アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第13話

ゼニガメが仲間になり、サトシの旅は一層賑やかになった。俺もまた、彼らと行動を共にし、クチバシティへと続く海岸沿いの道を歩いていた。心地よい潮風が頬を撫で、時折、波間から顔を出すメノクラゲや、岩場で甲羅干しをするクラブの姿が目を楽しませてくれた。

 

「ねえ、本当にこっちの道で合ってるの?遠回りじゃない?」

カスミが、不満そうに口を尖らせる。

「大丈夫だって!この道を行けば、絶対楽しいって!」

サトシは、根拠もなくそう言って笑った。

 

そんな穏やかな旅の途中、俺たちは信じられないような光景を目の当たりにした。

 

空の彼方から、数え切れないほどのバタフリーが、海へと向かって飛んでいく。色とりどりの翅が、青い空を埋め尽くし、幻想的な光景を作り出していた。

 

「すげえ……!なんだ、あれ!」

サトシが目を輝かせて叫ぶ。タケシが、懐から取り出したガイドブックでその現象について説明してくれた。

 

「バタフリーの、恋の季節だな。彼らは、海を渡って新しいパートナーを見つけ、子孫を残すために旅立っていくんだ」

 

「恋の季節……」

その言葉に、サトシの顔が少しだけ曇った。彼の腰のボールには、トキワの森でゲットしたキャタピーが進化し、今や立派なエースの一角となったバタフリーがいる。

 

俺たちは、バタフリーたちが集まるという岬へと向かった。そこでは、多くのトレーナーたちが、自分のバタフリーを旅立たせるために集まっていた。

 

サトシのバタフリーも、そわそわと落ち着かない様子で空を見上げている。やがて、一匹のピンク色の、珍しい体色をしたバタフリーを見つけると、サトシのバタフリーは猛烈なアピールを始めた。得意の「しびれごな」や「ねむりごな」を駆使した求愛ダンスだ。

 

だが、ピンクのバタフリーは、そんな彼に目もくれず、ぷいと顔をそむけてしまう。あからさまな失恋に、サトシのバタフリーはショックを受け、地面に突っ伏してしまった。

 

「バタフリー……」

サトシが、自分のことのように胸を痛めている。カスミも、「そんな……ひどいわ……」と、潤んだ目で見つめている。俺も、その気持ちは痛いほど分かった。ポケモンとの絆が深まれば深まるほど、彼らの喜びも、悲しみも、自分のもののように感じられるのだ。

 

その時だった。空を黒い影が覆い、巨大なヘリコプターが現れた。拡声器から、芝居がかった声が響き渡る。

 

「「なんだかんだと聞かれたら!」」

 

ヘリのハッチが開き、三つの人影――いや、二人と一匹が姿を現した。

 

「答えてあげるが世の情け!」

紫色の長い髪をなびかせる女、ムサシ。

 

「世界の破壊を防ぐため!世界の平和を守るため!」

青髪の優男、コジロウ。

 

「愛と真実の悪を貫く、ラブリーチャーミーな敵役!」

「ムサシ!」

「コジロウ!」

 

「「銀河を駆ける、ロケット団の二人には!」」

 

「ホワイトホール!白い明日が待ってるぜ!」

 

「にゃ、にゃーんてにゃ!」

額に小判をつけたニャースが、得意げにポーズを決める。

 

俺は内心、興奮を隠せなかった。うわ、本物だ……!あの口上、生で聞ける日が来るなんて!悪役だって分かってる。分かってるけど、ちょっと感動しちまうのは、転生者の性だよな!

 

俺がそんな感傷に浸っていると、彼らは巨大な網をヘリから射出し、岬に集まったバタフリーたちを根こそぎ捕獲しようとしていた。

 

「我らロケット団!この美しいバタフリーは、一匹残らずサカキ様へ献上するのだ!」

 

しかも、あのメカ……相変わらず金かかってるなあ。毎度毎度、どこからその予算が出てくるんだか。

そんな感心をしている場合ではない。

 

「なんてことを!」

「やめろーっ!」

 

サトシと俺は、すぐさまポケモンを繰り出し、ロケット団に立ち向かう。だが、ロケット団の用意したメカは強力で、俺たちの攻撃はなかなか通用しない。

 

網に捕らえられたバタフリーたちが、悲痛な鳴き声を上げる。その中には、あのピンクのバタフリーの姿もあった。

 

その光景を見た瞬間、サトシのバタフリーの目が変わった。失恋のショックなど微塵も感じさせない、強い意志の光がその瞳に宿る。彼は、サトシの指示を待つことなく、ロケット団のヘリコプターへと猛然と突進していった。

 

「バタフリー、危ない!」

サトシが叫ぶ。だが、バタフリーは止まらない。彼は、自分の恋敵であるはずの他のバタフリーたちを、そして、自分を振ったピンクのバタフリーを、命がけで守ろうとしていたのだ。

 

その雄姿に、ピンクのバタフリーの見る目も変わった。彼女は、網の中から声援を送る。その声援を受け、サトシのバタフリーは最後の力を振り絞り、渾身の「たいあたり」をヘリコプターに叩き込んだ。

 

その一撃が、決定打となった。ヘリコプターはバランスを崩し、捕獲網を解放して、山の彼方へと逃げ去っていった。

 

解放されたバタフリーたちが、一斉に空へと舞い上がる。そして、ピンクのバタフリーは、サトシのバタフリーの元へと寄り添うように飛んでいった。二匹は、互いの想いを確かめ合うように、優雅に空を舞う。恋が、成就した瞬間だった。

 

だが、それは同時に、別れの時が来たことを意味していた。

 

バタフリーたちが、次々と海へと旅立っていく。ピンクのバタフリーも、名残惜しそうにサトシのバタフリーを振り返りながら、仲間たちの後を追う。

 

サトシのバタフリーは、サトシの元へと飛んでくると、その頬にそっとすり寄った。その瞳は、サトシへの感謝と、そして、新しいパートナーと共に生きていくという決意に満ちていた。

 

「……行けよ、バタフリー」

 

サトシは、涙をこらえ、笑顔で言った。

 

「今まで、ありがとうな……!元気でなー!」

 

サトシの言葉に、バタフリーは大きく一鳴きすると、ピンクのバタフリーを追いかけて、水平線の彼方へと飛び去っていった。その姿が見えなくなるまで、サトシは、俺たちは、ずっと空を見上げていた。カスミの目にも、光るものがあった。

 

出会いがあれば、別れもある。それが、旅というものだ。

 

俺は、自分の腰にある三つのボールに、そっと手を触れた。フシギダネ、ポリゴン、ミニリュウ。いつか、俺も彼らと別れる日が来るのかもしれない。そう考えると、胸が張り裂けそうになる。

 

だからこそ、今、この瞬間を、大切にしなければならない。

 

サトシのトレーナーとしての成長を目の当たりにし、俺もまた、この旅の、そして命の意味を、改めて胸に刻むのだった。

 

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
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