アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第244話

火山灰の降り積もる灰色の世界、113番道路を抜けると、視界の先に温かな光を灯す街が見えてきた。

高原の澄んだ空気の中に佇む、ガラス工芸で有名な街、ハジツゲタウンだ。

夕日が街全体を照らし、家々の屋根や窓、そして広場に飾られたガラスのオブジェが、まるで宝石箱をひっくり返したかのようにキラキラと輝いている。

 

「綺麗な街だな……。フエンの熱気とはまた違う、静かで落ち着いた空気だ」

俺は煤けた服をはたきながら、街へと続く石畳の坂道を下った。

街の中央広場には色とりどりの旗がはためき、多くの人々が集まっている。

『ポケモンコンテスト・ハジツゲ大会、本日開催!』

華やかなアナウンスと観客の歓声が、街の静寂を塗り替えるように響いていた。

 

「コンテストか。」

俺は腰のボールに触れた。中にはヒンバスがいる。

「ヒンバス。……ユノハナでの初優勝に続いて、ここでも連勝を狙うぞ。お前の美しさは、もう誰にも否定させない」

ボールが激しく、そして頼もしく揺れた。ユノハナでの自信が、彼を強くしている。

 

俺は受付へと走り、滑り込みでエントリーを済ませた。

一次審査、パフォーマンスステージ。俺はあえて派手な爆発を避け、ハジツゲ特産のガラス細工のように、繊細で透明感のある演技を披露した。

ヒンバスの『あられ』と『みずあそび』によるダイヤモンドダスト。そこにポリゴンZが計算した最適な角度で照明を反射させ、ステージを極光の海へと変えた。

審査員たちは、その「静寂の美」に感嘆し、俺たちはトップ通過で二次審査へ進んだ。

 

二次審査、コンテストバトル。

決勝戦の相手は、華麗な舞を得意とする実力派のロゼリア。

「ロゼリア、『マジカルリーフ』!」

光り輝く葉がヒンバスを襲うが、俺たちは一歩も引かない。

「ヒンバス、そのまま受け止めて『ミラーコート』だ!」

ヒンバスの鱗が七色に輝き、放たれたエネルギーを倍にして弾き返す。

「今だ、トドメの『れいとうビーム』!」

氷の光線が、跳ね返ったエネルギーと混ざり合い、ロゼリアを氷の檻に閉じ込めた。

 

「そこまで! 優勝はミナト選手です!」

割れんばかりの拍手の中、俺はステージに立った。

司会者から差し出されたのは、銀色に輝く美しいリボン。ハジツゲ大会の優勝者の証だ。

「やったな、ヒンバス。これでリボンは二つ目だ。……ミロカロスへの道が、確実に見えてきたぞ」

「ヒンッ!!」

ヒンバスは誇らしげに跳ね、その体は夕日を浴びて、誰よりも美しく輝いていた。

 

コンテストの後、俺たちはその高揚感を持ったまま、西へ続く114番道路へと向かった。

二つ目のリボンを手に入れたことで、チームの士気は最高潮だ。

だが、俺の目的はもう一つある。このエリアに眠る、さらに過酷な試練だ。

 

「ポリゴンZ、この辺りの岩盤の硬度分布をマッピングしてくれ。……ナックラーの顎を鍛え、次のレベルへ引き上げる場所を探すんだ」

『了解。……スキャン開始。……前方の谷底に、超硬度の黒曜石層を検知』

「黒曜石か。……今の俺たちなら、砕けるはずだ」

 

俺はナックラーをボールから出した。砂漠育ちの彼は、リボンの輝きに刺激されたのか、いつも以上に大きな顎をカチカチと鳴らし、やる気を漲らせている。

ナック!(次は俺の番だ!)

 

114番道路の崖際、化石マニアの家を通り過ぎ、俺たちはさらに深い谷底へと降りていった。

そこには、漆黒に輝く巨大な岩壁が、侵入者を拒むようにそびえ立っていた。

 

「ナックラー、あの黒い岩を砕いてみろ。コンテストのヒンバスに負けないくらい、お前の『強さ』を見せてやれ!」

ナックラーは咆哮と共に岩に食らいついた。

激しい火花。だが、岩は砕けない。

「ナッ……!!?」

ナックラーの目に、屈辱の色が浮かぶ。

 

「(硬いな……。だが、お前の顎なら噛み砕けるはずだ)」

 

ナックラーは何度も、何度も岩に挑んだ。

鈍い音が響き、口の端から血が滴っても、彼は一歩も引かなかった。

コンテストで見せた仲間の輝きが、彼のプライドに火をつけていた。

彼は知っている。この壁を越えなければ、憧れのフライゴンへの道は開かれない。

 

「もっと深く、もっと強く……! 魂を顎の一点に集中させろ!!」

俺の檄が、谷底に響き渡る。

「お前の武器は顎だけじゃない! 大地を掴む足、獲物を逃さない執念、そして仲間を想う心! その全てを牙に乗せろ!!」

 

ナックラーが目を閉じ、大地に根を張るように四肢を踏ん張った。

彼の体から、オレンジ色の不気味なほどのエネルギーが溢れ出す。

「ナック……ギィィィィッ!!」

 

不落と思われた黒曜石に、ついに一本の亀裂が走った。

「いけるぞ! 押し込めぇぇ!!」

 

轟音と共に、岩壁が粉々に砕け散った。

それと同時に、ナックラーの体が眩い進化の光に包まれた。

コンテストでの勝利と、極限の特訓。二つの熱が、彼の進化のスイッチを入れたのだ。

 

光の中で、その体躯は軽やかさを増し、背中には強靭な菱形の翅が形成されていく。

光が弾け、そこには砂漠の精霊、ビブラーバが優雅に浮遊していた。

 

「進化した……。ビブラーバだな」

 

ビィィィン!!(風が見える!)

ビブラーバは羽音を立てて大空へと飛び出した。

地面の下で力を蓄えていた幼虫が、ついに自由な翼を手に入れたのだ。

 

「おめでとう。……これで、戦術の幅が劇的に広がるな」

 

俺はビブラーバの透き通った翅に触れた。その振動は、彼が手に入れた新しい命の躍動だった。

俺のポケットには、二つ目のコンテストリボン。

そして目の前には、進化した新たな相棒。

ホウエンの旅は、ここからさらに加速していく。

 

俺は西の果て、『流星の滝』へと目を向けた。

そこには、さらなる神秘が待っているはずだ。

ビブラーバの羽音が、夕暮れの114番道路の空に、高らかに響き渡っていた。

 

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