アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第195話

出発の朝。マサラタウンの空は、これから始まる長い旅を祝福するかのように、一点の曇りもなく晴れ渡っていた。

俺は自室で、シルフカンパニー製の高機能リュックに荷物を詰めていた。傷薬、なんでもなおし、予備の着替え、そしてノートパソコン。

腰のベルトに装着されたモンスターボールのスロットは六つ。そのうち五つは、真新しい空のボールだ。

そして、一つだけ、大切に使い込まれたボールが収まっている。

 

「……よろしく頼むぞ、ポリゴンZ」

俺がボールに語りかけると、中から『肯定。マスターとの同期率、100%。いつでもいけます』という電子的な思念が返ってきた。

 

今回、俺がホウエン地方へ連れて行くことにしたのは、ポリゴンZただ一匹だった。

フシギバナやバンギラス、そしてカイリューといった頼れるエースたちは、オーキド研究所の広大な庭でしばしの休暇についてもらうことにしたのだ。彼らの力は強大すぎる。新しい土地で、新しい仲間と一から成長していくためには、彼らの力に頼りきりになるわけにはいかない。

それに、ポリゴンZの持つ高度な解析能力と電子戦能力は、未知の土地でのデータ収集に不可欠だ。彼自身も「もっと多くのデータを見たい、未知の環境に適応したい」と強く望んでいた。

 

「準備はいい?」

リビングへ降りると、母さんが玄関まで見送りに来てくれた。その手には、綺麗にラッピングされた包みがある。

「ああ。バッチリだ。忘れ物はないよ」

「はい、これ。……ホウエン地方に対応した新しいポケモン図鑑と、ポケナビよ。オーキド博士から預かっておいたの」

母さんから、最新型の赤いポケモン図鑑と、地図や連絡機能がついた便利なデバイス「ポケナビ」を受け取る。

「ありがとう。……行ってきます」

「気をつけてね。……無理しちゃダメよ」

 

俺は、住み慣れた家を出た。朝の冷気が心地よい。

巨大な白い船体に乗り込むと、汽笛が大きく鳴り響いた。

船が岸を離れ、カントーの地がゆっくりと遠ざかっていく。

マサラタウン、トキワ、ニビ、ハナダ……。俺たちが駆け抜け、戦い、成長してきた思い出の詰まった街並みが、水平線の彼方へと霞んでいく。

「さよなら、カントー。さよなら、ジョウト。……また会う日まで」

俺は手すりに寄りかかり、小さくなっていく故郷に向かって静かに呟いた。寂しさよりも、これから始まる未知への期待の方が遥かに大きかった。

 

俺の頭の中にある「現実」の知識、すなわち前世の記憶が、微かな予感を告げていた。

ホウエン地方では、大地と海を巡る、かつてない規模の壮大な争いに巻き込まれることになるだろう。

大地の拡大を目論むマグマ団、海の拡大を目論むアクア団。そして、宇宙からの謎の訪問者デオキシス。

俺たちの旅は、単なるバッジ集めでは終わらない。世界の存亡をかけた戦いになるはずだ。

 

「(退屈はしなさそうだな。……望むところだ)」

 

俺は、懐のポケットに入れた『水晶の欠片』と、ルギアとホウオウから託された『銀色の羽』と『にじいろのはね』の感触を確かめた。

これらは、俺がこの世界で生きてきた証であり、旅の道しるべだ。どんな困難があろうとも、この「証」がある限り、俺は迷わない。

 

海風を胸いっぱいに吸い込む。少し冷たいが、どこか甘い、南国の匂いが混じっている。

ふと見上げると、白い翼を持った鳥ポケモンたちが、船を追いかけるように飛んでいた。

「あれは……キャモメか。もうホウエンの海域に入ったみたいだな」

 

「行くぞ、ポリゴンZ。……新しい冒険の始まりだ!」

『了解。……ホウエン地方マップ、ロード完了。……未知の領域へ、アクセスを開始します』

 

船は、白い波を勢いよく蹴立てて、南へ、南へと進む。

その先には、見たことのない広大な大陸と、まだ見ぬ数多の出会いが、俺たちを待っている。

俺たちの新しい物語が、今、幕を開ける。

 

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