アニポケ転生者物語 作:投稿者
船がミシロタウンの港に近づくにつれ、潮風の中に混じる緑の匂いが濃くなってきた。
カントーのマサラタウンにも似た、穏やかで懐かしい空気。
だが、そこに生えている木々の種類や、飛び交う鳥ポケモンたちの鳴き声は、ここが未知の土地であることを雄弁に物語っていた。
「着いたな、ミシロタウン」
タラップを降り、俺はホウエンの大地を踏みしめた。
隣を浮遊するポリゴンZが、早速周囲のスキャンを開始する。
『気温24度、湿度60%。……非常に過ごしやすい気候です。南東の方角に、微弱ですが特殊な磁場反応を検知。研究所のような施設があると思われます』
「オダマキ研究所だな。……まずは挨拶に行こう」
俺たちが研究所へ向かう道中、森の方から誰かの叫び声が聞こえてきた。
「うわぁぁぁ! 誰か! 誰か助けてくれー!!」
「今の声は……!」
俺は駆け出した。
森の入り口付近で、白衣を着た恰幅の良い男性が、ポチエナの群れに追いかけ回されている。
ホウエン地方のポケモン博士、オダマキ博士だ。
「博士! 今助けます!」
俺は腰のボールに手をかけたが、ふと気づいた。
手持ちはポリゴンZと、ゲットしたばかりのキャモメだけだ。
「行け、キャモメ!」
俺はキャモメを繰り出した。
「キャーモッ!」
キャモメは空高く舞い上がり、ポチエナたちを威嚇する。
「キャモメ、『みずでっぽう』で威嚇射撃だ!当てる必要はない、追い払え!」
キャモメが口から鋭い水流を放ち、ポチエナたちの足元を濡らす。
驚いたポチエナたちが足を止める。
「今だ!『つばさでうつ』!」
キャモメが急降下し、リーダー格のポチエナの鼻先を翼で叩いた。
「キャンッ!?」
ポチエナたちは、空からの攻撃に怯え、森の奥へと逃げ去っていった。
「ふぅ……助かったよ。ありがとう、少年」
オダマキ博士が、額の汗を拭いながら礼を言った。
「私はオダマキ。ポケモン研究家だ。……君は?」
「カントーから来ました、ミナトです」
「おお、カントーから! それは見事なキャモメさばきだったね。ゲットしたばかりとは思えないよ」
その時、研究所の方から一人の少女が走ってきた。
赤いバンダナに、活動的な服装。
「博士! 大丈夫!?」
ハルカだ。
息を切らして走ってきた彼女は、無事な博士を見てホッと胸を撫で下ろした。
「もう、心配させないでよ!……あれ? この人は?」
「ああ、彼が助けてくれたんだ。ミナト君だ」
「はじめまして。ミナトです」
「私はハルカ。……ありがとう、ミナト君。すごかったね、キャモメの動き、とっても綺麗だった!」
ハルカが目を輝かせて俺を見上げた。
「え?あ、ああ、ありがとう」
「私、バトルのことよく分からないけど……ミナト君の指示、すごく安心感があったよ。……なんか、頼りになるお兄さんって感じ!」
ハルカは屈託のない笑顔を向けた後、少し照れたように視線を逸らした。
「(……いけない、初対面なのに馴れ馴れしかったかな?)」
俺も少し照れくさくなりながら、言葉を返した。
「ハルカちゃんも、これからポケモンをもらうのか?」
「うん! 今日が私の旅立ちの日なの!」
その後、俺たちは研究所へ戻り、ハルカが最初のポケモンを選ぶ瞬間に立ち会うことになった。
キモリ、アチャモ、ミズゴロウ。
ハルカが選んだのは、愛らしいヒヨコポケモンのアチャモだった。
「よろしくね、アチャモ!」
「チャモッ!」
「いいパートナーになりそうだな」
俺が言うと、ハルカは嬉しそうに微笑んだ。
「うん!……ねえミナト君、もしよかったら、バトルのこととか教えてくれる?」
「もちろん。俺でよければ」
こうして、俺のホウエンでの旅は、新しい出会いと共に幕を開けた。
頼れる先輩として、そしていずれは最大のライバルとして。
俺とハルカの物語が、ここから始まる。
そこへ、もう一人の来訪者が現れた。
「博士!ここですか!」
ピカチュウを連れた少年。サトシだ。
「サトシ!久しぶりだな!」
「ミナト!?お前も来てたのか!」
運命の歯車が、一気に回り出した音がした。
ミシロタウンの風は、新しい冒険の予感を運んでくる。
俺たちは顔を見合わせ、それぞれの夢に向かって走り出した。