アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第231話

「行くぞ!! ライボルト、『でんこうせっか』じゃあ!!」

テッセンさんの鋭い咆哮と同時に、フィールドに青い火花が弾けた。

ライボルトの姿が、物理的な実体を失ったかのような残像を残して消失する。目にも止まらぬ速さ……いや、文字通りの神速。

「(速い……!! だが、位置はロストしていない!!)」

 

「ラルトス、六時の方向、斜め上だ! 『テレポート』!!」

俺の指示と、ラルトスの直感が完全に同調する。

ライボルトが牙を剥いて出現したその空間には、既に彼女の姿はなかった。ラルトスは数メートル後方の空中へと瞬時に転移し、無重力のような身のこなしで着地する。

 

「ほう、ワシのライボルトの速度についてくるとはな。……だが、逃げ回るだけではこの『雷』は越えられんぞ! 『かみつく』!!」

ライボルトが空中で強引に反転し、再びラルトスへと肉薄する。悪タイプのエネルギーを纏った牙。エスパータイプのラルトスにとって、それは触れることさえ許されない致命的な毒だ。

 

「ラルトス、『リフレクター』! 全精神を前面に集中させろ!」

ラルトスが両手を突き出し、空間を歪ませるほどの強固な光の壁を展開する。

ライボルトの牙がリフレクターに激突し、耳を劈くような不快な音が響く。しかし、ライボルトのパワーは想定を遥かに超えていた。光の壁に蜘蛛の巣状の亀裂が走り、次の瞬間、粉々に砕け散った。

「ラルッ……!!」

衝撃を殺しきれず、ラルトスの小さな体が地面を激しく転がる。砂埃が舞い、観客席から悲鳴のような歓声が上がった。

 

「(スピード、パワー、そして属性。……すべてにおいて向こうが上回っている。まともにやり合っていては、一分も持たずにすり潰されるぞ)」

俺は焦りを押し殺し、デバイスのキーを高速で叩いた。ポリゴンZが解析したライボルトの行動ログ……。一定の攻撃パターンの裏にある、微かな「予兆」を検索する。

「(見えるか? ラルトス。奴が動く前の、空気の震えを)」

『……みえる。……パパさんのポケモン……。……あいつの、電気の『道』が、透けて見えるわ』

ラルトスのテレパシーが、冷たく澄んだ水のように俺の脳内に直接届いた。彼女は視覚ではなく、相手の神経系を走る生体電流の流れ――「波導」に近いものを感じ取っている。ライボルトが四肢に力を込める直前、どの筋肉に電気が流れるかを先読みしているのだ。

 

「よし。……ならば、その『道』の終着点で待ち構えるぞ。……極限まで引きつけて、カウンターだ!!」

 

「ワッハッハ! 諦めが早いのう! トドメじゃ、ライボルト! 全力全開の『10まんボルト』!!」

テッセンさんが拳を振り上げる。ライボルトの鬣が逆立ち、フィールド全体の電力を吸い込むようにして巨大な黄金の電撃が練り上げられた。

「行けぇぇぇッ!!!」

極太の稲妻が、逃げ場のない直線を描いてラルトスへと放たれる。

 

「ラルトス、動くな!! 迎撃するな!! そのまま受け止めろ!!」

「なにっ!? 捨て身の特攻か!?」

テッセンさんが驚愕に目を見開く。サトシやハルカも、何が起きるのか分からず身を乗り出した。

 

電撃がラルトスの鼻先、数センチメートルまで迫ったその瞬間。

俺とラルトスの呼吸が、一つの特異点へと収束した。

 

「今だ!! 『ねんりき』で電撃のベクトルを……固定しろ!!!」

 

ラルトスの瞳が、深淵のような青い光を放った。

物理法則を嘲笑うかのように、迫りくる『10まんボルト』そのものが、ラルトスの掌の数ミリ手前で、まるで時間が止まったかのように静止した。

バチバチと暴力的な音を立てる光の塊が、ラルトスの展開した超高密度のサイコパワーの膜によって球状に圧縮されていく。

 

「なっ、……電気を掴んだじゃと!? バカな、そんな馬鹿なことが!!」

テッセンさんが、ジムリーダーとしての長い歴史の中で初めて、心底驚愕した声を漏らした。

 

「そのまま……。借りたエネルギーを、倍にしてお返しだ!!」

 

ラルトスは、自らの精神を極限まで削りながら、捕らえた電撃をさらに圧縮。そこに自身のサイコパワーを核として融合させ、巨大な光の弾丸としてライボルトへと投げ返した。

電気と念力の複合共鳴弾。

 

「ライボルト、回避じゃ!!」

だが、ライボルトは自らの放った技のあまりの反動と、目の前の不条理な光景に対する困惑で、一瞬だけ筋肉が強張っていた。そのコンマ数秒の停止が、致命的な隙となる。

 

至近距離での直撃。

ライボルトの咆哮が、大爆発の轟音に掻き消される。

「……まだ、まだじゃ!! 『でんげきは』!!」

爆煙の中から、ボロボロになりながらもライボルトが執念の必中弾を放つ。青い電撃がラルトスを捉え、彼女の小さな体も限界に近いダメージを受ける。

互いに満身創痍。立っているのが奇跡のような、魂の削り合い。

 

「次で、……すべてが決まる!!」

「ラルトス、お前の心の底にある、本当の『輝き』を解き放て!!」

 

「ライボルト、最大出力の『かみなり』じゃあぁぁぁ!!!」

「ラルトス、全存在を……。……『サイコキネシス』に乗せろぉぉぉ!!!」

 

天窓から降り注ぐ本物の落雷と、ラルトスの小さな体から溢れ出す虹色の念動波。

二つの巨大な力がフィールドの中央でぶつかり合い、すべてを白く塗りつぶすような光がスタジアムを支配した。

 

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!! ラルトス!!!」

 

光の中で、ラルトスのシルエットが、より強く、より高く輝いた気がした。

それは進化の予兆か、それとも、ただの奇跡か。

だが、その時確かに、俺には見えた。彼女が自分自身を信じ、俺を信じ、運命という名のバグを実力で書き換える瞬間が。

 

念動波が、最強の雷を真っ向から突き破り、ライボルトの巨体を飲み込んだ。

 

静寂。

 

やがてゆっくりと煙が晴れ、静まり返ったフィールドに残っていたのは――。

 

「……ライボルト、戦闘不能。……よって勝者、挑戦者ミナト!!」

 

「……やった。……やったんだな、ラルトス」

俺は震える脚でラルトスの元へ歩み寄った。ラルトスは満足げに一度だけ微笑むと、俺の腕の中に、心地よい疲労感と共に崩れ落ちた。

「最高の……最高のバトルだったぞ。ありがとう、相棒」

 

テッセンさんが、腹の底から響くような大笑いをしながら近づいてきた。

「ワッハッハ! いやぁ、痺れた! 身体だけじゃなく、心の底まで痺れたわい!」

彼は、その分厚い掌で、黄色く輝くダイナモバッジを差し出した。

「ダイナモバッジじゃ。……ミナト君、君のその冷徹な計算の奥に眠る、誰よりも熱い魂……。ワシは一生、忘れんぞ」

 

「……ありがとうございます」

 

俺は、熱を帯びたバッジをしっかりと受け取った。

これで三つ目。

キンセツシティでの激闘は、俺とラルトスを、かつてない高みへと押し上げてくれた。

だが、俺たちの旅は、ここからさらに激しさを増していく。

 

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