アニポケ転生者物語 作:投稿者
カナズミシティを抜け、俺たちは緑豊かなトンネルを通り、空気が一番美味しいと言われる街、シダケタウンに到着した。
ここは病気療養中の人々も多く訪れる、穏やかで静かな街だ。
だが、今日の街の広場は、華やかな装飾と多くの人々で賑わっていた。
『ポケモンコンテスト・シダケ大会、本日開幕!』
「ヒンバス。……お前の出番だ」
俺はボールの中のヒンバスに語りかけた。
ハジツゲ大会でリボンを手に入れたが、ここシダケ大会はさらにレベルが高いことで知られている。
キルリアも応援に回る。今回はヒンバス一本で勝負だ。
会場に入ると、そこには以前出会ったコーディネーターたちの姿も数人見受けられた。
ハルカはいないようだが、皆、自分たちのポケモンを磨き上げ、真剣な表情で出番を待っている。
「一次審査、スタートです!」
俺はヒンバスを連れてステージに立った。
今回のテーマは「静寂と輝き」。
ハジツゲでの経験を活かし、ヒンバスの自然な美しさを最大限に引き出す演出だ。
「ヒンバス、『あまごい』!」
ヒンバスが空に鳴くと、ステージに優しい雨が降り注ぎ始めた。
ただの雨ではない。ヒンバスが作り出した、きめ細やかな霧のような雨だ。
「そして、『かげぶんしん』!」
ヒンバスの姿が増え、雨の中に無数の幻影が浮かび上がる。
本物と分身が、雨粒の中で優雅に泳ぎ回る。
泥色の鱗が水に濡れ、スポットライトを反射して真珠のような光沢を放つ。
「フィニッシュだ!『れいとうビーム』!」
ヒンバスが放った光線が雨粒を一瞬にして凍らせ、ステージ全体に氷のシャンデリアを作り出した。
分身たちがその中で消え、最後に本物のヒンバスだけが、氷の中心で輝いている。
「おおおおっ……!!」
観客席から感嘆の声が上がる。
それは、力強さと繊細さが同居した、息を呑むような芸術だった。
一次審査を圧倒的なスコアで突破。
そして迎えた二次審査、コンテストバトル。
対戦相手は、力強い戦い方をするマクノシタ使い。
「マクノシタ、『つっぱり』でその氷を砕け!」
「ヒンバス、『かげぶんしん』!」
ヒンバスの姿が揺らぎ、ステージ上に無数の残像が現れた。
マクノシタの怒涛の連打は、全て空を切り、水しぶきと氷の欠片だけを弾き飛ばす。
「なっ、どれが本物だ!?」
「(今だ!)」
「主役はポケモン……。ヒンバス、お前のタイミングで行け!」
俺は指示を最小限にし、ヒンバスの自主性に任せた。
ヒンバスは、マクノシタの突進に合わせて自ら『ハイドロポンプ』を床に放ち、その反動で高く舞い上がった。
そして、上空から美しく回転しながら『たいあたり』を決めた。
「そこまで!勝者、ミナト選手!」
優勝。
俺の手元には、三つ目のコンテストリボンが輝いていた。
「やったな、ヒンバス!」
「ヒンッ!!」
ヒンバスは、かつてないほど誇らしげに胸を張った。
その鱗が、微かに虹色の輝きを帯び始めた気がした。
「(ミロカロスへの進化……。あともう少しだ)」
俺は、リボンをヒンバスの鱗にそっと添えた。
強さと美しさ。その両立。
俺たちの目指す道が、ようやく形になってきた。
「さて、と。……次はトウカシティだ。……いよいよ、センリさんに会いに行こう」
俺は、新しいリボンと、進化した仲間たちと共に、シダケタウンを後にした。
夕暮れの風が、勝利の余韻を運んでいた。
次なる戦いの舞台、トウカシティは、もう目と鼻の先だ。