アニポケ転生者物語 作:投稿者
目覚めの朝
アルトマーレの危機から一夜が明けた。
俺たちは、ボンゴレ老人の家で、穏やかな朝の光を浴びながら目を覚ました。
窓を開けると、運河を行き交うゴンドラの音と、市場の賑わいが聞こえてくる。
昨夜の出来事が嘘のような、平和な朝だ。
「キュィ……」
庭では、回復したラティオスとラティアスが、楽しそうに追いかけっこをしていた。
ラティオスは少しだけ翼を傷めていたが、それ以外は至って元気だ。
「
ラティアスが俺に気づいて、ガラス越しに手を振ってくる。
「ミナト君、本当にありがとう。……君たちがいなければ、この街も、あの子たちもどうなっていたか」
ボンゴレ老人が、淹れたてのコーヒーを差し出してくれた。
「いえ。……俺の相棒たちの頑張りがあったからです」
俺は、足元でプカプカと浮いているポリゴンZを見つめた。
進化によって、以前よりも表情(というより発光パターン)が豊かになった気がする。
あの異形な姿も、見慣れれば愛嬌がある。
『解析完了。……今回の現象により、私自身の内部OSに「守護」と「調和」の新しいアルゴリズムが追加されました。……非常に興味深いデータです』
「(バグじゃなく、新しい可能性として定着したみたいだな)」
秘密の庭での別れ
出発の直前、俺は一人で秘密の庭を訪れた。
そこには、スケッチブックを小脇に抱えたカノンが待っていた。
カノンは、少し寂しそうに微笑むと、一枚の絵を俺に差し出した。
そこには、三つの秘宝を掲げて津波に立ち向かう俺と、その背後で輝くポリゴンZ、そしてラティ兄妹の姿が、鮮やかな色彩で描かれていた。
その絵からは、当時の緊迫感と、希望の光が溢れ出していた。
カノンは、俺の頬にそっと手を添えた。
カノン(あるいは、カノンに変身したラティアス?)が、俺の頬に軽く、触れるようなキスをした。
彼女はいたずらっぽく笑うと、そのまま庭の奥へと駆け去っていった。
赤い服の裾が、風に揺れていた。
俺は、呆然とその背中を見送った。
頬に残る感触と、絵の具の匂い。
「(……今の、どっちだったんだ?)」
ラティアスだったのか、それとも本当のカノンだったのか。
それは永遠の謎だ。
だが、どちらにせよ、俺はこの街での出来事を一生忘れないだろう。
「ミナト、何してんだ!船が出るぞ!」
サトシの声が運河に響く。
「……今行くよ!」
シロガネ山へ向けて
俺たちは、アルトマーレの港から船に乗り、ジョウト地方の本土へと戻った。
懐には、カノンのスケッチブックと、より強く、より高く輝く三つの秘宝。
「(さあ、次はいよいよ本番だ)」
船の舳先で、俺は北の空を見上げた。
ジョウトリーグ・シロガネ大会。
カントーから続く俺たちの旅の、最大の舞台。
そこには、サトシ、シゲル、そしてジョウトで出会った全ての仲間たちの思いが集まる。
「行くぞ、みんな。……頂点、取ってやるからな!」
俺の呼びかけに、全20匹の相棒たちが、それぞれの場所で、力強く応えた。
水の都の潮騒を背に、俺たちはジョウト最強を決める決戦の地、シロガネ山へと向かって、全力で駆け出した。
ふと、本土の海岸線に目を向けると、切り立った断崖の上に、青白い影が佇んでいるのが見えた。
しなやかな体、風になびく紫色のたてがみ。
北風の化身、スイクンだ。
スイクンは、アルトマーレでの激闘を全て知っているかのように、静かに俺を「チラリ」と見つめた。
そして、俺が小さく手を振ると、満足げに一度だけ鼻を鳴らし、霧の中に消えていった。
「(……見ててくれたんだな。ありがとうよ)」
伝説の視線を背に受け、俺の胸は熱くなった。
自分たちの歩んできた道が、神々にすら認められ始めている。その実感が、俺に確かな勇気を与えてくれた。