アニポケ転生者物語 作:投稿者
『竜の穴』の最深部。
そこには、静寂に包まれた地底湖と、その中央に浮かぶ小島に建てられた古い祠があった。
祠には、代々伝わる秘宝『りゅうのきば』が安置されているという。
だが今、その静寂は不届き者たちによって破られていた。
「へへっ、こいつが『りゅうのきば』か。高く売れるぜ」
「さっさと開けろよ!見つかったらヤバいぞ」
祠の前で、数人の男たちがバールのようなもので扉をこじ開けようとしている。
彼らはロケット団のような組織だった動きではなく、粗野な言動からして、ただのならず者たちのようだ。
「貴様ら!神聖な祠で何をしている!」
イブキの怒号が洞窟内に響き渡る。その声は、龍の咆哮のように鋭く、重い。
「げっ、ジムリーダーだ!ずらかるぞ!」
男たちは慌てて逃げ出そうとするが、イブキのハクリューがそれを許さない。
「逃がすか!ハクリュー、『たつまき』!」
ハクリューが湖の水を巻き上げ、巨大な水の壁を作って退路を断つ。
「ちっ、やるしかねえ!行け、アーボック!マタドガス!」
男たちもポケモンを繰り出し、抵抗を試みる。
「俺たちも手伝います!」
サトシがピカチュウと共に飛び出した。
「ピカチュウ、『10まんボルト』!」
黄色い稲妻が洞窟を照らし、マタドガスを痺れさせる。
「カイリュー、お前もだ!『しんそく』で回り込め!」
俺もカイリューを放つ。
カイリューは音速で湖を渡り、アーボックの背後に回り込んで退路を完全に塞いだ。
「挟み撃ちだ!観念しろ!」
ならず者たちは、最強のジムリーダーと二人の実力派トレーナーに囲まれ、戦意を喪失した。
「ひぃぃ!ごめんなさい!」
彼らはその場にひれ伏し、駆けつけた警察にあっさりと引き渡された。
「……ふん。余計な手出しをしなくても、私一人で片付いたわよ」
イブキは腕を組み、素っ気ない態度をとる。だが、その声には少しだけ感謝の色が含まれていた。
「でもまあ、礼だけは言っておくわ。……ありがとう」
その時、祠の奥から、杖をついた小柄な老人が現れた。
フスベジムの先代であり、竜の穴を守る長老だ。
「騒がしいのう。……おや?そこの若者たち」
長老は、俺とサトシをじっと見つめた。その瞳は、すべてを見透かすように澄んでいる。
「お主……。ただならぬ物をいくつも持っておるな?」
長老の視線が、俺の懐に向けられる。
俺は観念して、旅の証を取り出した。
七色に輝く『にじいろのはね』。
深みのあるプラチナ色の『銀色の羽』。
そして、青白く脈動する『水晶の欠片』。
三つの秘宝が並ぶと、祠の空気が一変した。
イブキも、ハクリューも、言葉を失ってそれを見つめている。
「なっ……!それはホウオウの羽!?それに、ルギアの……!」
イブキが驚愕の声を上げる。
「ホウオウ、ルギア、そして……未知なる力。……これほどの加護を受けたトレーナーは、ワタル以来……いや、それ以上かもしれん」
長老は深く頷き、俺のカイリューにも目を向けた。
「そのカイリューもまた、王者の相を持っておる。……お主、名は?」
「ミナトです。マサラタウンの」
「ミナトか。……覚えておこう。お主は、伝説に選ばれたのではなく、伝説と共に歩む者じゃな」
長老はイブキに向き直った。
「イブキよ。この者たちは、ただの挑戦者ではない。……心して相手をするがよい。お主の慢心を打ち砕く、良い機会になるかもしれんぞ」
「……分かっています、長老様。……彼らを倒せば、私もワタルを超えられるということですね」
イブキの瞳に、今まで以上の闘志が宿った。
それは、ただのジムリーダーとしての義務感ではなく、一人のドラゴン使いとしての純粋なプライドだった。
「ジムに戻りましょう。……最高の舞台で、あなたたちを叩き潰してあげるわ」
イブキがマントを翻して歩き出す。
俺たちは長老に一礼し、彼女の後を追った。
試練は終わった。次は、決戦だ。
最強のドラゴン使いとの戦いが、俺たちを待っている。