アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第240話

ユノハナタウンでのコンテスト初優勝という、予想外ながらも最高の結果を胸に、俺たちはさらに山道を登り続けた。

険しい岩肌が続く煙突山の山腹を抜け、いくつものトンネルをくぐり抜けると、視界の先に立ち上る幾筋もの白い湯けむりが見えてきた。

ホウエン地方屈指の温泉地、フエンタウンだ。

街に近づくにつれ、空気は湿り気を帯び、微かな硫黄の香りが鼻をくすぐる。長旅と連戦で凝り固まった筋肉が、その匂いだけで解きほぐされていくような錯覚さえ覚える。

 

「着いた……。ようやく、本物の温泉に入れるな」

俺は、煤と砂埃にまみれた自分の服を見下ろして苦笑いした。

街の通りには、至る所に足湯が設置され、観光客やポケモンたちが気持ちよさそうに寛いでいる。名物の「砂風呂」からは、砂に埋まった人々の楽しげな話し声が聞こえてきた。

 

「まずは何をおいても温泉だ! 全員、リフレッシュするぞ!」

俺はポケモンセンターにチェックインを済ませると、併設されている広大な露天風呂へと直行した。

 

「ふぃ〜……。生き返る……」

俺は湯船にどっぷりと浸かり、手足を大きく伸ばした。

熱めのお湯が、体の芯まで染み渡っていく。至福の瞬間だ。

隣では、ポケモンたちもそれぞれのスタイルで入浴を楽しんでいた。

 

ココドラは熱いお湯が全く苦にならないらしく、むしろ心地よいのか、鼻先までお湯に浸かってブクブクと泡を立てている。その装甲が、温泉の成分でピカピカに磨かれていくようだ。

キャモメは湯面を器用に滑り、ポリゴンZは「防水モード」を起動して、湯気の中にホログラムを投影して遊んでいる。

そして、煙突山で助けた新入りのドンメルは、背中のコブからぽっぽと蒸気を出しながら、とろけたような表情で湯船の縁に顎を乗せていた。彼にとっては、故郷のマグマ溜まりを思い出す最高の環境なのだろう。

 

「極楽だな……。テスターなんて激務、たまにはこうして休まないとやってられないよ」

 

「おーい! そこの君、のぼせないように気をつけてね! フエンのお湯はパンチが効いてるから!」

不意に、女湯との仕切り壁の向こうから、元気すぎるほどの明るい声が聞こえてきた。

 

「(この声、このテンション……。まさかな)」

 

風呂上がり、冷えたミックスオレを飲んでロビーで休んでいると、赤髪に結い上げた、活発そうな少女が勢いよく現れた。

「やあ! さっきは驚かせてごめんね! 私がこの街のジムリーダー、アスナよ!」

 

「やっぱり、そうでしたか。……挑戦者のミナトです。シルフカンパニーのテスターも兼ねています」

「ミナト君ね! 歓迎するわ! ……あ、そうだ! 温泉卵食べる? 今さっき茹で上がったばかりの、超熱々よ〜!」

アスナは、籠いっぱいの卵を差し出しながら、少年のように目を輝かせた。

 

彼女は、最近祖父からジムを引き継いでリーダーになったばかりらしく、とにかく「自分を厳しく律しなければ」という思いが空回り気味だが、その熱意は火傷しそうなほど本物だ。

「私の祖父は、かつて四天王に名を連ねた偉大なトレーナーだったの。その名に恥じないような、世界で一番熱いバトルを……いや、宇宙一熱いバトルを、明日見せてあげるわ!」

 

「楽しみにしてます。……俺たちも、煙突山での一件で、かなり『熱く』なってますからね」

 

「煙突山? ……ああ、あのマグマ団の騒ぎね! 本当に、私の街の近くで勝手なことをしてくれて、ムカつくわ!」

アスナは拳を振り回して憤慨していたが、俺が彼らの装置を止めたことを話すと、さらに身を乗り出してきた。

「ええっ、あんたがあの連中を追い払ったの!? すごいじゃない! 本物ね! ……よーし、私も負けてられない! 明日は最高の、火山も吹き飛ばすようなバトルにしましょう!」

 

アスナは力強くガッツポーズをして、意気揚々と去っていった。

途中、勢い余って自分の足をもつれさせ、派手に転びそうになったが、驚異的な反射神経でバク転をして体勢を立て直し、「あはは、今の修行よ!」と笑いながら走り去った。

「(……面白い人だな。でも、あの瞬発力は侮れない)」

 

俺はその夜、フエンの名物料理であるピリ辛の火山鍋を堪能し、早めに布団に入った。

明日は、灼熱のバトル。

炎タイプのエキスパートであるアスナに対し、俺はどう立ち回るか。

水タイプのキャモメ、そしてナックラーと、新戦力のドンメル。

手札は十分に揃っている。

 

「(ヒートバッジ、必ず手に入れる)」

 

窓の外、湯けむりの向こうに、明日の激闘を予感させる月が昇っていた。

ナックラーが、静かに闘志を燃やして俺の枕元で見守っている。

「ナック……」

「ああ。明日はお前の力が鍵になる。頼んだぞ」

 

俺たちは、心地よい疲労感と温泉の余韻に包まれながら、深い眠りについた。

 

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