アニポケ転生者物語 作:投稿者
第193話
ピュアーズ・ロックでの激闘を終え、俺は久しぶりにヤマブキシティのシルフカンパニー本社を訪れていた。
巨大なビルを見上げると、かつてロケット団に占拠された時の記憶が蘇るが、今は平和な活気に満ちている。
「よく帰ってきたわね、ミナト」
研究室で待っていたのは、白衣を着た母さんだった。
「おかえりなさい。……少し、逞しくなったかしら?」
「ただいま、母さん。……いろいろあったよ」
俺は、今回の旅の報告と、何よりも重要な「あるデータ」を提出するためにここに来た。
ポリゴンZの入ったモンスターボールを取り出す。
「この子のことね。……アルトマーレから送られてきたデータを見た時、研究室中が大騒ぎになったわよ」
俺はポリゴンZを外に出した。
「ゼェェェッ!」
ポリゴンZは、不規則な軌道で空中を浮遊し、デジタルな瞬きをした。首が奇妙な角度で回転するが、それは苦痛ではなく、彼なりの最適化された動作なのだ。
「ポリゴンZ……。未確認の進化形。まさか、あなたが独自に進化させてしまうなんて」
母さんは、ポリゴンZの体にスキャナーをかざし、モニターに表示される複雑なコードの羅列に見入った。
「通常、ポリゴンのプログラムは完璧に整列されているわ。でも、この子のコードは……まるでカオスね。バグとエラーの塊みたい」
「バグじゃない。……可能性だ」
俺はきっぱりと言った。
「あいつは、古代の機械という未知の干渉に対抗するために、自らの殻を破ったんだ。既存の枠組みに囚われていては、救えない命があったから」
母さんは手を止め、俺の顔をじっと見つめた。
「……そうね。計算通りの答えしか出せないAIなんて、本当の知性とは言えないもの」
解析が進むにつれ、ポリゴンZの驚異的な能力が明らかになっていった。
次元の壁を越える演算能力。物理法則を局所的に書き換える干渉力。
それは、シルフが目指していた「次世代のポケモン」の形そのものだった。
「このデータは、シルフの、いえ、世界中の技術を十年は進めることになるわ。……お手柄ね、ミナト」
「俺の手柄じゃないよ。こいつの頑張りだ」
その夜、俺は母さんと二人で食事をした。
話題は自然と、ミュウツーのことになった。
「ロケット団の動きは、完全に沈静化したわ。……サカキの行方も分からない」
「あいつらは、もう手出しできないはずだよ。……俺たちが、そうしたからな」
母さんは、少し寂しそうに微笑んだ。
「あなたが遠くへ行ってしまう気がするわ。……ただのテスターだったはずの息子が、いつの間にか世界の運命を背負っているなんて」
「遠くへなんて行かないよ。……俺はいつでも、母さんの自慢の息子さ」
俺は照れ隠しにスープを飲み干した。
シルフカンパニーでの報告は終わった。
俺のテスターとしての役割は果たした。
だが、トレーナーとしての俺の旅は、まだ終わらない。
「次は、どこへ行くの?」
「……南だ。もっと暖かい、海と火山の地方へ」
母さんは、何も言わずに頷いた。
その沈黙が、何よりの応援だった。