アニポケ転生者物語 作:投稿者
俺が目を覚ますと、そこは、逆さまになった船室の一つだった。幸い、大きな怪我はないようだ。隣では、サトシ、タケシ、そしてカスミも、気を失っていた。
「う……ここは……」
サトシが、呻きながら身を起こす。
「大丈夫か、みんな」
「ああ、なんとかな。それより、他の人たちは……?」
タケシが、心配そうに言う。
「分からない。だが、今は俺たちが生き残ることを考えよう。この船は、もう沈み始めている」
窓の外は、暗い海の底だ。時折、魚の影が通り過ぎていく。完全に、海の中だ。
「そんな……!」
カスミが、絶望的な声を上げる。だが、俺は諦めていなかった。
「ポリゴン、状況は?」
俺の呼びかけに、ボールから出てきたポリゴンが、デバイスに情報を表示する。
『現在位置、水深50メートル。船体、複数の区画で浸水を確認。しかし、中央区画の隔壁はまだ機能しており、完全な水没まで、推定3時間程度の猶予あり』
「3時間……。それまでに、脱出ルートを見つけなければ」
俺は、ポリゴンが事前にダウンロードしておいた、船の構造図を呼び出した。
『脱出経路を検索。上部甲板への最短ルートを発見。しかし、経路上に3箇所の浸水区actと、破損した隔壁が存在。突破は困難と予測』
「困難だろうが、やるしかないんだ」
俺は、フシギソウとミニリュウのボールを握りしめた。
「俺たちの、持てる力のすべてを使って、ここから脱出するぞ」
俺の言葉に、三人も、そしてそのポケモンたちも、力強く頷いた。
暗く、冷たい海の底。逆さまになった豪華客船からの、決死の脱出劇。その幕が、今、静かに上がった。
『了解。まず、前方30メートル先の階段を使い、下の階層――つまり、上へと向かいます』
ポリゴンの指示に従い、俺たちは慎重に進み始めた。手すりだったものを足がかりに、壁を伝って進む。まるで、重力を無視したアスレチックのようだ。
「うわっ!」
サトシが、足を滑らせてバランスを崩す。
「危ない!フシギソウ、『つるのムチ』!」
俺の指示に、進化したフシギソウが応える。背中の蕾から放たれたツルは、フシギダネの頃よりさらに太く、力強い。そのツルが、サトシの体を安定感抜群にがっちりと掴み、安全な場所へと引き寄せた。
「サンキュー、フシギソウ!すっげえパワーだな!」
「油断するな、サトシ。一歩間違えれば、命はないんだぞ」
俺たちは、互いに助け合いながら、最初の難関である階段へとたどり着いた。だが、その先は、大量の海水で満たされていた。
「浸水区画か……。ここをどうやって……」
タケシが、行く手を阻む水を見て、顔をしかめる。
「ミニリュウ、カスミ、出番だ」
俺はミニリュウを、カスミはヒトデマンをボールから出した。水を得た二匹は、嬉しそうに一声鳴くと、躊躇なく水中へと潜っていく。
「二人とも、この先の通路の状況を調べてきてくれ。危険な場所や、障害物がないか」
ミニリュウとヒトデマンは、俺の指示を正確に理解し、偵察を開始した。その様子は、デバイスを通して、リアルタイムで俺の視界に送られてくる。通路は瓦礫で一部が塞がれているが、通り抜けられないほどではない。
「よし、行けそうだ。サトシ、ゼニガメはいるな?タケシも、イシツブテは水中でも大丈夫か?」
「おう、任せろ!」
「ああ、問題ない」
俺たちは、それぞれ水に強いポケモンを繰り出し、覚悟を決めて冷たい海水の中へと飛び込んだ。ミニリュウとヒトデマンが先導し、俺たちを安全な場所へと導いてくれる。暗い水中を、ポケモンたちの放つかすかな光だけを頼りに進む。息が、苦しい。
なんとか浸水区画を突破し、次の区画へとたどり着いた俺たちを待っていたのは、分厚い鉄の扉だった。船が転覆した衝撃で、歪んでしまったらしい。
「くそっ、開かねえ!」
サトシとタケシが、二人で扉を押すが、びくともしない。
「ポリゴン、この扉の構造データを分析。一番脆い場所はどこだ?」
『分析中……扉の右上ヒンジ部分に、構造的欠陥を検出。そこに衝撃を与えれば、突破できる可能性あり』
「よし。フシギソウ、『はっぱカッター』!」
フシギソウが放つ無数の葉の刃は、進化前とは比べ物にならないほど鋭く、速い。それがポリゴンが示した一点に集中して叩き込まれる。金属が削れる甲高い音が響き、扉のヒンジ部分が、火花を散らしながら少しずつ破壊されていく。
「ピカチュウ、『アイアンテール』!」
サトシのピカチュウが、光り輝く尻尾で、弱ったヒンジに強烈な一撃を見舞う。凄まじい破壊音と共に、鉄の扉が、内側へと吹き飛んだ。
「やった!」
俺たちは、ハイタッチを交わし、先を急ぐ。ポリゴンの的確な分析と、ポケモンたちの力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる。その確信が、俺たちの心を強く支えていた。
だが、最後の隔壁が、俺たちの前に立ちはだかった。それは、緊急時に船の区画を完全に密閉するための、特別に分厚い壁だった。しかも、その向こうからは、大量の水が流れ込む音が聞こえる。この壁の向こうは、完全に海だ。
「もう、ここまでか……」
サトシが、諦めかけたように呟いた。
「いや、まだだ」
俺は、首を横に振る。
「ポリゴン、この隔壁を爆破する。衝撃を計算し、俺たちが巻き込まれずに、壁だけを破壊できるポイントを割り出せ」
『……了解。極めて高いリスクを伴います。実行しますか?』
「やるしかないんだ」
ポリゴンが、壁の強度、水圧、そして爆破に必要なエネルギー量を、猛烈なスピードで計算していく。
「タケシさん、イシツブテの『じばく』は使えるか?」
「なっ……!ミナト、お前、まさか……!」
「大丈夫だ。ポリゴンの計算通りにやれば、うまくいく」
タケシは、一瞬ためらったが、俺の真剣な目を見て、覚悟を決めたように頷いた。
ポリゴンが、壁の一点を、赤いレーザーポインターで示す。
『計算完了。このポイントに、全エネルギーを集中させてください』
「タケシさん、今だ!」
「すまない、イシツブテ!『じばく』だ!」
タケシの悲痛な叫びと共に、イシツブテが眩い光を放ち、壁のポイントへと突進していく。俺たちは、衝撃に備えて、身を伏せた。
―――轟音。
船全体が、これまでで一番大きく揺れる。爆発の衝撃で、俺たちの体は宙に舞い、壁の破片と共に、暗く冷たい海の中へと放り出された。
意識が朦朧とする中、俺は何か力強いものに体を包まれるのを感じた。フシギソウの、逞しくなったツルだ。そして、ミニリュウが、俺の口に空気を送り込んでくれている。
水面に顔を出すと、そこには、朝日が昇ろうとしていた。俺たちを飲み込んだサント・アンヌ号の残骸は、もうどこにも見えない。
俺たちは、生き延びたのだ。
ポケモンたちと、仲間たちと、力を合わせた結果だ。俺は、意識を失う寸前、助けてくれた相棒たちの頭を、そっと撫でた。ありがとう、と、声にならない声で呟きながら。
チラシ裏から表にでるべきか
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チラシ裏でいい
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表にでてもいい
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まだ表にでるのは早い