アニポケ転生者物語 作:投稿者
砂漠の中心部に近づくにつれ、足元の砂がサラサラと流動し始めた。
大小様々なすり鉢状の穴――アリジゴクの巣が無数に点在している。
一度落ちれば、中心に向かって砂が崩れ落ち、這い上がることは困難だ。
「ここだ。ナックラーの巣窟」
俺は慎重に穴の縁を歩いていたが、突如、足元の砂が広範囲にわたって崩落した。
「うわっ!?」
予想以上の崩れ方だ。ただの崩落じゃない、何者かが地中から砂を吸い込んでいるのだ。
俺の体はずるずると穴の中心へと引きずり込まれていく。
「まずい!キャモメ、俺を引っ張り上げてくれ!」
キャモメが俺のリュックを掴んで羽ばたくが、砂の吸引力の方が強い。
その時、穴の底から巨大な顎が姿を現した。
オレンジ色の甲羅と、不釣り合いなほど大きな頭部。
ナックラーだ。
しかも、通常の個体よりも一回り大きく、甲羅には歴戦の傷跡が刻まれている。このエリアの主かもしれない。
「ナック!!」
ナックラーが『かみつく』で俺の足を狙ってくる。その顎は、岩さえも砕く威力がある。
「させるか!ポリゴンZ、『サイコキネシス』で俺を浮かせろ!」
間一髪、ポリゴンZの念動力で俺の体が宙に浮き、ナックラーの牙を回避した。
俺は穴の外へと脱出し、体勢を整える。
「危ないところだった……。やるな、お前」
俺が構えると、ナックラーは不満そうに穴から這い出してきた。
獲物を逃した怒りと、強い相手への興味が入り混じった目をしている。
「ナック……」
彼は逃げようとはしない。正面から俺を見据えている。
「いい目だ。……俺と勝負しろ!勝ったら仲間にしてやる!」
「ナックッ!!」
ナックラーが咆哮し、『すなじごく』を放ってきた。
俺たちの周囲を砂の渦が囲み、逃げ場をなくす。
「逃げるつもりはない!……行け、キャモメ!」
俺はキャモメを前線に出した。
地面技が無効な飛行タイプは有利だが、ナックラーは岩技も持っているはずだ。油断はできない。
「キャモメ、『みずでっぽう』!」
「ナック!」
ナックラーは砂を巻き上げて水の壁を作り、攻撃を防いだ。湿った砂壁が盾となる。
そして、砂煙の中から岩石を発射する。『がんせきふうじ』だ。
「かわせ!……くっ、速い!」
キャモメの翼に岩が掠める。
ナックラーは動きこそ遅いが、技の出が速く、コントロールも正確だ。
「(パワーだけじゃない、器用さも兼ね備えているのか)」
「なら、こっちも知恵比べだ。……キャモメ、ナックラーの真上に移動しろ!」
キャモメが上昇する。
ナックラーは岩を投げようと上を見上げる。
「今だ!『ちょうおんぱ』!」
キャモメが不快な音波を放つ。
ナックラーは耳がないが、地面を伝わる振動には敏感だ。頭上からの音波攻撃に、平衡感覚を狂わされる。
「ナッ……!?」
ナックラーがよろめく。
「そこだ!最大出力の『みずでっぽう』!!」
混乱して防御が遅れたナックラーの顔面に、水流が直撃した。
効果は抜群だ。
ナックラーはひっくり返り、短い手足をバタつかせた。
「モンスターボール、行け!」
俺はボールを投げた。
カチッ。
ボールが吸い込まれ、ナックラーを収める。
激しく揺れるボール。ナックラーの抵抗は激しい。砂漠の主としてのプライドが、簡単には捕まらないと言っているようだ。
だが、やがて揺れが収まり、静寂が訪れた。
「……よし!ナックラー、ゲットだ!」
俺はボールを拾い上げ、熱い砂の上でガッツポーズをした。
砂漠の精霊、そして未来のドラゴン。
強力な地面タイプのアタッカーを手に入れた。
「よろしくな、ナックラー。……一緒に強くなろうぜ」
俺たちは、新たな仲間を加え、砂漠を抜けるためのラストスパートに入った。
砂嵐の向こうに、煙突山の噴煙が見えてきた。
新たな戦いの予感が、風に乗って運ばれてくる。