アニポケ転生者物語 作:投稿者
眩い白光が収まると、そこには信じられないほど静かな世界が広がっていた。
俺たちが立っていたのは、先ほどまで不気味な結晶の塔がそびえ立っていた場所――ではなく、本来の姿を取り戻したグリーンフィールドの柔らかな草原の上だった。
「……戻ったんだな。本当に」
サトシが呆然と呟き、辺りを見回す。
空を覆っていた重苦しい暗雲は消え去り、そこには抜けるような青空と、暖かな午後の太陽が輝いていた。
街や山々を覆っていた鋭い結晶は、まるで春の雪が溶けるように跡形もなく消え去り、代わりに色とりどりの花々が一斉にその蕾を綻ばせていた。
目の前には、夢から覚めたミーと、彼女の父親がいた。
「パパ……? 本当にパパなの?」
ミーが、信じられないものを見るような目で見つめる。そこには、行方不明になっていた本当の父親が立っていた。
「ああ、ミー。……寂しい思いをさせて済まなかった」
博士は娘を強く抱きしめた。
その光景を、ハナコさんも涙ぐみながら見守っている。
『……ミー、お前はもう、大丈夫だな』
微かな、風のささやきのような声が聞こえた気がした。
空を見上げると、一筋の炎の残滓が、虹の彼方へと消えていくのが見えた。
自らの存在全てを懸けてアンノーンの暴走を止めた、幻影の守護者。
彼は最後に、本物の父親に娘を託して、消えていったのだ。
「(……ありがとうよ、最強のパパさん)」
俺は心の中で、名もなき英雄に別れを告げた。
数日後。
事件の事後処理が落ち着き、俺たちはグリーンフィールドを去ることになった。
「サトシお兄ちゃん、ミナトお兄ちゃん! 本当にありがとうございました!」
ミーが、かつての孤独を感じさせない満面の笑顔で見送ってくれた。
彼女の手には、もうクリスタルの花ではなく、本物の花束が握られていた。
街の外れ、街道の分岐点。
そこで、俺たちは立ち止まった。
タケシは、ボロボロだった服を着替え、いつものリュックを背負い直してサトシの隣に立っていた。
「やっぱり、お前たちのことが放っておけなくてな。オーキド博士にも許可をもらったよ。俺も、ジョウトの旅に同行させてくれ」
「やったぁぁぁ! 頼りにしてるぜ、タケシ!」
サトシとタケシがガッチリと握手を交わす。
カスミも「これでようやく、まともな食事が食べられるわね」と冗談めかして笑った。
賑やかさが戻った、いつもの三人。
それを見届けて、俺はふっと笑みをこぼした。
「さて、と。……俺も出発するか」
「ミナトは、次はどこへ行くんだ?」
サトシが尋ねる。
「アサギシティだ。……海を越えて、もっと広い世界を見てきたいんだ」
「アサギシティか!奇遇だな、俺たちも次はそこを目指すつもりだったんだ!」
タケシが地図を見ながら言う。
「そうなのか?……なら、途中まで一緒に行かないか?タケシの復帰祝いも兼ねてさ」
「おう!大賛成だぜ!」
「またミナト君の料理が食べられるなら、私は文句ないわ」
カスミも嬉しそうだ。
「よし、決まりだな。行くぞ、みんな」
俺たちは、四人とポケモンたちの大所帯で、山を越えるルートを選んだ。
サトシたちの賑やかな声が、静かだった旅路を彩っていく。
俺たちの旅は、ここからまた少しの間、重なることになる。
あの結晶の塔で見た奇跡を胸に、俺たちは新しい風の中を歩き出した。
「(さあ……次は鋼鉄の街、アサギだ)」
俺は前を向き、新しい風を胸いっぱいに吸い込んだ。
仲間たちと共に行く、賑やかで、頼もしい旅路。
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