アニポケ転生者物語   作:投稿者

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【閑話】波分かつ道、それぞれの空へ

カイナの港での別れ

カイナシティでの騒動が一段落し、盗まれたデボンの荷物も無事に取り返した翌朝。

俺たちは、潮風が心地よい港の波止場に集まっていた。

 

「ミナト、本当に行くのか?」

サトシが少し寂しそうに、しかし俺の決意を尊重するような複雑な表情で尋ねてきた。

 

「ああ。俺はシルフのテスターとして、ニューキンセツのエネルギー残滓や、110番道路の電波干渉について詳細なデータを集める必要があるんだ。お前たちのペースに合わせていると、調査が疎かになっちまうからな」

 

俺は、デバイスの中のポリゴンZを軽く叩いた。今回の別行動は、昨日のアクア団の動きを受けてのものだ。奴らの狙いがより深い深海、あるいは高エネルギー施設にあることが分かり、俺自身が独自に動く必要性を感じていた。

 

「そっか……。ミナトにはミナトの戦いがあるんだもんな!」

サトシは納得し、パッと明るい笑顔を作った。

「じゃあ、キンセツシティのジムで会おうぜ!俺、絶対に三つ目のバッジを手に入れてやるからな!」

 

「ああ。俺も負けないさ」

 

俺は次に、ハルカに向き直った。彼女はアチャモを抱きしめ、どこか神妙な面持ちで立っていた。

 

「ハルカ。コンテストのことだけど……これからの大会、俺と被らないようにスケジュールを組まないか?」

 

「えっ?……どうして?」

 

「昨日の大会で分かったんだ。俺とハルカが同じ場所で競い合うのは、まだ早い。お互いに違う会場で、色んなコーディネーターと戦って、自分だけのスタイルを確立すべきだ」

 

俺は、昨日の自分の敗北を思い出した。

「俺はもっと、ヒンバスの良さを引き出せるようになりたい。……ハルカも、アチャモとの絆を深めたいだろ?……最後、グランドフェスティバルの大きなステージで、最高の演技で決着をつけよう」

 

ハルカは驚いたように目を見開いたが、やがて力強く頷いた。

「……うん!分かったわ!私、ミナトに追いつけるように、もっともっと頑張る!次に会う時は、びっくりさせるような演技を見せてあげるんだから!」

 

「楽しみにしてるよ。……マサト、サトシたちのナビゲート、頼んだぞ」

「任せてよ!ミナトお兄ちゃんこそ、迷子にならないでね!」

 

賑やかな笑い声を背に、サトシたちはサイクリングロードへと続く道を歩き出した。

俺は一人、彼らとは逆方向、海岸線の岩場を抜ける旧道へと足を踏み入れた。

 


戦略的ロードマップ

一人になった俺は、岩陰に座り込み、ポケナビとコンテストの開催予定表を照らし合わせた。

 

「ポリゴンZ、ハルカたちのルートを予測しろ。彼女たちはおそらく、次はシダケタウンの大会を目指すはずだ」

『肯定。……主要な街道沿いのスケジュールから推測し、ハルカ選手の次戦はシダケ大会である確率82%。……マスターは、別ルートのシダケタウンを避けた独自開催の小規模コンテストから実績を積むことを推奨します』

 

「そうだな。……まずはヒンバスの基礎コンディションを底上げするのが先決だ。昨日の敗北は、技の出し方以前の問題だったからな」

 

俺は、昨夜ジグザグマが拾ってきた『きれいなウロコ』を手に取った。

これをどう使うか。あるいは、もっと別の「美しさ」があるのか。

テスターとしての冷静な分析眼が、今の自分とポケモンの間にある「溝」を埋めるための計算を開始する。

 

「(主役はポケモン……。言葉では簡単だが、実行するのは難しいな)」

 


110番道路の特訓

カイナシティを離れ、110番道路の草むらを進む。

頭上ではサイクリングロードを走る人々の声が響いているが、下の道は野生ポケモンの宝庫だ。

 

「よし、みんな。特訓だ!」

 

俺はポリゴンZ以外のメンバーを全員出した。

キャモメ、ジグザグマ、ラルトス、ココドラ、そしてヒンバス。

 

「ココドラ、お前はラルトスのリフレクターをどう打ち破るか考えろ。……ジグザグマ、お前はキャモメの風を読んでアイテムを探すんだ」

 

各々が課題に取り組む中、俺はヒンバスとじっくり向き合った。

「ヒンバス。……昨日はごめん。お前のペースを無視して、俺の理想だけを押し付けた」

 

ヒンバスは水槽の中で、静かに俺を見つめている。

「お前がどう動きたいのか。……お前がどの瞬間に、一番『気持ちいい』と感じるのか。それを、この旅で一緒に探していこう」

 

俺は、ヒンバスの泳ぎをじっと観察した。

彼が尾びれを動かすリズム、水流を感じる角度、そして時折見せる、不格好ながらも必死なジャンプ。

データには現れない、その「生きた動き」を、俺は初めて心に刻んでいった。

 

その時、草むらから一匹のラクライが飛び出してきた。

「(電気タイプか。……キンセツジムへのいい練習になる)」

 

「ココドラ、前へ!『泥かけ』で地面を湿らせろ!……ラルトス、その泥を念力で操って、相手の足を止めろ!」

 

新旧の相棒たちが、俺の指示に応える。

昨日の反省を活かし、俺は「自分がどう見せたいか」ではなく、「相手がどう動き、味方がどう反応するか」に集中した。

結果、バトルは驚くほどスムーズに進み、ラクライを傷つけることなく追い払うことができた。

 


キンセツの灯火

夕暮れ時。

前方に、ホウエン地方最大のハイテク都市、キンセツシティの巨大なネオンが見えてきた。

そこは、テッセンという豪快な老人が守る、電気の聖域だ。

 

「(ニューキンセツ……。あそこにはロケット団の残党や、アクア・マグマの痕跡があるかもしれないな)」

 

俺は、懐の『銀色の羽』と『水晶の欠片』に触れた。

伝説の影は、常に俺の周囲に漂っている。

だが、今の俺には、それを共に背負ってくれる新しい相棒たちがいる。

 

「行くぞ、ポリゴンZ。……次の冒険が、あの光の向こうで待ってる」

 

『了解。……周辺の電気エネルギー濃度の上昇を確認。……データ収集、開始します』

 

俺は、独り静かに、しかし確かな足取りで街へと続く橋を渡った。

サトシたちとは違う道。

コンテストとジム戦、その両極を極めるための、俺だけの孤独で熱い旅路。

ホウエンの風は、夜に向けてさらに強く、そして心地よく吹き抜けていった。

 

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