アニポケ転生者物語 作:投稿者
テッセンさんから預かった『ちかのカギ』を、公園の目立たない場所に隠されていた通用口のカードリーダーに通す。
ピピッ、ガチャン。
重厚な電子ロックが解除される音と共に、鋼鉄の扉が重々しくスライドした。
中からは、長年密封されていたカビ臭い空気と、高電圧特有の鼻を刺すようなオゾンの匂いが漂ってくる。
「行くぞ、みんな」
俺はポリゴンZ、キャモメ、ジグザグマ、ラルトス、ココドラ、ヒンバスのボールを確認し、地下深くへと続く業務用エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターは、ガタゴトと頼りない音を立てながら降下していく。表示板の数字がB1、B2……と下がるにつれ、気圧の変化で耳がツンとし、空気の密度が変わっていくのを肌で感じる。
「ポリゴンZ、エリアスキャンを開始しろ。構造図とエネルギー分布をマッピングだ」
『了解。……アクティブソナー、起動。地下空間の3Dモデリングを開始します』
デバイスの画面に、緑色のワイヤーフレームで描かれた地下迷宮の地図が次々と構築されていく。
「(ニューキンセツ……。元々は地下都市計画の一環として建設されたが、計画中止に伴い無人化され、現在は完全自動制御の発電施設としてのみ稼働している場所。……人がいないはずの場所で、なぜトラブルが起きる?)」
チン、という到着音と共に扉が開く。
そこは、巨大なSF映画のセットのような地下空洞だった。
無数の太いパイプと極彩色のケーブルが血管のように壁や天井を張り巡らされ、施設全体が生き物のようにブーンという重低音を響かせている。
だが、照明は不規則に明滅し、所々で断線したケーブルから青白いスパークが散っている。明らかに異常事態だ。
『警告。エリア内の電圧が極めて不安定です。……現在値、定格の150%から200%で変動中。……また、野生の電気ポケモンが多数、異常興奮状態で徘徊しています』
ポリゴンZが冷静な電子音声で警告を発する。
「電圧変動の原因は?」
『不明。ですが、最深部のメインジェネレーター付近から、微弱ですが規則的なパルス信号を検知しました。……自然発生したものではありません』
「誰かが意図的に信号を送っているのか。……まずは現場の確認だ」
通路を進むと、行く手を阻むように数匹のコイルが現れた。
「ジジジッ!! ギギギッ!!」
彼らは目を血走らせ、身体の磁石を激しく回転させながら、敵意をむき出しにして電気ショックを放ってくる。普段は人懐っこいコイルたちが、ここまで攻撃的になるのは異常だ。
「キャモメ、回避だ! 上空から牽制しろ! ……ココドラ、『どろかけ』でセンサーを潰せ!」
キャモメが狭い通路の天井付近を飛び回り、コイルのターゲットを分散させる間に、ココドラが地面の土を跳ね上げてコイルの単眼(視覚センサー)を封じる。
「ラルトス、『ねんりき』で壁に固定しろ! 傷つけるなよ!」
ラルトスの青いサイコパワーがコイルたちを優しく捕らえ、壁に押し付ける。
無力化されたコイルたちは、しばらくジタバタしていたが、やがてその瞳から狂気が消え、キョロキョロと辺りを見回した後、慌てて通風孔の奥へと逃げ去っていった。
「どうやら、何かの信号で操られているわけじゃなく、特定の周波数に脳波が干渉してパニックになっているだけみたいだな」
俺はホッと息をついた。彼らを排除せずに済んでよかった。
俺たちは慎重に奥へと進んだ。
通路は迷路のように入り組んでおり、至る所に電子ロックのかかった色分けされた扉がある。
「青い扉と赤い扉……。スイッチで回路を切り替えて進むギミックか。……面倒だな」
俺はデバイスを操作パネルに直結させた。
「ポリゴンZ、ハッキングだ。このフロアのセキュリティプロトコルを書き換えろ」
『了解。……暗号化コード解析……タイプB、ローリングコード。……突破所要時間、3秒』
カチャリカチャリ、と高速でコードが解読されていく。
『セキュリティレベル3、解除。オープンします』
扉が開くたびに、新しいエリアと、新たな障害が現れる。まるで、巨大なダンジョンゲームの中に迷い込んだようだ。
「(誰かが意図的に、この迷宮を作ったのか? それとも、防衛システムが誤作動しているのか?)」
ふと、俺は通路の床に残された真新しい傷跡を見つけた。
しゃがみ込んで指でなぞる。コンクリートが削れ、微かにオイルの匂いがする。
「……キャタピラのようなものが引きずられた跡だ。それに、この焦げ付き……。人間が、何か重い機材を無理やり運んだ跡だ。しかも、つい数時間以内に」
この先にいるのは、野生のポケモンだけではない。
俺は気を引き締め、さらに深く、光の届かない地下世界へと足を踏み入れた。
足元でジグザグマが、不安そうに、しかし頼もしく「グルル……」と喉を鳴らして威嚇姿勢を取った。
俺たちの探検は、まだ始まったばかりだ。
暗闇の向こうから、何者かの視線を感じる。俺は懐中電灯の光を向けたが、そこにはただ、冷たいコンクリートの壁があるだけだった。
だが、気配は確かにそこにあった。
感想・評価いつもありがとうございます。
気づいている方もいるかもですが文字数を少しずつ増やしております。
また、BW編以降も書くことにしたので現在履修中でございます。