アニポケ転生者物語 作:投稿者
大聖堂から溢れ出した濁流は、瞬く間にアルトマーレの運河を飲み込み、巨大な津波となって街を襲った。
建物の屋根を越えるほどの高さ。街全体が水没の危機に瀕している。
「このままじゃ……街が消えちゃうよ!」
カノンが絶望に顔を歪める。
ラティオスとラティアスが、互いの手を繋ぎ、津波の正面へと立ちふさがった。
彼らは自らの生命エネルギーを全て放出し、街を守るための盾になろうとしていた。
その体から、眩い光が溢れ出す。それは、自らの存在を燃やして放つ、最後の輝き。
「(原作なら……ここでラティオスが消滅する)」
俺の脳裏に、悲しい結末がよぎる。
だが、俺はそれを変えるためにここに来たんだ。
「待て!ラティオス、ラティアス!一人で抱え込むな!」
俺は、リュックの中から三つの秘宝を全て取り出し、空へと掲げた。
七色の『にじいろのはね』。
白銀の『銀色の羽』。
そして、青白く脈動する『水晶の欠片』。
「力を貸してくれ!ホウオウ、ルギア、ミュウツー!」
俺の叫びに呼応するように、三つの秘宝が三角形を描くように並び、中心に凄まじい光の渦が発生した。
ホウオウの「再生」の炎。
ルギアの「守護」の風。
そしてミュウツーの「極限の精神」。
それらが『こころのしずく』の暴走エネルギーと共鳴し、巨大な光の繭を作り出した。
「ポリゴンZ、演算支援を頼む!このエネルギーを……調和の波長へ変換しろ!」
『了解。……三つのソースコードを統合。……アルトマーレ全域に『サイコ・フィールド・バリア』を展開します』
ポリゴンZが空中を乱舞し、データの粒子を撒き散らす。
ラティ兄妹の青と赤の光に、三つの秘宝の光が混ざり合い、津波を真正面から押し返した。
ドォォォォォォォォォォン!!
水と光が衝突し、空が真っ白に染まった。
俺は強烈な衝撃に耐えながら、相棒たちの名前を呼び続けた。
「負けるな!押し返せぇぇぇ!!」
やがて、轟音が止み、静寂が訪れた。
目を開けると、そこには鏡のように穏やかな運河が戻っていた。
津波は跡形もなく消え去り、空には満天の星空が広がっていた。
水面に映る月が、何事もなかったかのように揺れている。
「……助かったんだ」
サトシが呟く。
地面には、力尽きて横たわるラティオスとラティアスの姿があった。
「ラティオス!!」
カノンが駆け寄る。
俺も、恐る恐るラティオスの胸に手を当てた。
微かな、しかし確かな鼓動。
「……生きてる。命は、助かったぞ」
「……よかった……本当によかった……!」
カノンが涙を流してラティオスを抱きしめた。
ラティアスも、兄の無事を確認して、安心して眠りについた。
祭壇の上には、ひび割れた『こころのしずく』が、再び柔らかな青い光を取り戻して安置されていた。
三つの秘宝が、雫の崩壊を食い止め、新たな守りの力を与えたのだ。
これからは、ラティオスの命を削ることなく、この街を守り続けてくれるだろう。
「ゼ、ゼェ……」
ポリゴンZが、俺の肩に降りてきた。その瞳のノイズは収まり、静かなデジタル光が宿っていた。
「お疲れ様、ポリゴンZ。最高の仕事だったよ」
俺は、新しく生まれ変わった相棒を労った。
水の都アルトマーレ。
伝説の悲劇は、新たな希望の物語へと書き換えられた。
街の彼方から、朝日の光が差し込んできた。
新しい一日が、今、始まろうとしていた。