アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第134話

「ママを返せ!」

サトシの声が、鋭い結晶に覆われた草原に虚しく響き渡った。

我を忘れて走り出そうとするサトシの肩を、俺とタケシが力任せに押さえつける。

 

「待てサトシ!今の状態で突っ込んでも、あの硬い結晶に弾かれるだけだ!」

「でも、ママが!目の前で連れて行かれたんだぞ!」

サトシの瞳には涙が浮かび、焦燥感で全身が震えている。ピカチュウもまた、主人と同じように激しい怒りの火花を頬から散らしていた。

 

「分かっている。必ず助けに行く。……だが、無策で挑むのは自殺行為だ」

そこに、オーキド博士が険しい表情で駆け寄ってきた。

「サトシ、落ち着くんじゃ。あの現象を引き起こしているのは、謎のポケモン『アンノーン』の集団だ。彼らは人の深層心理、特に純粋な子供の願いを具現化し、世界を書き換える力を持っている」

 

「子供の願い……?」

「この館に住む少女、ミーちゃんの孤独が、この結晶化の引き金になっている可能性が高い。彼女は父親を失った寂しさから、アンノーンの力を借りて理想の世界を創り出そうとしているんだ。……ポケモンを、自分の父親だと思い込んでね」

 

俺は、不気味に輝く塔を見上げた。

「(物語と同じだ。……なら、彼女の心が満たされない限り、この結晶化は止まらない)」

 

俺たちは、結晶化した川を渡り、塔の入り口へと向かった。

地面はガラスのように滑りやすく、所々から鋭い結晶の棘が突き出している。

俺はポリゴン2を起動し、空間の脆弱性を解析させた。

『解析完了。……正面ゲートのエネルギー密度が低下しています。物理的な破壊が可能です』

 

「よし。……バサギリ、出番だ!あの扉をぶち破れ!」

俺が放ったバサギリが、巨大な斧を一閃させた。

音を立てて砕け散る結晶の壁。その奥には、外の世界からは想像もできないほど幻想的な空間が広がっていた。

 

塔の内部は、ミーの記憶や夢がパッチワークのように繋ぎ合わされた、奇妙な世界だった。

最初の一歩を踏み出した場所は、どこまでも続く花畑。だが、その花の一枚一枚がクリスタルで出来ており、風に吹かれて冷たい金属音を奏でている。

「すごい……。中はまるで別世界だわ」

カスミが、その美しさと不気味さが同居した景色に圧倒される。

 

俺たちが螺旋状の階段を登っていくと、広大なホールに出た。

そこには、純白のドレスを纏い、少し大人びた姿をした少女が待っていた。ミーだ。アンノーンの力によって、自分自身も「憧れの大人のトレーナー」へと姿を変えていた。

 

「帰って。ここは私とパパとママのお城よ。誰も入れさせないわ」

ミーの声は冷たく、どこか虚ろだった。

 

「パパって……あのポケモンのことか?」

サトシが叫ぶ。

「そうよ。パパは強いんだから。……私の願いを全部叶えてくれるの」

 

「違う!お前のパパは、あんな化け物じゃないはずだ!」

サトシが言いかけた時、ミーが水晶のモンスターボールを構えた。

「……邪魔をするなら、追い払ってあげる。ポケモンバトルでね」

 

「俺が相手になる」

タケシが、力強く一歩前に出た。

「ここは俺に任せて、先に行けサトシ!お前はママを助けるんだ!」

 

「タケシ!」

「行ってくれ!俺にはイワークがいる。この城の壁を、俺たちが食い止めてみせる!」

 

タケシの決意に満ちた背中を見、サトシは唇を噛んで頷いた。

「分かった。頼むぞ、タケシ!」

 

俺とサトシ、そしてカスミはタケシに背中を預け、さらに上層へと急いだ。

背後では、タケシのイワークと、ミーが創り出した幻影のポケモンたちが激突する地響きが聞こえてくる。

一人の少女の孤独が創り出した、狂った楽園。

俺たちは、その深淵へと突き進んでいった。

 

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