アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第237話

「退避だ! 全員、山を降りろ! 装置は放棄する!」

マツブサが苦渋の決断を下し叫ぶと、マグマ団員たちは機材を放り出し、慌てて撤退を始めた。過負荷に耐えきれなくなった装置は激しく火花を散らし、今にも爆発しそうだ。

 

俺もポリゴンZと共に退避しようとしたその時、火口の縁、崩れかけた岩棚に取り残された小さな影が目に入った。

野生のドンメルだ。

マグマ団の実験のために捕獲されていたのか、あるいは逃げ遅れたのか。

マグマの飛沫と熱波に怯え、足がすくんで動けなくなっている。

 

「(くそっ、見捨てられない……!)」

 

俺は踵を返し、ドンメルの元へ走った。

「警告。危険レベル最大。……生存確率、低下中」

ポリゴンZが冷静に、しかし焦りを含んだ警告を発する。

「分かってる! でも、あいつを助けるのが先だ!」

 

「危ない!」

頭上から火山弾が降ってくる。

「ココドラ、『アイアンヘッド』で砕け!」

ココドラが跳躍し、鋼鉄の頭突きで岩を粉砕して道を作る。

 

「ドンメル、こっちだ!」

俺は岩棚に飛び乗り、ドンメルに手を伸ばした。だが、ドンメルはパニック状態で暴れ、俺の手を拒絶する。

「ドメルゥッ!!」

人間への不信感と恐怖で、誰の手も受け付けない状態だ。マグマ団に酷い扱いを受けていたのだろう。

 

「落ち着け! 俺は敵じゃない! 助けに来たんだ!」

俺は必死になだめるが、マグマの水位が上がり、足元まで迫ってくる。靴底が焼ける匂いがし、熱気で肺が焼けそうだ。

 

「キャモメ、『みずでっぽう』で足元の熱を冷ませ! ナックラー、『すなかけ』で足場を固めろ!」

仲間たちが総出でサポートするが、自然の猛威の前には焼け石に水だ。

 

「ドンメル、俺を見ろ! 絶対に助ける! ……だから、俺を信じてくれ!」

俺は、火傷するのも構わず、暴れるドンメルを真正面から強く抱きしめた。

火の粉が俺の背中に降りかかり、ジャケットを焦がす。

 

その時、ドンメルの目から大粒の涙が溢れた。

恐怖と、そして初めて触れた温かい体温への安堵。

ドンメルは俺の胸に頭を押し付け、震えを止めた。

 

「よし、いい子だ。……ポリゴンZ、緊急離脱だ! 重力制御で滑空するぞ!」

『了解。……アンチグラビティ・フィールド、展開!』

 

俺はドンメルを抱え、ポリゴンZのサイコパワーでふわりと浮遊し、火口の斜面を一気に滑り降りた。

直後、背後で暴走した装置が大爆発を起こし、赤い火柱が天を焦がす。

間一髪、熱風に煽られながらも、俺たちは安全圏の林の中へと転がり込んだ。

 

「はぁ、はぁ……。助かったか……」

 

俺は地面に大の字になった。心臓が早鐘を打っている。

ドンメルが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。その瞳は、もう怯えてはいなかった。

「ドメル……」

「無事か? ……よかった」

 

俺が上半身を起こすと、ポリゴンZ、ココドラ、ナックラー、キャモメ、ラルトスが集まってきた。

『バイタルサイン、正常。……無茶な行動でした、マスター』

「悪い。……でも、後悔はしてないさ」

 

俺はドンメルに向き直った。

「もう大丈夫だ。山へお帰り。……これからは人間に捕まらないようにな」

俺が別れを告げると、ドンメルは首を横に振り、俺の腰の空のモンスターボールを鼻先でつついた。

 

「……俺と一緒に来たいのか?」

「ドメルッ!」

彼は力強く鳴いた。マグマ団の実験に巻き込まれ、住処を追われたドンメル。

彼もまた、自分を守るための、そして運命を変えるための力を求めているのかもしれない。

 

「わかった。……よろしくな、ドンメル。一緒に強くなろう」

 

俺はボールを構え、ドンメルは自らスイッチを押して中に入った。

炎・地面タイプの重量級。バクーダに進化すれば、凄まじい火力を発揮する頼もしい仲間になるだろう。

 

「さて、と。……山を降りよう。この先には、温泉街フエンタウンがあるはずだ」

 

俺たちは、煤だらけになった体を引きずりながら、湯けむりの上がる街を目指した。

まずは、温泉でこの疲れを癒やし、次のジム戦に備えなければ。

切実に、風呂に入りたい。

 

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