アニポケ転生者物語 作:投稿者
「カイリュー、『はかいこうせん』!」
「バサギリ、『ストーンエッジ』!」
俺の号令と共に、二体の相棒が最大火力の技を放つ。
オレンジ色の破壊光線と、無数の鋭い岩の刃が、空間を切り裂いてエンテイに殺到する。
通常のポケモンならば、この同時攻撃だけで消し飛ぶはずだ。
だが、エンテイは動じなかった。
「無駄だ」
エンテイが前足を軽く地面に打ち付けると、床からクリスタルの壁がせり上がり、全ての攻撃を弾き返した。
『まもる』――いや、この空間そのものが彼の意志で形を変えているのだ。
「この塔の中では、私は無敵だ。ミーが望む限り、私は傷つかない」
エンテイの背後には、怯えた表情のミーがいる。彼女が「パパは強い」と信じている限り、このエンテイは無敵の幻想を纏い続ける。
「なら、その幻想ごと打ち砕く!バサギリ、『インファイト』!」
バサギリが懐に飛び込み、怒涛の連打を叩き込む。
岩石の斧がクリスタルの壁を削るが、再生速度の方が速い。逆に、エンテイの口から放たれた紫色の炎――『シャドーファイア』がバサギリを包み込んだ。
「グオオッ……!」
バサギリが吹き飛ばされる。物理的な熱さだけでなく、精神力を削るような冷たい炎だ。
「バサギリ!」
「次は空だ。……落ちろ」
エンテイが空中のカイリューを睨むと、天井から巨大な結晶の槍が落下してきた。
カイリューは『しんそく』で回避するが、その数は尋常ではない。雨のように降り注ぐ槍が、カイリューの逃げ場を奪っていく。
「(強い……。伝説のポケモンとしてのスペックに加え、この空間支配能力。まともにやり合っては勝ち目がない)」
俺は、焦る気持ちを抑え、冷静にエンテイを見据えた。
「エンテイ。お前は本当にそれでいいのか?」
「何の話だ」
「お前は、ミーの父親として生まれた。……なら、父親としてすべきことは、彼女をこんな塔に閉じ込めることじゃないはずだ!」
俺の言葉に、エンテイの攻撃が一瞬止まった。
その隙に、俺はバサギリを戻し、カイリューに一点突破の指示を出す。
「お前は、彼女の寂しさを埋めるための道具じゃない!……彼女の未来を考えるなら、外の世界へ送り出してやるのが本当の父親だろ!」
「……黙れ!」
エンテイが咆哮する。その声には、怒りだけでなく、迷いのようなものが混じっていた。
塔全体が激しく揺れ、ミーが悲鳴を上げる。
「パパ、やめて!怖いよ!」
「ほら見ろ!お前の力は、彼女を怖がらせているだけだ!」
「違う!私は……私は彼女を守るために……!」
エンテイの動きが鈍った。
その心の揺らぎが、無敵の防御に亀裂を生む。
「今だ、カイリュー!その迷いを断ち切れ!『ドラゴンクロー』!!」
カイリューが、全身全霊の力を右腕に込めて突撃する。
エンテイは炎の壁を展開しようとするが、反応が遅れた。
緑色の爪が、炎の壁を引き裂き、エンテイの肩口を浅く切り裂いた。
無敵の幻影に、初めて傷がついた瞬間だった。
「……ぐっ……!」
エンテイが後退する。
その時、ハナコさんを救出したサトシが戻ってきた。
「ミナト!大丈夫か!?」
「サトシ、ハナコさんは!?」
「無事だ!でも、ミーが……」
ミーは、崩れ落ちた夢の瓦礫の中で、泣きじゃくっていた。
「嫌だ……パパもママもいなくなるなんて嫌だ!」
彼女の悲しみが頂点に達した時、アンノーンの力が暴走を始めた。
塔の壁が脈打ち、制御不能なエネルギーが渦を巻き始める。
「エンテイ!お前も分かっているはずだ!これが間違っていることくらい!」
俺は叫んだ。
エンテイは、苦渋の表情でミーを見つめた。
その瞳の奥には、作られた存在としてのプログラムと、芽生えつつある「父性」が激しく葛藤していた。
「……私は、彼女の願いの具現。彼女が望むなら、世界を敵に回しても戦う」
エンテイの全身から、凄まじい炎が噴き上がった。
それは、迷いを焼き尽くし、破滅の運命ごと受け入れる覚悟の炎だった。
「来るぞ!全員で受け止めるんだ!」
俺とサトシは、並んで構えた。
ピカチュウと、カイリュー。
伝説の幻影との、最後の激突が始まる。
この戦いの結末が、少女の未来を決めるのだ。
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