アニポケ転生者物語   作:投稿者

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ニビジム制覇
第1話


マサラタウンの土を踏みしめ、オーキド研究所へと向かう足取りは軽い。先ほどテレビで見たシゲルの華々しい旅立ちの喧騒はすっかり消え、町はいつもの穏やかな午後の空気に包まれている。これこそが俺の狙い通りの展開だった。

 

「お、ミナトか。早いじゃないか」

 

研究所の自動ドアが開くと、白衣を着た恰幅の良い男性――オーキド博士が、少し驚いたような顔で出迎えてくれた。その後ろには、まだサトシやシゲルの姿はない。よし、完璧なタイミングだ。

 

「こんにちは、博士。今日からお世話になります」

 

「うむ。して、もう心は決まっておるのかね?」

 

博士は悪戯っぽく笑いながら、研究室の中央に置かれたテーブルへと俺を促す。テーブルの上には、赤、青、緑の三つのモンスターボール。この中に、ヒトカゲ、ゼニガメ、そして俺が選ぶと決めたフシギダネが入っている。

 

俺は迷わず、緑色のシールが貼られたモンスターボールを手に取った。

 

「俺は、この子にします」

 

「ほう、フシギダネか。良い選択じゃな。では、さっそく対面といくかな」

 

博士がボタンを押すと、ボールから赤い光が放たれ、小さな影が姿を現した。背中に緑色のタネを乗せ、赤い瞳でじっとこちらを見つめてくる、カエルのような姿のポケモン。フシギダネだ。

 

「ダネ…」

 

フシギダネは少し警戒しているのか、喉の奥で小さく鳴いた。俺はゆっくりとしゃがみこみ、視線の高さを合わせる。

 

「はじめまして、フシギダネ。俺はミナト。これからよろしくな」

 

優しく声をかけると、フシギダネは背中のタネを少し揺らし、俺の匂いを嗅ぐように鼻をひくつかせた。前世の知識では、この背中のタネは栄養が詰まっていて、生まれた時から共にある命の源だ。俺はそのタネに敬意を払うように、そっと指先を伸ばした。

 

フシギダネは一瞬だけ身をこわばらせたが、俺に敵意がないことを感じ取ったのか、やがてその硬質なタネの表面に、俺の指が触れるのを許してくれた。ひんやりとしていて、それでいて確かな生命力が伝わってくる。

 

「(ああ、本物だ……)」

 

ゲームやアニメで飽きるほど見てきた存在が、今、目の前にいる。この感動こそ、俺がこの世界で生きていく最大の喜びだった。

 

「どうやら、気に入ってもらえたようじゃな」

 

博士が満足げに頷いた、その時だった。

 

「おーい、じいさん!俺にもポケモンをくれよ!」

 

勢いよくドアを開けて入ってきたのは、紫色のシャツを着た、ツンツン頭の少年。シゲルだ。彼は俺とフシギダネを一瞥すると、ふんと鼻を鳴らした。

 

「なんだ、ミナトか。もう決めたのか。……ふぅん、フシギダネね。まあ、悪くない選択なんじゃないか?」

 

「ああ。俺はこの子と決めたから」

 

「そうかい。じゃあ、俺はこいつにするぜ!」

 

シゲルはそう言って、ヒトカゲとゼニガメのボールを見比べた後、ニヤリと笑ってゼニガメの入ったボールを手に取った。原作通り、水タイプを選ぶようだ。彼の選択を見届けたところで、俺は博士に頭を下げた。

 

「博士、ありがとうございました。俺はこれで」

 

「うむ。ああ、これを忘れずにな。ポケモン図鑑と、モンスターボールじゃ」

 

博士から赤い手帳型の図鑑と、ベルトに装着された5つのモンスターボールを受け取る。図鑑を開くと、電子音声が『フシギダネ。たねポケモン。うまれたときから せなかに しょくぶつの タネが あって すこしずつ おおきく そだつ』と読み上げた。この音声も、懐かしくて新しい。

 

俺が研究所を後にしようとした時、今度は慌てた様子の女性が駆け込んできた。サトシのお母さんだ。

 

「うちのサトシ、まだ来てませんか!?」

 

「いや、まだじゃが……」

 

「もう、あの子ったら!せっかくパジャマのまま叩き起こしたのに!」

 

その言葉に、俺は思わず口元を緩めた。どうやら、物語の主人公は、今日も平常運転らしい。俺は「お先に」と会釈だけして、静かに研究所を後にした。

 

自宅への帰り道、フシギダネをボールから出して隣を歩かせる。最初はお互いに少しぎこちなかったが、道端の小さな花にフシギダネが興味を示したのをきっかけに、少しずつ打ち解けていった。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、ミナト。あら、その子がフシギダネ?」

 

リビングでノートパソコンを操作していた母さんが、顔を上げてにっこりと笑った。母さんは立ち上がると、フシギダネの前にそっとしゃがみこむ。

 

「はじめまして。ミナトをよろしくね」

 

「ダネッ!」

 

フシギダネも、母さんの優しい雰囲気に安心したのか、嬉しそうに一声鳴いた。その様子に満足した母さんは、俺に向き直ると「さて」と切り出した。

 

「約束の、渡すものよ」

 

そう言ってテーブルに置かれたのは、黒いサングラスのようなデバイスと、一つのモンスターボールだった。

 

「母さん、これは?」

 

「あなたが旅に出るなら、きっと役に立つと思ってね。シルフカンパニーの最新試作品よ。まあ、そのせいであなたにはテスターとして、定期的にデータを送ってもらうことになるけど」

 

母さんは悪戯っぽく笑う。俺はそのグラスを手に取った。見た目以上に軽く、耳にかけるとすっと顔に馴染んだ。

 

「その『グラス型デバイス』は、あなたのポケモン図鑑と無線でリンクしてるわ。視界に情報を直接表示できるから、いちいち図鑑を開く手間が省けるはずよ。それと、見たものの詳細なデータを収集・分析する機能もあるから、テスターの仕事もよろしくね」

 

言われるがままにデバイスの電源を入れると、視界の右下に、フシギダネの小さなアイコンと体力ゲージのようなものが表示された。すげえ、未来の技術だ。窓の外、遠くを飛んでいるポッポに視線を合わせると、『ポッポ。ことりポケモン。おとなしい せいかくで つかまえやすい』という図鑑情報が、ふわりと視界に浮かび上がる。これは、とんでもないアイテムだ。

 

「それから、こっちの子もあなたのパートナーよ」

 

母さんが促すモンスターボールを手に取り、ボタンを押す。現れたのは、ピンクと水色の、角ばった体を持つポケモンだった。

 

「ピ、ガガ……」

 

感情の読めない電子音。シルフカンパニーが開発した人工ポケモン、ポリゴンだ。

 

「この子は、そのデバイスの性能を最大限に引き出すためのパートナー兼、情報収集のエキスパート。戦闘能力も、折り紙付きよ」

 

ポリゴンは、無機質な瞳で俺をじっと見つめている。フシギダネのような体温は感じられない。だが、その存在は確かに、俺の新しい旅が普通ではないことを示していた。

 

俺はフシギダネの隣に浮かぶポリゴンを見て、そして手の中にある二つのモンスターボールを見つめた。

 

草タイプの頼れる相棒、フシギダネ。

ハイテクな謎多き相棒、ポリゴン。

 

「(最高の旅になりそうだ)」

 

俺は二匹の新しいパートナーと共に、これから始まる冒険に胸を躍らせ、旅立ちの準備を始めるのだった。

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
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