アニポケ転生者物語 作:投稿者
タケシを残し、俺たちはさらに上層階へと続く螺旋階段を駆け上がった。
背後からは、イワークの咆哮と、ミーが繰り出したヌオーの強力な水技の音が響いてくる。
「タケシ、無事でいてくれよ……!」
サトシが祈るように呟く。
階段を抜けると、そこは先ほどの花畑とは全く異なる世界だった。
壁も床も天井も、すべてが深い青色に染まっている。
まるで深海の中にいるような、重苦しい静けさ。
空中を、半透明なマンタインやキングドラの幻影が泳ぎ回っている。
「水中エリア……?」
俺がデバイスをかざすと、空間全体が高密度の水分で満たされていることが分かった。呼吸はできるが、水ポケモンにとっては圧倒的に有利なフィールドだ。
「ここからは私がやるわ」
カスミが足を止めた。
「水タイプなら私の専門よ。……ここを通るには、ここの主を倒すしかなさそうだしね」
カスミの視線の先、渦巻く水流の中から、ミーが操るキングドラが姿を現した。
その瞳は冷たく、侵入者を排除する意思に満ちている。
「カスミ……!」
「サトシ、ミナト君、行って!ママが待ってるんでしょ!」
カスミはトサキントとヒトデマンのボールを構え、力強く俺たちを見据えた。
「私の水ポケモンたちの底力、見せてあげるわ!……だから、絶対にママを助け出して!」
「……ああ!任せろ!」
俺たちはカスミに背中を押され、その場を後にした。
直後、カスミの「トサキント、つのでつく!」という声と共に、激しい水しぶきの音が遠ざかっていった。
仲間たちの助けを借りて、俺たちはついに最上階の広間へとたどり着いた。
そこは、塔の頂上にあるドーム状の空間で、壁一面が巨大なクリスタルで覆われていた。
その中央、煌びやかなクリスタルの椅子に座らされたハナコさんと、それを守るように佇む巨大な影。
伝説のポケモン、エンテイ。
その鬣は煙のように揺らめき、足元からは熱気が立ち上っている。
「ママ!」
「サトシ……!」
サトシが駆け寄ろうとすると、エンテイが地面を叩きつけた。
床から炎の壁が噴き上がり、サトシの行く手を遮る。
「去れ。ここは私の娘と妻の場所だ。……何人たりとも、邪魔はさせん」
エンテイの声は、重低音となって空間を震わせた。
「ふざけるな!その人は俺のママだ!ミーのママじゃない!」
サトシが叫ぶ。
「娘が望んだのだ。私が父親で、彼女が母親だと。……娘の願いは絶対だ」
エンテイは、一歩も引く様子はない。
その瞳には、ミーへの歪んだ、しかし純粋な愛情だけが宿っていた。
「お前は、自分が何者か分かってるのか?」
俺が静かに問いかけると、エンテイは俺を睨んだ。
「私はエンテイ。ミーの父親だ」
「違う。お前は、ミーの寂しさがアンノーンの力で具現化した幻影だ。……本物のエンテイじゃない」
俺の言葉に、エンテイの周囲の空気がピリついた。
「……それがどうした。私がここに在り、彼女を守る意志がある限り、私は本物だ。……偽物だろうと幻影だろうと、娘を守れるなら、私は鬼にでもなる」
エンテイが咆哮すると、床から結晶の棘が無数に突き出し、俺たちを取り囲んだ。
問答無用の排除。
「(話が通じる相手じゃないな……)」
「サトシ、ハナコさんを頼む!こいつは俺が引きつける!」
俺はサトシをハナコさんの元へ走らせる合図を送った。
「ミナト、一人で大丈夫か!?」
「心配するな。……俺には、最強の相棒たちがいる!」
俺は、腰のボールを二つ同時に投げた。
「相手をしてやる。……行け、バサギリ!カイリュー!」
光と共に、古代の岩石の斧を持つバサギリと、空の覇者カイリューが現れた。
伝説のポケモン(の幻影)。
その理不尽な強さに抗うには、こちらも全力で応えるしかない。
「岩とドラゴンか。……面白い。灰にしてくれる!」
エンテイが身構える。
「バサギリ、『がんせきアックス』!カイリュー、『りゅうのまい』!」
バサギリが斧を振るい、カイリューが舞う。
だが、エンテイの動きはそれを上回っていた。
『しんそく』でバサギリの背後に回り込み、『かえんほうしゃ』でカイリューを牽制する。
その速度と威力は、まさに「理想の最強の父親」として具現化されたスペックだった。
「(速い……!それに、この空間自体がエンテイの味方をしている)」
床の結晶が波打ち、俺たちの足場を奪う。
これは、ただのバトルじゃない。
少女の夢の世界そのものとの戦いだ。
「負けるかよ!俺たちの『現実』を、甘く見るな!」
俺は、さらに攻撃のギアを上げた。
バサギリとカイリュー。最強の矛と翼で、幻想の王に挑む。
この戦いは、ただの力比べではない。
「正しい現実」を取り戻すための、魂のぶつかり合いだ。
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