アニポケ転生者物語 作:投稿者
コトキタウンを出発した俺たちは、トウカシティへと続く102番道路を歩いていた。
ここは木漏れ日が心地よい森の小道だが、草むらが深く、野生のポケモンたちが多く潜んでいる。
南国の暖かい風が吹き抜け、カントーのトキワの森とはまた違う、生命の力強さを感じる場所だ。
「ジグザグマ、何か見つかったか?」
「
先頭を歩くジグザグマが、鼻をピクピクさせながら草むらを掻き分け、オレンのみを見つけて持ってきた。
「よしよし、偉いぞ」
俺はジグザグマの頭を撫でる。彼の「ものひろい」能力は、ただアイテムを拾うだけでなく、森の細かな異変を察知するのにも役立っている。
今回の旅は、ポリゴンZという最強のパートナーを連れてはいるが、俺はあえて彼に頼らないことを決めていた。
スキャンも、ハッキングも、ナビゲートも。
まずは自分の足で歩き、自分の目で見て、新しい仲間たちの本能を信じる。
それが、ホウエンという未知の地に挑む俺なりの「誠実さ」だと思っていた。
ガサゴソ……。
突然、ジグザグマが足を止め、耳をピンと立てた。
「……? どうした?」
ジグザグマは不安そうに鳴くと、いつもの宝探しとは違う、慎重な足取りで深い茂みの奥へと向かっていった。
俺はその後を追う。キャモメも上空から心配そうに旋回している。
サトシとハルカも、「何かいたのか?」と付いてくる。
茂みを掻き分けた先。
そこには、巨大なクヌギの木の根元にうずくまるようにして震えている、小さなポケモンがいた。
緑色の帽子のような頭部、白い体。
ラルトスだ。
「ラルトス……!」
「ラル……」
ラルトスは俺たちに気づくと、怯えてさらに体を縮こまらせた。
頭のツノが赤く不規則に点滅している。熱があるようだ。
俺はポリゴンZに分析を頼もうとして、思いとどまった。
「(いや……自分の目で見るんだ)」
俺はゆっくりと近づき、ラルトスの目線に合わせてしゃがみ込んだ。
触角の熱。呼吸の乱れ。そして、周囲に漂う微かな焦げた匂い。
「(野生のポケモンに襲われた……いや、何かから必死に逃げてきたのか?)」
ラルトスは、人の感情を敏感に感じ取るポケモンだ。
俺が少しでも焦りや功名心を持っていれば、彼女はテレポートで消えてしまうだろう。
俺は深呼吸をし、心を凪の状態にした。
ただ純粋に、「君を助けたい」という透明な感情だけを前に出す。
「大丈夫だ、怖くないよ。俺はミナト。……君を助けたいんだ」
俺は優しく語りかけ、手を差し出した。
ラルトスは震えながらも、ゆっくりと顔を上げた。
俺の目を見つめ、恐る恐る小さな手を、俺の掌に重ねた。
その瞬間、温かい、しかし悲痛な波動が俺の脳内に直接流れ込んできた。
『……いたい。……こわい。……助けて』
「ああ。もう大丈夫だ。俺が守ってやる」
俺はカバンから、ジグザグマが拾ってきてくれた高品質な傷薬を取り出し、ラルトスの擦り傷に吹き付けた。さらに、体力を回復させるための特別なポロックを小さく砕いて食べさせる。
数分後、ラルトスのツノの点滅が穏やかな青白い光に変わった。
「
ラルトスは立ち上がり、おぼつかない足取りながらも、俺の周りを嬉しそうに回った。
「よかった。……これならもう大丈夫だな」
俺が立ち去ろうとすると、ラルトスが俺のズボンをギュッと掴んだ。
「
「……俺と一緒に来たいのか?」
ラルトスは力強く頷いた。
言葉ではない、純粋な「意志」が俺の心に響く。
『貴方の心は、森の風みたいに透き通っている。……一緒に、あの青い空を見てみたい』
「そうか。……なら、歓迎するよ。俺たちの旅は、これからもっと賑やかになるぞ」
俺はモンスターボールを差し出した。
「ラルトス、ゲットだ」
カチッ。
ボールが揺れ、星が飛ぶ。
三人目の仲間、ラルトス。
エスパー・フェアリータイプの彼女は、俺の「感覚」を補い、チームの心を繋ぐ大切な存在になるだろう。
「やったね、ミナト君!可愛い子が仲間になったね!」
ハルカが自分のことのように喜んでくれる。
「ああ。……この子と一緒に、もっと強くなるよ」
俺はラルトスを肩に乗せ、再び歩き出した。
ポリゴンZは、その様子をデバイスの中から静かに、しかしどこか満足げに見守っていた。
頼るのではなく、共にあること。
俺のホウエンの旅は、少しずつ「俺自身の物語」として動き始めていた。