アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第238話

煙突山を下山し、フエンタウンへの道を進んでいた俺たちは、山間の盆地に広がる情緒あふれる温泉街、「ユノハナタウン」に立ち寄った。

ここはフエンタウンの奥座敷とも呼ばれ、古くからの湯治場として知られる隠れた名所だ。

街の至る所から白い湯けむりが立ち上り、夜には特産の花火が打ち上げられるという、風情ある街並みが広がっている。

 

だが今日、この静かな街はいつもとは違う熱気に包まれていた。

街の中央広場に設営された特設ステージには、色鮮やかな旗がはためき、多くの観客が集まっている。

 

『祝・開湯百年記念! ポケモンコンテスト・ユノハナ大会、本日開催!』

 

「コンテストか……」

俺は足を止め、ポスターを見つめた。

カイナシティでの苦い敗北が脳裏をよぎる。ヒンバスの「美しさ」を理解できず、独りよがりな演出で彼に恥をかかせてしまったあの日。

ハジツゲタウンに向かったハルカも、今頃コンテストに向けて頑張っているはずだ。

 

「(逃げてちゃダメだ。……ここで、リベンジする)」

 

俺は腰のベルトから、ダイブボールを手に取った。

「ヒンバス。……もう一度、ステージに立ってみないか? 今度こそ、お前の本当の輝きを、世界に見せてやろう」

ボールから出たヒンバスは、俺の顔をじっと見つめ、そして力強く尾びれを振った。

「ヒンッ!」

その瞳には、カイナの時のような怯えはない。タケシ特製のポロックを食べ、鱗も以前より健康的な艶を帯びている。

 

俺は飛び入りでエントリーを済ませた。

公式のリボンがもらえる大会ではないが、この地方の実力者たちが腕試しに集まる、レベルの高い草コンテストだ。

 

一次審査、パフォーマンスステージ。

俺の出番が回ってきた。

「エントリーナンバー18番! ミナト選手とヒンバス!」

 

ステージの中央、水槽プールにヒンバスを放つ。

観客席からは、「あら、ヒンバス?」「地味ねぇ」という落胆の声が漏れる。カイナの時と同じだ。だが、今の俺は動じない。

 

「ヒンバス、飾り気なんていらない。お前のありのままを見せてやれ! 『みずあそび』!」

ヒンバスが水しぶきを上げ、ステージ全体に霧のようなミストを撒き散らす。

「そして、『あられ』!」

 

上空から氷の粒が降り注ぎ、ミストの中でキラキラと輝き始めた。

温泉街の湯気と冷気が混ざり合い、ステージ上に幻想的なダイヤモンドダストが発生する。

ヒンバスはその光の中を、ただゆっくりと、優雅に泳ぐ。

決して無理なジャンプや派手な回転はさせない。ヒンバスが一番自然体でいられる、水との一体化。

泥色に見えた体色が、氷のプリズムを通すことで、虹色のような複雑で奥深い色彩を放ち始めた。

 

「おおっ……! なんだか、とても幻想的だ」

「地味だけど、目が離せないわ。まるで水墨画みたい」

 

観客たちのざわめきが、感嘆の溜息へと変わっていく。

派手な爆発や光線はない。だが、そこには確かな「生命の美しさ」と「静寂の品格」があった。

 

「いいぞ、ヒンバス。その調子だ」

俺は心の中でガッツポーズをした。

 

審査員の評価も上々だ。

「素材の良さを深く理解した、素晴らしい演出です。派手さで誤魔化さない、ポケモンの本質を見る目を持っていますね」

 

結果、俺たちは高得点を叩き出し、無事に二次審査のコンテストバトルへと進出した。

カイナでのトラウマを、俺たちは一つ乗り越えたのだ。

 

「次はバトルだ。……相手は、アゲハントか」

対戦相手のポケモンは、華麗な舞を得意とするアゲハント。虫・飛行タイプは相性的には悪くないが、コンテストバトル特有の「魅せる戦い方」が求められる。

 

「行くぞ、ヒンバス。……俺たちの『対話』を、このステージで見せてやれ!」

 

ゴングが鳴り響く。

リベンジマッチの始まりだ。

 

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