アニポケ転生者物語 作:投稿者
「グルオオオォォ……」
それは、今まで聞いたどんなポケモンの鳴き声とも違っていた。悲しげで、寂しげで、それでいて、どこか威厳を感じさせる声。霧深い夜の海に響き渡り、灯台の窓ガラスをビリビリと震わせる。
「来た……間違いない、あいつだ……!」
マサキが、歓喜と畏怖の入り混じった表情で窓の外を見つめる。俺たちも、息を呑んでその方向を凝視した。濃い霧のせいで、はっきりとは見えない。だが、霧の向こうに、灯台よりも遥かに巨大な、山のような影が、ゆっくりと動いているのが分かった。
「な、なんだよ、あれ……!?」
サトシが、腰を抜かさんばかりに驚いている。
「うそ……おっきい……」
カスミも、言葉を失ってその影を見上げている。タケシも、その巨影の正体が分からず、呆然と立ち尽くすしかなかった。
俺は、すぐさまグラス型デバイスの解析機能を最大にした。ポリゴンともリンクさせ、霧の向こうの存在を探る。
『対象の特定不能。巨大な質量と、極めて高いエネルギー反応を検知。赤外線スキャンにより、その姿の一部を可視化します』
デバイスの視界が切り替わり、霧の向こうの巨影が、サーモグラフィのように表示される。長い首、たくましい胴体、そして大きな翼。間違いない。
「(カイリュー……!だが、こんなに巨大な個体がいるなんて……)」
原作で見た、あの謎の巨大ポケモン。その正体は、やはりカイリューだったようだ。だが、通常のカイリューの数倍、いや、数十倍はあろうかという、規格外の大きさだ。
『鳴き声の周波数を分析。複数のパターンを確認。パターンA:低周波の警告音。縄張りを主張している可能性。パターンB:高周波の呼びかけ音。仲間、あるいは特定の対象を探している可能性』
「仲間を、探している……?」
マサキが、デバイスの分析結果に目を見開いた。
「そうか……そうだったのか。私はずっと、彼が孤独な存在だと思っていた。だが、違ったんだ。彼は、私と同じように、誰かと繋がることを、ずっと望んでいたんだ……!」
マサキは、何かを悟ったように、灯台の巨大なスピーカーへと駆け寄った。そして、録音しておいたカイリューの鳴き声を、灯台の明かりと共に、霧の海の彼方へと発信した。それは、呼びかけに応える、友情のシグナルだった。
巨大なカイリューは、その呼びかけに気づいたのか、一度だけ、灯台のすぐ近くまでその巨体を寄せた。一瞬だけ霧が晴れ、その巨大な、しかし、どこか優しい瞳が、俺たちを捉えたように見えた。
やがて、カイリューは満足したかのように、一声高く鳴くと、ゆっくりと沖合へと去っていった。その姿が完全に霧の中に消えるまで、俺たちは、誰一人として声を発することができなかった。
「行ったか……」
マサキが、安堵のため息をつく。彼の長年の夢が、ほんの少しだけ、報われた瞬間だった。
だが、俺のデバイスは、まだ警告を発し続けていた。
『警告。カイリューの生命反応が遠ざかると同時に、南西方向から、複数の高速移動物体が接近。潜水艇と推測。動力音のパターン、おつきみやまで検出したロケット団のものと酷似』
「ロケット団……!?」
俺の言葉に、マサキたちの顔色が変わる。
「なぜ、こんな場所に!?」
「まさか、あの巨大なカイリューを狙って……!?」
タケシが最悪の可能性を口にする。あり得る話だ。あれほどの巨大で強力なポケモン、ロケット団が黙って見過ごすはずがない。
「(おつきみやまで感じた、R以外のコードネームを持つ部隊……。奴らの目的は、古代エネルギーや伝説級のポケモンか!)」
俺の脳裏で、バラバラだった情報が一つに繋がる。こいつらは、ムサシ・コジロウのようなチンピラじゃない。サカキ直属の、精鋭部隊だ。
「マサキさん、灯台の明かりを消してください!奴らに位置を知られる!」
俺の指示で、マサキが慌てて灯台の主電源を落とす。周囲は、再び深い闇と霧に包まれた。俺たちは息を潜め、潜水艇が通り過ぎるのを待つ。デバイスの画面には、数隻の潜水艇が、カイリューを追って沖合へと進んでいく様子が、赤い点で表示されていた。
やがて、潜水艇の反応は完全に消えた。俺たちは、ようやく安堵のため息をつくことができた。
「助かったよ、ミナト君。君がいなければ、どうなっていたことか……」
マサキが、心底感謝したように言った。
「いえ……。それより、心配ですね。カイリューも、ロケット団の動きも」
「うむ……。私も、この件はポケモン学会に報告しておこう。君も、気をつけるんだぞ」
マサキの灯台で過ごした夜は、この世界の美しさと、そして、その裏に潜む深い闇を、俺たちに同時に見せつけた。
翌朝、俺たちはマサキに別れを告げ、クチバシティへと向かった。霧はすっかり晴れ、空はどこまでも青く澄み渡っている。だが、俺の心は、晴れやかではなかった。
ロケット団の本格的な動き。そして、カイリューの安否。エンジョイ勢を気取っていた俺の旅は、否応なく、この世界の大きなうねりの中に巻き込まれようとしていた。
「(それでも、進むしかないんだ)」
俺は、腰のモンスターボールを強く握りしめた。相棒たちを守るため、そして、この世界の未来を守るために。俺にできることを、やるしかない。
決意を新たに、俺はクチバシティへと続く道を、力強く踏み出した。
チラシ裏から表にでるべきか
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チラシ裏でいい
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表にでてもいい
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まだ表にでるのは早い