アニポケ転生者物語 作:投稿者
「これが最後の一体よ! おじいちゃんから受け継いだ、私の魂! 行け、コータス!」
アスナが繰り出したのは、甲羅から黒い煙を噴き上げる、歴戦の風格漂うコータスだ。
「頼むぞ、ナックラー! ここが正念場だ!」
俺は、砂漠で出会い、共に戦ってきたナックラーを送り出した。
「ナック!!」
ナックラーは大きな顎をカチカチと鳴らし、闘志を燃やす。
「コータス、挨拶代わりの一発よ! 『かえんほうしゃ』!」
「ナックラー、穴に潜ってかわせ!」
ナックラーは素早く地面を掘り進み、地中へと姿を消した。灼熱の炎が虚しく地面を焦がす。
「逃げても無駄よ! コータス、穴に向かって『スモッグ』!」
コータスが甲羅から有毒な黒煙を噴射し、ナックラーが掘った穴へと送り込む。
「ごほっ……!」
地中に煙が充満し、ナックラーが苦しげに地上へ飛び出してきた。
「そこよ! 『のしかかり』!」
コータスが重い体躯を活かしてジャンプし、ナックラーを押し潰しにかかる。
「ナックラー、『すなじごく』で受け止めろ!」
ナックラーが砂の渦を作り出し、落下してくるコータスの勢いを殺そうとするが、コータスの重量とパワーが勝る。
ナックラーが押し潰され、フィールドにめり込む。
「強い……! パワーだけじゃない、技の使い方が巧みだ」
「ふふん、ただ熱いだけじゃないのよ! 伊達にジムリーダーやってないんだから! トドメよ、『オーバーヒート』!」
アスナが勝利を確信し、最強技を指示する。
コータスの全身が真っ赤に発光し、周囲の空気が歪むほどの熱量が凝縮されていく。
「(まともに食らえば終わりだ……。だが、チャンスはある!)」
「ナックラー、耐えろ! そして相手をよく見ろ! 『オーバーヒート』の反動で隙ができる瞬間を狙うんだ!」
「行けえぇぇぇッ!!」
極太の炎の柱がナックラーを飲み込む。
「ナックゥゥゥッ!!」
ナックラーの悲痛な叫び声。だが、彼は倒れていなかった。
持ち前の地面タイプとしてのタフネスと、俺との旅で培った根性で、ギリギリのところで踏みとどまっていたのだ。
「なっ、耐えた!? あの至近距離で!?」
「今だ! コータスの特攻が下がった隙を突け! 『かみくだく』!!」
炎が晴れた瞬間、黒焦げになりながらもナックラーが飛び出した。
コータスはオーバーヒートの反動で動きが鈍っている。
ナックラーの巨大な顎が、コータスの首元に深く食い込んだ。
「コータス!!」
「離すな! そのまま『あなをほる』で地面に引きずり込め!」
ナックラーはコータスを咥えたまま、強引に地面へと潜り始めた。
重量級のコータスを動かす、驚異的な顎の力。
「嘘でしょ!? あの重いコータスを!?」
ナックラーはコータスを地中深くに引きずり込み、そして――。
地中からの突き上げ攻撃で、コータスをフィールドの天井近くまで吹き飛ばした。
「これで終わりだ! 落ちてくるところに『がんせきふうじ』!」
空中の無防備なコータスに、巨大な岩石が四方八方から襲いかかる。
コータスは地面に落下し、土煙の中で動かなくなった。
「……コータス、戦闘不能! ……よって勝者、ミナト選手!」
審判の旗が上がり、試合終了が告げられた。
「やったぁぁぁ!」
俺はフィールドに駆け寄り、ボロボロになったナックラーを抱き上げた。
「ナック……!」
ナックラーも、最後の力を振り絞って勝利の雄叫びを上げる。その体が一瞬、淡い光に包まれた気がしたが、それは進化の光ではなく、彼自身の成長の輝きだったのかもしれない。
「……負けたぁー!」
アスナが頭を抱えてしゃがみ込む。
「悔しい! おじいちゃんのコータスでも勝てないなんて! ……でも、すっごく熱い、最高のバトルだったわ!」
アスナは立ち上がると、清々しい笑顔で俺に歩み寄ってきた。
「ミナト君、貴方の熱いハート、そしてポケモンの底力を引き出す指揮……しっかり受け取ったわ。完敗よ」
差し出されたのは、炎のような形をしたヒートバッジ。
「これを持って行って。フエン自慢の、ヒートバッジよ!」
「ありがとうございます、アスナさん。……貴女の情熱、忘れません」
「ええ。私も、もっともっと修行して、次は負けないわよ! ……あ、そうだ! 温泉卵、持って帰る?」
「はは、遠慮なくいただきます」
俺はバッジをケースに収めた。これで四つ。
ホウエンリーグへの折り返し地点であり、父センリへの挑戦権を得るための重要な一歩だ。
「(待っててください、センリさん。……俺たちは、強くなりました)」
夕暮れのフエンタウン。湯けむりの向こうに、次なる決戦の地、トウカシティの方角を見つめる。