アニポケ転生者物語 作:投稿者
ポケモンコンテスト・カイナ大会。
会場となる巨大なホールは、満員の観客で埋め尽くされていた。
スポットライトが交差し、華やかな音楽が流れる。
「うわぁ……すごい人!」
控室で、ハルカが緊張でガチガチになっている。
「大丈夫だハルカ。お前のアチャモなら、きっと可愛くアピールできるさ」
サトシが励ます。
「そうよ。……それに、あいつには負けられないもん」
ハルカの視線の先には、緑色の髪の少年――シュウがいた。
彼はロゼリアと共に、余裕の表情で手入れをしている。
「ふん。素人が、怪我をしないようにね」
シュウが冷ややかに言い放つ。
「なんですってー!」
「まあまあ。……俺たちも準備しよう」
俺はヒンバスのボールを磨きながら、静かに闘志を燃やしていた。
まずは一次審査。技の美しさを競うパフォーマンス部門だ。
ハルカのアチャモは、炎の輪をくぐる演技で会場を沸かせ、無事に通過した。
シュウのロゼリアも、花びらの舞で圧倒的な美しさを見せつけた。
そして、俺の番が来た。
「エントリーナンバー101番、マサラタウンのミナト選手とヒンバスです!」
「行くぞ、ヒンバス。……俺たちの『美しさ』、叩きつけてやれ」
俺がボールを投げると、ステージの中央に設置された巨大な水槽(フィールド)に、ヒンバスが飛び込んだ。
「ヒンッ!」
泥色の、決して綺麗とは言えない鱗。頼りなげな目つき。
観客席からは、「えっ、ヒンバス?」「珍しいけど、コンテスト向きじゃないだろ……」という困惑の声が漏れる。
「(今に見てろよ……。本物の輝きは、表面だけにあるんじゃない)」
「ヒンバス、『あられ』!」
ヒンバスが水槽から飛び出し、高く舞い上がった。
次の瞬間、天井から冷たい氷の粒が、粉雪のようにステージに降り注いだ。
会場の空気が一気に冷え込み、スポットライトの光が氷の結晶に反射して、無数の小さな虹を空中に描く。
「続けて、『ひかりのかべ』!」
ヒンバスの周囲に、幾何学模様を描く透明な壁が出現した。
降り注ぐ氷の粒がその壁に当たり、屈折し、増幅される。
万華鏡のように刻々と変化する光の幾何学模様が、ヒンバスの泥色の体を、神秘的な白銀のシルエットへと変貌させていく。
「そして……最後だ!『ミラーコート』!!」
ヒンバスが全身を鏡のように輝かせた。
周囲の全ての光、氷の輝き、観客の驚嘆。
それら全てを吸収し、何倍にも膨らませて解き放つ。
一瞬、ホール全体が目が眩むほどの純白の光に包まれた。
静寂。
そして、一呼吸置いてから、爆発的な歓声が沸き起こった。
「な、なんだ今の光は……!?」
「地味なヒンバスが、まるでダイヤモンドみたいに……!」
審査員のコンテスタも、立ち上がって拍手を送っていた。
「素晴らしい!『素材の地味さ』を逆手に取り、光の演出でここまで高めるとは!これぞコーディネーターの真骨頂だ!」
一次審査の結果。
俺はシュウを僅差で抑え、トップ通過を果たした。
「やったな、ヒンバス」
俺はヒンバスをボールに戻し、心地よい重みを感じた。
だが、その時、俺の心の中に、ある種の「驕り」が芽生えていた。
「(この演出さえあれば……二次審査のバトルも、美しさで圧倒できる。俺の計算通りにいけば、優勝は目の前だ)」
その慢心が、次のステージで俺を地獄へと突き落とすことになるとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。
勝利への確信が、最も大切な「何か」を曇らせていたのだ。