アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第220話

一次審査をトップで通過した俺は、どこか高揚した気分のまま、二次審査――コンテストバトルのリングへと向かった。

コンテストバトル。それは5分という限られた時間の中で、技の美しさを見せつけつつ、相手のポイントを減らしていく特殊な戦いだ。

通常のバトルとは違い、ただ攻撃を当てるだけでなく、相手の技を美しく「いなす」ことや、自分の技をより「華やかに」見せることが要求される。

 

「(大丈夫だ。ヒンバスの光の演出は、どんな相手も圧倒できる)」

 

俺の対戦相手として名乗りを上げたのは、地元カイナシティで名を馳せるベテランコーディネーター、エリナ。

そして、彼女のパートナーとしてフィールドに現れたのは――。

 

「行け、ミロカロス!貴方の慈愛の光を見せてあげて!」

 

「ミロォォォォ……」

水しぶきと共に現れたのは、息を呑むほどに美しい大蛇。

虹色の鱗、優雅に広がる扇のような尾びれ、そして慈愛に満ちた瞳。

世界で最も美しいポケモンと言われる、ミロカロスだ。

 

スタジアム中から、溜息のような歓声が漏れる。

「ヒンバス対ミロカロス!まさに、進化のビフォーアフター対決です!」

実況の声が会場をさらに煽る。

 

「(……面白い。進化形が相手なら、こっちの輝きの方が上だってことを証明してやる)」

 

俺の心の中で、冷徹な勝利への計算が動き出した。

「バトル開始!!」

 

「ヒンバス、『れいとうビーム』!螺旋を描いて撃ち込め!」

俺は先制攻撃を指示した。ヒンバスが氷の光線を放つ。光線は二条の螺旋となり、美しく煌めきながらミロカロスに迫る。

 

「ミロカロス、舞いながらかわして。……『しんぴのまもり』」

ミロカロスは、踊るような優雅な動きで光線を回避した。さらに、光のベールを纏うことで、ヒンバスの技の輝きを自身の美しさに取り込んでしまった。

「なっ……!?」

俺のポイントゲージが、一気に削られる。

 

「(くっ……演出で負けたのか!?……なら、もっと派手なやつを!)ヒンバス、最大出力の『りゅうのいぶき』だ!ステージ全体を青い炎で染めろ!」

 

俺は焦っていた。ヒンバスの小さな体には、連発するには負担の大きい大技を指示し続けた。

ヒンバスは、俺の期待に応えようと、必死にエネルギーを振り絞る。

青い炎が吹き荒れ、幻想的な空間が作られる。観客は喜んでいる。……だが、ヒンバスの呼吸は明らかに乱れ始めていた。

 

「ミロカロス、仕上げよ。……『ハイドロポンプ』」

エリナの冷静な声。

ミロカロスが放った水流は、荒々しい暴力ではなく、一筋の清冽な光の矢のように、ヒンバスの炎を真っ向から貫いた。

 

「ヒンバス、『ミラーコート』で反射しろ!倍にして返せ!!」

 

俺は、逆転の演出を狙って、カウンターを指示した。

だが、連戦の疲労と無理な技の連発で、ヒンバスの反応が一瞬遅れた。

光の膜が完成する前に、ミロカロスの放った高圧水流が、ヒンバスの小さな体を直撃した。

 

鈍い音と共に、ヒンバスがフィールドの壁まで吹き飛ばされた。

「ヒンバス!!」

 

「……そこまで!ヒンバス、戦闘不能!勝者、エリナ選手!!」

 

静まり返るスタジアム。

俺は、呆然と倒れているヒンバスを見つめていた。

ポイント負けではない。完全なノックアウト負け。

俺の、そしてヒンバスのデビュー戦は、あまりにも無残な形で幕を閉じた。

 

「……残念だったわね」

エリナが、倒れたミロカロスを労いながら、俺に冷ややかな視線を向けた。

「貴方の演技、一見すると綺麗だったわ。……でも、あれは『ヒンバスの美しさ』じゃない。貴方が書いた、身勝手な筋書きを押し付けていただけよ」

 

「……何?」

 

「ポケモンは、貴方の演出を輝かせるための小道具じゃないの。……あのヒンバス、最後の方は貴方の顔色を伺って戦っていたわ。……そんな演技に、誰が感動すると思う?」

 

エリナはそれ以上何も言わず、ステージを去っていった。

俺は震える足でフィールドに降り、泥だらけになったヒンバスを抱き上げた。

ヒンバスは、申し訳なさそうに、弱々しく「ヒン……」と鳴いた。

 

「……ごめん。……俺のせいだ」

 

俺の胸に、重い後悔がのしかかった。

テスターとして、数々のデータを見てきたはずの俺が。

カントーとジョウトを制したはずの俺が。

最も大切な、ポケモンの「心」を置き去りにしていた。

 

「(ジョウトでの栄光は、ここホウエンの厳しい洗礼の前では、何の役にも立たなかった)」

 

俺はヒンバスを抱きしめたまま、しばらく雨の中に立ち尽くしていた。

 

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