アニポケ転生者物語 作:投稿者
コトキタウンのポケモンセンター。
夜も更け、他のトレーナーたちが寝静まった頃。俺は眠れずに一人、ロビーのソファに座って手持ちのポケモンたちのメンテナンスをしていた。
窓の外には、ホウエン地方特有の明るく大きな星々が輝いている。南十字星が、ここが南国であることを静かに告げていた。
「ポリゴンZ、調子はどうだ? 新しい地方の磁場には慣れたか?」
『システムオールグリーン。……ホウエンの環境データ、順調に蓄積中。湿度、気温、全てが新鮮』
「キャモメ、羽の艶がいいな。明日の飛行も頼むぞ」
「キャーモッ!」
「ジグザグマ、今日拾ったきのみ、ちゃんと分類しておいてくれよ」
「ジグッ!」
二匹の新しい仲間たち。
まだ少数だが、それぞれの個性が光る、頼もしいチームだ。
カントーやジョウトでの激闘を経て、俺は「強さ」の意味を再定義しつつあった。
ただレベルが高いだけじゃダメだ。環境に適応し、互いを補い合い、そしてトレーナーと心が通じ合っていること。それが、この未知の土地で生き抜く鍵になる。
「(ホウエンは広い。……まだまだ、出会っていないポケモンがたくさんいる)」
俺が考え込んでいると、背後から軽い足音が近づいてきた。
「……あれ、ミナト? まだ起きてたのか?」
振り返ると、そこにはパジャマ姿のサトシと、その肩に乗って眠たそうに目をこすっているピカチュウがいた。
「ああ。ちょっとポケモンのチェックをな。……お前こそ、どうしたんだ? 明日は早いぞ」
「いやぁ、なんか目が冴えちゃってさ。……ピカチュウも、ちょっと電気の調子が気になるみたいで」
サトシはそう言いながら、俺の隣にドカッと座った。
「ピカチュウ、大丈夫か?」
「ピカァ……」
「ここに来る直前、ロケット団のメカに捕まった時の影響がまだ少し残ってるのかもな。……まあ、センターで回復してもらったし、大丈夫だとは思うけど」
サトシはピカチュウの頬を優しく撫でる。その手つきは、長年の相棒に対する深い愛情に満ちていた。
「へへ、でもワクワクするよな! ホウエンリーグ! まだ見ぬジムリーダー、新しいポケモン! 俺、絶対優勝してやるんだ!」
サトシの瞳が、星空よりも輝いている。
「ああ。……お前ならやれるさ。でも、ホウエンのレベルは高いぞ。特に、トウカジムのセンリさんは強敵だ」
「センリさん……ハルカのパパさんだよな。ノーマルタイプの使い手か……。燃えてくるぜ!」
そこへ、今度はハルカが、自動販売機で買ったジュースを手にやってきた。
「あれ、二人とも? 男子会?」
「よう、ハルカ! お前も起きてたのか」
「うん、ちょっと喉が渇いちゃって……。……ねえ、混ぜてよ!」
ハルカは嬉しそうに笑うと、俺とサトシの向かい側に座った。
三人だけの、小さな夜の作戦会議だ。
「……ねえ、二人とも。旅って、大変?」
ハルカが、少し不安そうに尋ねる。彼女にとっては、これが初めての本格的な旅だ。
「大変だよ。雨にも降られるし、野宿もするし、危険な目にも遭う。……今日も早速、野生のポチエナに追いかけられたしな」
俺が苦笑いしながら答えると、ハルカは「うぅ……」と肩を落とす。
「でもさ!」
サトシが身を乗り出して、力強く言った。
「それ以上に楽しいぜ! 見たことのない景色、美味しい食べ物、そして最高の仲間との出会い! ……大変なことなんて、全部吹っ飛ぶくらい最高なんだ!」
「サトシ君……」
「俺、旅に出て本当によかったって思ってる。……だからハルカも、心配すんなよ! 俺たちがついてる!」
サトシの真っ直ぐな言葉に、ハルカの表情がパッと明るくなる。
「……うん! そうだね! ……私、まずはトップコーディネーターを目指して頑張る! ミナト君やサトシ君に負けないくらい!」
「おう! その意気だ!」
俺は、そんな二人を微笑ましく見つめた。
熱血漢のサトシと、新人トレーナーのハルカ。そして、転生者である俺。
奇妙な取り合わせだが、この三人なら、どんな困難も乗り越えていける気がした。
「焦らなくていいさ。……ハルカちゃんには、ハルカちゃんのペースがある。……サトシには、サトシの爆発力がある。……俺は、それを一番近くで見届けるよ」
「なんだよミナト、お前も主役だろ? 一緒に強くなろうぜ!」
サトシが俺の背中をバシッと叩く。
「いてて……。分かってるよ。俺も、シルフのテスターとして恥じない結果を残すつもりだ」
三人の間に、穏やかで、そして熱い時間が流れる。
出会ってまだ二日目だが、不思議と昔からの幼馴染のような、心地よい一体感があった。
「明日はトウカシティ。……センリさんに会うのが楽しみだな」
「うん! パパ、きっとビックリするよ!」
「俺も挨拶しねえとな! ……よし、寝るか!」
俺たちは、明日の冒険への期待を胸に、それぞれの部屋に戻った。
ホウエンの旅は、まだ始まったばかり。
だが、この夜の風は、俺たちをきっと素晴らしい場所へと連れて行ってくれる。
そんな確信に近い予感を抱きながら、俺は深い眠りについた。