アニポケ転生者物語 作:投稿者
戦いが終わり、ロケット団は撤退した。サカキの行方は不明だが、今回の失敗で組織は大打撃を受けただろう。当分は動けないはずだ。
湖のほとりで、俺たちはミュウツーと向き合った。
覚醒状態が解け、元の姿に戻ったミュウツーは、どこか憑き物が落ちたような穏やかな表情をしていた。
『……感謝する。お前たちのおかげで、私たちは救われた』
「礼には及ばないさ。……友達だろ?」
サトシが笑う。
『……友達、か』
ミュウツーは少し困ったように微笑んだ。
その笑顔は、初めて会った時の冷徹な彼からは想像もできないほど、温かいものだった。
『私は……ここを去るつもりだった。人間たちに見つかった以上、ここはもう安全ではないと』
「でも、ロケット団はもう来ないよ。……それに、逃げ続けるのはもう終わりにしないか?」
『……ああ。そうだな』
ミュウツーは、コピーポケモンたちを見渡した。
彼らもまた、ここでの生活を愛し、ここを故郷だと思っている。
『彼らにとっても、ここが故郷だ。……私たちは、ここで生きる』
ミュウツーは両手を広げた。
『だが、私たちの存在は、やはり人間の社会には異質すぎる。……だから、記憶は消させてもらう』
「待ってくれ!」
俺は叫んだ。
「記憶を消す必要なんてない!……記憶は、俺たちが共に戦い、生きた証だ。それを消すなんて、俺は嫌だ!」
「俺もだ!ミュウツー、俺たちは絶対に秘密を守る!だから……!」
サトシも必死に訴える。
ミュウツーは、俺たちの目を見つめた。
そこにあるのは、恐怖でも差別でもなく、純粋な友情と信頼。
『……分かった。お前たちの記憶は、そのままにしておこう』
ミュウツーは、湖の霧を操り、ピュアーズ・ロック全体を深い霧で包み込み始めた。
『ただし、この場所は隠させてもらう。……二度と、悪意ある者がたどり着けないように』
霧が濃くなり、ミュウツーたちの姿が見えなくなっていく。
『さらばだ、ミナト、サトシ。……いつかまた、運命が交わる時まで』
「ああ!元気でな、ミュウツー!」
「また会おうぜ!」
俺たちは、霧の中に消えていく友に向かって、いつまでも手を振り続けた。
彼らはもう、誰の影でもない。
この世界で生きる、一つの命として、確かにそこに在るのだ。
ヘリに乗り込み、俺たちはピュアーズ・ロックを後にした。
雲海の上に出ると、そこには突き抜けるような青空が広がっていた。
「(終わったんだな……)」
俺の懐には、三つの秘宝がある。
だが、その重みは、これまでの旅の全てを物語っていた。
俺たちは、マサラタウンへと機首を向けた。
帰るべき場所へ。
そして、次なる旅立ちの場所へ。
心地よい疲労感と共に、俺は静かに目を閉じた。