アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第172話

赤い服を着た少女の影を追い、俺はアルトマーレの迷路のような路地を駆け抜けた。

石畳の階段を登り、アーチをくぐり、入り組んだ細道を抜けていく。

まるで、街全体が俺をどこかへ導いているような、不思議な感覚だった。

 

途中、広場の噴水の前で座り込んでいるサトシと合流した。

「あれ、ミナト?どうしたんだ、そんなに急いで」

「変な女の子を見かけなかったか?赤い服の」

「ああ!さっきあっちへ走っていったぞ。俺も気になってたんだ」

 

俺たちは二人でその影を追った。

少女は、時折振り返っては悪戯っぽく微笑み、また角を曲がっていく。

そして、たどり着いたのは、何の変哲もない高い石壁の前だった。

行き止まりだ。少女の姿はどこにもない。

 

「消えた?……まさか、壁をすり抜けたのか?」

サトシが壁を叩くが、硬い石の感触が返ってくるだけだ。

 

「いや、違う。……ここには『仕掛け』がある」

 

俺のデバイスは、壁の向こう側に「空間の揺らぎ」を検知していた。

視覚的にはただの壁に見えるが、特定の波長を持つ者だけが通れる結界のようなものだ。

 

「サトシ、壁をよく見てみろ。……ここだ」

 

俺が壁の一部、蔦が絡まる小さな窪みを押し込むと、隠し扉が音もなく静かに開いた。

中から、むせ返るような緑の香りと、清らかな水の匂いが漂ってくる。

 

「わあ……すごい。街の中にこんな場所があったなんて」

 

中へ入ると、そこには街の喧騒が嘘のように静まり返った、緑豊かな秘密の庭園が広がっていた。

色とりどりの花が咲き乱れ、木々の間から木漏れ日が降り注ぐ。

庭の中央には大きな池があり、その水面は鏡のように澄んでいる。

 

池のほとりに、二人の少女がいた。

一人は、俺たちが追ってきた赤い服の少女。

もう一人は、木陰でキャンバスに向かって絵を描いている、ベレー帽を被った少女だった。

 

「……あなたたち、誰?ここは立ち入り禁止よ」

絵を描いていた少女――カノンが、筆を止めて鋭い視線を向けてくる。

その表情には、侵入者への警戒心が露わになっている。

 

「ごめん、変な女の子を追いかけてきたらここに着いちゃって……。悪気はなかったんだ」

サトシが弁明するが、カノンは不信感を隠さない。

「変な女の子?……何のこと?」

 

その時、赤い服の少女がクスクスと笑いながら、カノンの後ろから顔を出した。

そして、彼女の姿が眩い光に包まれ、一匹のポケモンへと変化した。

赤い流線型のボディ、愛らしい瞳。

 

ラティ!(驚かせてごめんね!)

 

「ポ、ポケモンだったのか!?」

サトシが驚愕して後ずさる。

 

「ラティアス……。そして、あっちにいるのはラティオスか」

俺は池の上に浮遊する、青い龍のようなポケモンを見据えた。

ラティオスは、妹を守るように俺たちを睨みつけ、低い声で威嚇している。

 

「……驚かないのね。貴方、何者?」

カノンが俺に歩み寄ってくる。

 

「シルフのテスター、ミナトです。……そして、彼らと同じ『守護の証』を持つ者だ」

 

俺は、懐の三つの秘宝を取り出した。

『にじいろのはね』、『銀色の羽』、そして『水晶の欠片』。

それらが太陽の光を浴びて輝きだすと、庭園の中央にある祭壇――『こころのしずく』が安置された場所が、呼応するように青く発光した。

 

祭壇から放たれた柔らかな光が、庭全体を包み込む。

その光は、敵意を溶かし、心を繋ぐ架け橋となる。

光に触れたラティアスとラティオスは、俺たちを「敵」ではなく「仲間」だと認めたように、優しく空中で円を描いた。

 

「……おじいちゃんが言っていた通りだわ。いつか、伝説を導く者が現れるって」

カノンは、少しだけ表情を和らげた。

 

そこへ、管理人のボンゴレ老人が現れた。

「ほう……その輝き。……間違いない。君たちは、この街の危機を救うために現れたのじゃな」

 

「危機……?」

 

「ああ。最近、街に邪悪な気配が忍び寄っておる。……古の力を狙う、愚かな者たちの影がな」

 

ボンゴレ老人の言葉を裏付けるように、俺のデバイスが緊急アラートを発した。

『警告。庭園の外周に、特殊な光学迷彩を施したドローンを確認。……敵対勢力の侵入を検知しました』

 

「(来たか、ザンナーとリオン……!)」

 

静かな庭園に、不気味な機械の羽音が響き始めた。

水の都の平和を揺るがす、侵略者たちの影。

伝説を守るための戦いが、今、幕を開けようとしていた。

俺たちは、ラティ兄妹を守るように陣形を組んだ。

 

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