アニポケ転生者物語   作:投稿者

260 / 344
第227話

地下最深部、中央制御室の前。

厚さ50センチはあるだろう巨大な防爆扉が、行く手を完全に阻んでいた。

その扉の横、配線パネルがこじ開けられ、明らかに後付けされた無骨な黒い装置がメインケーブルに割り込ませてあった。

 

「これは……軍事用のハッキングデバイスか?」

俺は装置を慎重に調べた。

作りは粗雑だが、出力は異常に高い。無理やりシステムの中枢に介入し、ウイルスプログラムを強制的に流し込んでいるようだ。

装置の側面には、見覚えのあるマーク――火山の噴火を模した『M』の紋章が刻まれている。

 

「マグマ団……!」

 

「あいつら、カイナでデボンの荷物を狙っていただけじゃなく、都市のエネルギーインフラそのものを掌握しようとしていたのか」

キンセツシティの膨大な地熱発電エネルギーを利用して、何かを目覚めさせるための実験か、あるいは活動資金のためのエネルギー強奪か。

いずれにせよ、彼らの目的のために、何十万人もの人々が暮らすこの街が犠牲になろうとしている。

 

「ポリゴンZ、このデバイスの通信ログを逆探知できるか?」

『解析中。……送信先座標特定。……煙突山方面、秘密アジトと思われるポイントです。……データ転送は既に完了していますが、自己消滅型のウイルスプログラムが残留し、システムを破壊しようとしています』

 

「つまり、用済みになったこの施設を暴走させて、証拠隠滅を図っているわけか」

 

許せない。

街の人々の生活を支える発電所を、使い捨ての道具のように扱うなんて。

「笑顔がエネルギー」だと語ったテッセンさんの想いを、こんな形で踏みにじらせはしない。

 

「ポリゴンZ、システムにダイレクトインして暴走を食い止めろ! ウイルスを駆除して、制御を取り戻すんだ!」

『了解。……フルダイブモード、起動。……電子障壁、突破します』

 

ポリゴンZが電子の粒子となってコンソールに吸い込まれていく。

だが、その直後、施設内にけたたましい警報音が鳴り響いた。

 

『侵入者検知。……排除モード、起動。……セキュリティレベル・マックス』

 

防爆扉がゆっくりと開き、中から不気味な機械音と共に、マグマ団が残していった「番犬」たちが現れた。

改造され、リミッターを解除された巨大なレアコイル。そして、天井から吊り下げられた複数の自律型レーザー砲台。

 

「(サカキのメカポケモンほど精巧じゃないが、火力が桁違いだ)」

 

「ココドラ、前に出ろ! 『てっぺき』で盾になれ!」

ココドラが瞬時に装甲を硬化させ、レアコイルから放たれた『トライアタック』の冷気・電撃・炎の奔流を真正面から受け止める。

「ラルトス、砲台の照準を『ねんりき』でずらせ!」

ラルトスの目が光り、頭上のレーザーが俺たちの足元を焼き払う。紙一重だ。

 

俺たちが物理的な防衛システムと死闘を繰り広げている間、モニターの中ではポリゴンZがウイルスとの壮絶な電脳戦を展開していた。

俺はデバイスのキーボードを叩き、ポリゴンZをサポートする。

「ポリゴンZ、右の回路にバックドアがある! そこから回り込め!」

『肯定。……ファイアウォール迂回。……ウイルスの中核に到達!』

 

モニターには、ポリゴンZを表す青い光の粒子と、マグマ団のウイルスを表す赤い触手がせめぎ合う様子が、複雑なグラフとなって表示されている。

 

「頑張れ、ポリゴンZ! 俺たちもここを死守する!」

 

「キャモメ、『つばめがえし』でレアコイルのメインカメラを狙え!」

キャモメが天井の隙間を縫うように急降下し、鋭く切り込む。レアコイルが怯み、磁場が乱れる。

 

「今だ! ココドラ、『あなをほる』!」

ココドラが床下の配線ダクトに潜り込み、レアコイルの真下から突き上げた。

ドガァッ!!

装甲ごとかち上げられたレアコイルが壁に激突し、機能停止する。同時に、ラルトスが最後のレーザー砲台を念力でねじ切った。

 

「よし! あとはシステムだ!」

 

モニターのグラフが、赤から青色へと一気に染まっていく。

『ウイルス駆除完了。……システム・再起動。……ファイアウォール、再構築。……制御権、奪還しました』

 

部屋を赤く染めていた警告灯が消え、穏やかな緑色のステータスランプが点灯した。

暴走していたジェネレーターの不気味な回転音が収まり、安定した重低音へと変わっていく。

 

「……終わったか」

 

俺はその場に座り込み、大きく息を吐いた。

マグマ団の痕跡。それは、これからホウエン地方全土を巻き込む大きな戦いの、ほんの序章に過ぎないことを予感させた。

だが、ひとまずはこの街の平穏を守ることができた。

 

「帰ろう。……テッセンさんが心配してる」

 

俺たちは、静けさを取り戻したニューキンセツを後にした。

地上に出ると、夕焼けが街を赤く染めていた。

その色は、マグマ団の不気味な赤ではなく、明日への希望を告げる温かいオレンジ色に見えた。

俺の手の中にある、過熱して熱を帯びたデバイスが、確かな勝利と、ポリゴンZの奮闘を伝えていた。

だが、戦いはまだ終わっていなかった。

地底深くで、最後の火種がくすぶっていたのだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。