アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第135話

タケシを残し、俺たちはさらに上層階へと続く螺旋階段を駆け上がった。

背後からは、イワークの咆哮と、ミーが繰り出したヌオーの強力な水技の音が響いてくる。

「タケシ、無事でいてくれよ……!」

サトシが祈るように呟く。

 

階段を抜けると、そこは先ほどの花畑とは全く異なる世界だった。

壁も床も天井も、すべてが深い青色に染まっている。

まるで深海の中にいるような、重苦しい静けさ。

空中を、半透明なマンタインやキングドラの幻影が泳ぎ回っている。

 

「水中エリア……?」

俺がデバイスをかざすと、空間全体が高密度の水分で満たされていることが分かった。呼吸はできるが、水ポケモンにとっては圧倒的に有利なフィールドだ。

 

「ここからは私がやるわ」

カスミが足を止めた。

「水タイプなら私の専門よ。……ここを通るには、ここの主を倒すしかなさそうだしね」

 

カスミの視線の先、渦巻く水流の中から、ミーが操るキングドラが姿を現した。

その瞳は冷たく、侵入者を排除する意思に満ちている。

 

「カスミ……!」

「サトシ、ミナト君、行って!ママが待ってるんでしょ!」

カスミはトサキントとヒトデマンのボールを構え、力強く俺たちを見据えた。

「私の水ポケモンたちの底力、見せてあげるわ!……だから、絶対にママを助け出して!」

 

「……ああ!任せろ!」

俺たちはカスミに背中を押され、その場を後にした。

直後、カスミの「トサキント、つのでつく!」という声と共に、激しい水しぶきの音が遠ざかっていった。

 

仲間たちの助けを借りて、俺たちはついに最上階の広間へとたどり着いた。

そこは、塔の頂上にあるドーム状の空間で、壁一面が巨大なクリスタルで覆われていた。

その中央、煌びやかなクリスタルの椅子に座らされたハナコさんと、それを守るように佇む巨大な影。

 

伝説のポケモン、エンテイ。

その鬣は煙のように揺らめき、足元からは熱気が立ち上っている。

 

「ママ!」

「サトシ……!」

サトシが駆け寄ろうとすると、エンテイが地面を叩きつけた。

床から炎の壁が噴き上がり、サトシの行く手を遮る。

 

「去れ。ここは私の娘と妻の場所だ。……何人たりとも、邪魔はさせん」

エンテイの声は、重低音となって空間を震わせた。

 

「ふざけるな!その人は俺のママだ!ミーのママじゃない!」

サトシが叫ぶ。

 

「娘が望んだのだ。私が父親で、彼女が母親だと。……娘の願いは絶対だ」

エンテイは、一歩も引く様子はない。

その瞳には、ミーへの歪んだ、しかし純粋な愛情だけが宿っていた。

 

「お前は、自分が何者か分かってるのか?」

俺が静かに問いかけると、エンテイは俺を睨んだ。

 

「私はエンテイ。ミーの父親だ」

 

「違う。お前は、ミーの寂しさがアンノーンの力で具現化した幻影だ。……本物のエンテイじゃない」

 

俺の言葉に、エンテイの周囲の空気がピリついた。

「……それがどうした。私がここに在り、彼女を守る意志がある限り、私は本物だ。……偽物だろうと幻影だろうと、娘を守れるなら、私は鬼にでもなる」

 

エンテイが咆哮すると、床から結晶の棘が無数に突き出し、俺たちを取り囲んだ。

問答無用の排除。

 

「(話が通じる相手じゃないな……)」

 

「サトシ、ハナコさんを頼む!こいつは俺が引きつける!」

俺はサトシをハナコさんの元へ走らせる合図を送った。

 

「ミナト、一人で大丈夫か!?」

「心配するな。……俺には、最強の相棒たちがいる!」

 

俺は、腰のボールを二つ同時に投げた。

「相手をしてやる。……行け、バサギリ!カイリュー!」

 

光と共に、古代の岩石の斧を持つバサギリと、空の覇者カイリューが現れた。

伝説のポケモン(の幻影)。

その理不尽な強さに抗うには、こちらも全力で応えるしかない。

 

「岩とドラゴンか。……面白い。灰にしてくれる!」

エンテイが身構える。

 

「バサギリ、『がんせきアックス』!カイリュー、『りゅうのまい』!」

 

バサギリが斧を振るい、カイリューが舞う。

だが、エンテイの動きはそれを上回っていた。

『しんそく』でバサギリの背後に回り込み、『かえんほうしゃ』でカイリューを牽制する。

その速度と威力は、まさに「理想の最強の父親」として具現化されたスペックだった。

 

「(速い……!それに、この空間自体がエンテイの味方をしている)」

 

床の結晶が波打ち、俺たちの足場を奪う。

これは、ただのバトルじゃない。

少女の夢の世界そのものとの戦いだ。

 

「負けるかよ!俺たちの『現実』を、甘く見るな!」

 

俺は、さらに攻撃のギアを上げた。

バサギリとカイリュー。最強の矛と翼で、幻想の王に挑む。

この戦いは、ただの力比べではない。

「正しい現実」を取り戻すための、魂のぶつかり合いだ。

 

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