アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第206話

カナズミシティの喧騒を離れ、北へ一時間ほど歩くと、そこには岩山をくり抜いたような無骨な穴が開いていた。

かつては「カナズミの大動脈」と呼ばれ、日夜トロッコが行き交い、鉄と汗の匂いが充満していたであろう金鉱山。

だが今は、入り口付近には錆びついたレールと朽ちかけた看板だけが残り、「廃鉱山」として静寂に包まれている。

ひんやりとした湿った空気が中から流れ出し、まるで巨大な生物の呼吸のように感じられる。

 

「(不自然な振動、か……)」

 

俺は自分の足音を殺しながら、暗い坑道を進んでいった。

足元には、ジグザグマが鼻をピクピクさせながら先行し、上空からはキャモメが低空飛行で周囲を警戒している。ラルトスは俺の隣で、ツノを微かに光らせて周囲の精神波を探っている。

崩れかけた坑道の壁には、ズバットたちがぶら下がっており、俺たちの侵入を監視しているようだ。

 

ジグッ!(こっち!)

ジグザグマが、岩壁の奥から響く微かな音を捉えた。

リズミカルで、重厚な響き。それは、自然の落石音などではない。何者かが意志を持って、硬いものを叩き続けている音だ。

 

音のする方へ向かうと、広大な地下空洞に出た。

かつては採掘場だったのだろう。天井は高く、所々に巨大な重機の残骸が放置されている。

そこには、数匹のココドラたちが集まっていた。

彼らは自分の体を岩壁にぶつけたり、お互いに体当たりをしたりして、自慢の鎧を鍛え上げている。

「ココッ!」「ココラッ!」

彼らの声が、空洞に反響している。

 

だが、その群れから少し離れた場所。

光の届かない薄暗い隅に、一匹だけ浮いている個体がいた。

通常のココドラは、鈍い銀色の装甲に水色の瞳をしている。だがその子は、透き通るような美しい白銀の装甲を纏い、何よりもその瞳が、燃えるような鮮やかな赤色に輝いていた。

 

「……色違いのココドラか」

 

美しい白銀。そして、意志の強さを感じさせる紅い瞳。だが、その目はひどく孤独だった。

他のココドラたちが集団で効率よく修行しているのに対し、その白銀のココドラは一人で巨大な硬岩に向き合い、ボロボロになりながらも体当たりを繰り返していた。

仲間に入れてもらえないのか、それとも自ら拒絶しているのか。

 

「ココッ!ココォッ!!」

渾身の体当たり。だが、岩はびくともしない。

ココドラは跳ね返されて地面を転がるが、すぐに立ち上がり、また岩に向かっていく。

その鎧には、無数の傷と凹みが刻まれていた。痛々しいほどの努力の跡だ。

 

「(……はぐれていたんじゃない。自分から群れを離れたのか)」

 

他の仲間たちとは違う自分の色。

それが原因で疎外されたのかもしれない。あるいは、「皆と同じやり方では強くなれない」と悟り、自ら「自分だけの強さ」を求めて孤高を選んだのかもしれない。

どちらにせよ、その不器用なまでの直向きさに、俺の心は強く惹かれた。

かつて、色違いのバサギリ(ストライク)と出会った時のことを思い出す。彼もまた、孤独の中で強さを求めていた。

 

ラル……(あの心……すごく熱い。でも、寂しい)

ラルトスが、ココドラから放たれる精神波を感じ取って呟いた。

悲しみではない。そこにあるのは、純粋な、あまりにも純粋な「強くなりたい」という渇望だ。

そして、その奥底にある、「誰かに認めてほしい」という微かな願い。

 

その時、ココドラが俺たちの気配に気づいた。

彼は修行の手を止め、鋭い眼光で俺たちを射抜いた。

小さな体からは想像もできないほどの圧力が、空気を震わせる。

「グルル……」

喉を鳴らし、威嚇してくる。人間に対する警戒心は相当なものだ。

 

「邪魔するつもりはない。……ただ、君の戦う姿を見ていたんだ」

 

俺が一歩前に出ると、ココドラは低い姿勢で構えた。

全身の筋肉がバネのように収縮する。いつでも飛びかかれる態勢だ。

 

「自分だけの答えを探しているんだな。……なら、俺がその手伝いをしてやろうか?」

 

「ココォォッ!!」

拒絶の咆哮。

ココドラは、一筋の白銀の閃光となって、俺たちに向かって突っ込んできた。

言葉など不要。力で語れということか。

 

「(来たな。……受けて立つぞ、鋼の戦士!)」

 

俺は、覚悟を決めてボールを握りしめた。

孤独な鋼の魂が、地下深くで激突しようとしていた。

静寂だった廃鉱山に、新たな闘志の火が灯った。

この出会いが、俺たちの運命を大きく変えることになる。

 

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