波振動を確認』
「(ヤンヤンマか。後にメガヤンマに進化する、将来性の高いポケモンだな)」
俺は、ヤンヤンマが空中で静止(ホバリング)する際の、微細な羽の角度の変化をデータに収めた。その無駄のない動きは、ドードリオの空中機動の参考になりそうだ。
次に、草むらからガサゴソと音がした。
現れたのは、赤い甲羅に黒い斑点を持つ、愛らしいポケモン。
「レディバ……。いや、あっちにいるのはレディアンか」
『レディバ。いつごどりポケモン。非常に臆病で、仲間と群れて行動する習性。……対して、進化形のレディアンは、夜行性でありながら星の光を力に変える特殊な代謝機能を持っています』
俺は、レディバたちが互いに触覚を触れ合わせ、テレパシーのようなもので意思疎通を図っている様子を観察した。
「(集団戦における、完璧な同期システム……。これはシルフの通信規格に応用できそうだな)」
さらに奥へ進むと、木の穴の中に、小さな壷のようなポケモンが隠れていた。
「ツボブ……いや、ツボツボだ」
『ツボツボ。はっこうポケモン。甲羅の中にきのみを蓄え、自身の体液で発酵させてジュースを作る。防御数値は、既知のポケモンの中でもトップクラスです』
俺は、ツボツボが作る「きのみジュース」の成分を少量採取した。
「(驚異的な回復効果だ。ハピナスの薬学研究にも役立つだろう)」
そんな風に俺が地道な調査を続けている間、サトシの方は大騒ぎだった。
「いたぞ!スピアーだ!行け、ピカチュウ!」
サトシは格闘の末、立派な羽を持つスピアーをゲットし、見事に大会で優勝を果たした。
「やったぜー!優勝賞品、『たいようのいし』ゲットだぜ!」
サトシは、手に入れたスピアーを、同じく大会に参加していた虫ポケモン好きの少女・ナナコに「お前の方が可愛がってくれそうだからな」と譲ってあげていた。サトシらしい、潔い決断だ。
「いい調査ができたな、ポリゴン2」
『肯定。ジョウト地方の虫ポケモンは、環境への適応能力がカントーのそれよりも進化している傾向にあります。……非常に有益なレポートが作成可能です』
夕暮れの自然公園。
虫たちの合唱が響く中、俺たちはコガネシティへの帰路についた。
「次はエンジュシティ……。伝説の塔がある街だ」
俺は、ポケットの中の『にじいろのはね』に触れた。
あの時、ワカバタウンの空で見たホウオウの幻。
その真実が、次の街で明らかになるかもしれない。
「(スイクン、ライコウ、エンテイ……。そして、ホウオウ)」
伝説の影が、俺たちの旅を導いている。
俺は、静かな興奮を胸に、相棒たちと共に新しい風の吹く方角へと歩み出した。