アニポケ転生者物語   作:投稿者

202 / 344
【閑話】カノンのスケッチ

目覚めの朝

アルトマーレの危機から一夜が明けた。

俺たちは、ボンゴレ老人の家で、穏やかな朝の光を浴びながら目を覚ました。

窓を開けると、運河を行き交うゴンドラの音と、市場の賑わいが聞こえてくる。

昨夜の出来事が嘘のような、平和な朝だ。

 

「キュィ……」

庭では、回復したラティオスとラティアスが、楽しそうに追いかけっこをしていた。

ラティオスは少しだけ翼を傷めていたが、それ以外は至って元気だ。

ラティ!(おはよう!)

ラティアスが俺に気づいて、ガラス越しに手を振ってくる。

 

「ミナト君、本当にありがとう。……君たちがいなければ、この街も、あの子たちもどうなっていたか」

ボンゴレ老人が、淹れたてのコーヒーを差し出してくれた。

 

「いえ。……俺の相棒たちの頑張りがあったからです」

 

俺は、足元でプカプカと浮いているポリゴンZを見つめた。

進化によって、以前よりも表情(というより発光パターン)が豊かになった気がする。

あの異形な姿も、見慣れれば愛嬌がある。

 

『解析完了。……今回の現象により、私自身の内部OSに「守護」と「調和」の新しいアルゴリズムが追加されました。……非常に興味深いデータです』

 

「(バグじゃなく、新しい可能性として定着したみたいだな)」

 


秘密の庭での別れ

出発の直前、俺は一人で秘密の庭を訪れた。

そこには、スケッチブックを小脇に抱えたカノンが待っていた。

 

カノンは、少し寂しそうに微笑むと、一枚の絵を俺に差し出した。

そこには、三つの秘宝を掲げて津波に立ち向かう俺と、その背後で輝くポリゴンZ、そしてラティ兄妹の姿が、鮮やかな色彩で描かれていた。

その絵からは、当時の緊迫感と、希望の光が溢れ出していた。

カノンは、俺の頬にそっと手を添えた。

カノン(あるいは、カノンに変身したラティアス?)が、俺の頬に軽く、触れるようなキスをした。

彼女はいたずらっぽく笑うと、そのまま庭の奥へと駆け去っていった。

赤い服の裾が、風に揺れていた。

 

俺は、呆然とその背中を見送った。

頬に残る感触と、絵の具の匂い。

 

「(……今の、どっちだったんだ?)」

 

ラティアスだったのか、それとも本当のカノンだったのか。

それは永遠の謎だ。

だが、どちらにせよ、俺はこの街での出来事を一生忘れないだろう。

 

「ミナト、何してんだ!船が出るぞ!」

サトシの声が運河に響く。

 

「……今行くよ!」

 


シロガネ山へ向けて

俺たちは、アルトマーレの港から船に乗り、ジョウト地方の本土へと戻った。

懐には、カノンのスケッチブックと、より強く、より高く輝く三つの秘宝。

 

「(さあ、次はいよいよ本番だ)」

 

船の舳先で、俺は北の空を見上げた。

ジョウトリーグ・シロガネ大会。

カントーから続く俺たちの旅の、最大の舞台。

そこには、サトシ、シゲル、そしてジョウトで出会った全ての仲間たちの思いが集まる。

 

「行くぞ、みんな。……頂点、取ってやるからな!」

 

俺の呼びかけに、全20匹の相棒たちが、それぞれの場所で、力強く応えた。

水の都の潮騒を背に、俺たちはジョウト最強を決める決戦の地、シロガネ山へと向かって、全力で駆け出した。

 

ふと、本土の海岸線に目を向けると、切り立った断崖の上に、青白い影が佇んでいるのが見えた。

しなやかな体、風になびく紫色のたてがみ。

北風の化身、スイクンだ。

 

スイクンは、アルトマーレでの激闘を全て知っているかのように、静かに俺を「チラリ」と見つめた。

そして、俺が小さく手を振ると、満足げに一度だけ鼻を鳴らし、霧の中に消えていった。

 

「(……見ててくれたんだな。ありがとうよ)」

 

伝説の視線を背に受け、俺の胸は熱くなった。

自分たちの歩んできた道が、神々にすら認められ始めている。その実感が、俺に確かな勇気を与えてくれた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。