アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第191話

ロケット団の巨大飛行船が、轟音と共にピュアーズ・ロックの湖面へと墜落した。

水柱が高く上がり、直後に発生した大爆発が、神聖な静寂を切り裂く。漏れ出した大量の燃料と、暴走したエネルギー炉から放たれる有毒な廃液が、世界一清らかであるはずの水をどす黒く、毒々しい色へと染め上げていく。

火柱が上がり、周囲の原生林が赤く燃え始める。命の源である湖が、死の沼へと変わり果てようとしていた。

 

「湖が……! みんなの故郷が!」

コピーピカチュウやコピーフシギバナたちが、住処を奪われる絶望に悲鳴を上げる。彼らにとって、ここは唯一、差別されずに生きられる場所なのだ。

「(ダメだ……。物理的な手段じゃ、この広範囲な汚染は止められない。このままじゃ、生態系ごと全滅だ)」

俺は歯噛みした。ポリゴンZの計算でも、汚染の拡散速度は浄化能力を遥かに超えている。

 

その時、俺のリュックの中で、何かが熱く脈打った。

俺は直感的にそれを掴み出す。

ホウオウの『虹色の羽』。

ルギアの『銀色の羽』。

そして、今ここで共鳴している、ミュウツーの体の一部から生成された『水晶の欠片』。

三つの伝説、三つの色が、俺の手の中で激しく輝き始めた。

 

「頼む……! 力を貸してくれ! この場所を、彼らの未来を守る力を!」

俺は祈りを込め、三つの秘宝を汚染された湖の中心へと力いっぱい投げ入れた。

同時に、ミュウツーも残った全てのサイコパワーを振り絞り、湖へと注ぎ込む。

『我々は……生きる! この世界で!』

 

「ウオオオオオオオッ!!」

 

その瞬間。

北の方角から、全てを凍らせるほどに冷たく、そして全てを洗い流すほどに清冽な一陣の風が吹き抜けた。

汚れた黒煙を鋭利な刃のように切り裂き、湖の上に一匹のポケモンが舞い降りた。

しなやかな四肢、風になびく紫色のたてがみ、そして頭上のクリスタルのような輝き。

 

「スイクン……!」

 

北風の化身、スイクン。

エンジュシティの焼けた塔で初めて出会い、こおりのぬけみちで導かれ、そしてアルトマーレの事件でも影ながら俺たちを見守ってきた伝説のポケモン。

彼が今、ついにその真の力を解放したのだ。

 

「ヒィィィィィィィン!!」

 

スイクンが高らかに咆哮し、汚染された湖面を疾走する。

彼が踏みしめた水面から、波紋のように青白い光が広がっていく。

それは単なる『オーロラビーム』や『ハイドロポンプ』ではない。生命の根源に働きかける、神聖な「浄化の光」だ。

投げ入れられた三つの秘宝が、スイクンの力を触媒として共鳴し、虹色、銀色、水晶色の三色の輝きとなって螺旋を描き、湖全体を包み込んだ。

 

「見て……! 汚れが、消えていく!」

カスミが信じられないものを見る目で呟く。

黒い油膜が、嘘のように分解され、透明な水へと戻っていく。燃え盛る炎が鎮火し、焼け焦げた木々からは新たな若芽が芽吹き始める。

傷ついた森が癒やされ、濁った空気が清められていく奇跡の光景。それは、破壊を尽くしたロケット団の科学力に対する、大自然からの静かで力強い回答だった。

 

浄化が終わると、湖は以前よりもさらに澄んだ、宝石のような美しさを取り戻していた。

スイクンは、湖の中央で静かに佇み、真っ直ぐに俺の方を見つめた。

その深紅の瞳は、これまでの「監視者」としての冷たさではなく、共に戦った「同志」としての温かさと、慈愛に満ちていた。

 

『……見事だ。人の子よ。お前たちの心、そしてポケモンたちの願い、確かに受け取った』

 

言葉ではない、風のような意志が、俺の心に直接響いた気がした。

スイクンは、役割を終えて光を失った三つの秘宝を、風に乗せて俺の元へ優しく送り返すと、朝霧と共に北の空へと消えていった。

まるで、最初からそこにいなかったかのように。

 

「ありがとう、スイクン。……また、どこかで」

 

俺は、戻ってきた秘宝を大切に握りしめ、深く感謝した。

聖域は守られた。ロケット団の野望も、サカキの執念も、そして湖の汚染も、全ては浄化されたのだ。

 

「……終わったな」

サトシが、緊張の糸が切れたように、その場にへたり込んだ。顔も服も泥だらけだが、その表情は晴れやかだ。

「ああ。……本当に、終わったんだ。ミュウツーたちも、これでやっと平和に暮らせる」

 

コピーポケモンたちが、オリジナルたちと寄り添い、静かな朝を迎えている。そこにはもう、憎しみも争いもない。ただ、同じ命としての共感だけがあった。

俺たちは、清らかな湖のほとりで、長い戦いの終わりと、新しい朝の訪れを噛み締めた。

湖面には、雨上がりの美しい青空と、希望の虹が映っていた。

 

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