アニポケ転生者物語 作:投稿者
翌朝。
俺たちがトウカシティを出発しようとすると、街の出口に大きなリュックを背負ったマサトが立っていた。
「パパ!ママ!……僕、決めたんだ。お姉ちゃんたちと一緒に旅に行く!」
「マサト!?」
ハルカが驚いて声を上げる。センリさんとミツコさんも、困惑した表情で顔を見合わせた。
「僕、今まで本の中だけでポケモンのことを分かったつもりになってた。でも、ミナトお兄ちゃんのラルトスを見て、気づいたんだ。……本当の絆は、自分の足で歩いて、自分の心でぶつからないと作れないんだって!」
マサトの瞳には、かつてないほど強い意志が宿っていた。
昨日、俺のラルトスと一緒に遊んだ時間が、彼の中に眠っていた「冒険心」を呼び覚ましたらしい。
「マサト、旅は厳しいぞ。本に書いてあるような綺麗なことばかりじゃない」
センリさんが厳格な声で諭す。
「分かってる!……でも、僕には知識がある!サトシお兄ちゃんたちが迷わないように、僕がナビゲートするよ!……ねえ、いいでしょ!?」
マサトは、大切そうに抱えていたポケナビを掲げた。
センリさんは、しばらくマサトの目を見つめていたが、やがてふっと肩の力を抜いた。
「……ふん。誰に似たのか、一度言い出したら聞かないな。……ミツコ、いいだろう?」
「ええ。ハルカもいることですし……。マサト、お姉ちゃんの言うことをよく聞くのよ?」
「やったぁぁぁ!ありがとう、パパ、ママ!」
マサトが歓喜の声を上げる。
「よーし!マサト、一緒に行こうぜ!賑やかになるな!」
サトシがマサトの頭をわしゃわしゃと撫でる。
こうして、サトシ、ハルカ、マサトの三人旅が本格的にスタートすることになった。
「ミナトはどうするの?やっぱり一人で行くの?」
ハルカが尋ねる。
「ああ。俺はテスターとして、独自のルートで地形やポケモンの分布を調査しなきゃならない。……サトシたちの王道の旅とは、少しテンポが違うからな」
俺は、自分の役割を再確認した。
俺の目的は、この世界の「現実」を記録し、脅威を未然に防ぐこと。
サトシたちの成長を邪魔しない程度に距離を置きつつ、必要な時には駆けつける。それが、今の俺にできる最善の関わり方だ。
「……ミナトお兄ちゃん。そのラルトス、大切にしてね」
マサトが、少しだけ名残惜しそうに俺の肩のラルトスを見た。
「ああ。約束するよ。……マサト君も、いいナビゲーターになれよ。いつか、お前が育てたポケモンと戦えるのを楽しみにしてる」
「うん!僕、最高のトレーナーになるから!」
俺たちは、トウカシティのゲート前で別れた。
サトシたちは、104番道路の海岸線を目指して歩き出す。
俺は、それを見送り、別の道――鬱蒼と茂るトウカの森の入り口へと向かった。
「(さて、と。……俺たちも行くか)」
俺は、ポケナビを確認し、森の深部へと足を踏み入れた。
ポリゴンZには、あえて「異常事態が起きるまで休んでいろ」と伝えてある。
今は、キャモメの目と、ジグザグマの鼻、そして新入りのラルトスの感応力。
この「ホウエン・チーム」の力だけで、この森を抜けてみせる。
「頼んだぞ、みんな」
俺の呼びかけに、三匹がそれぞれの鳴き声で応えた。
新天地での、俺自身の挑戦。
トウカの森の冷たい空気が、心地よく肌を刺激していた。