アニポケ転生者物語 作:投稿者
第247話
シダケタウンでのコンテストを終え、俺たちは緑豊かな117番道路を抜け、再びトウカシティへと続く街道に戻ってきた。
かつてサトシたちと別れたあの分岐点。
懐かしい空気と共に、遠くから賑やかな声が聞こえてきた。
「いっけえぇぇ!ピカチュウ!『10まんボルト』だ!!」
「ピカァァァッ!!」
「ヘイガニ!『クラブハンマー』で受け止めろ!」
「ヘイッ!!」
街道沿いの広場。そこでは、サトシと……おそらく道中で出会ったであろう別のトレーナーが、激しい模擬戦を繰り広げていた。
傍らでは、ハルカとマサト、そしてタケシが熱心にその様子を見守っている。
「やっぱり、あいつらは変わらないな」
俺は苦笑いしながら、その輪の中に近づいていった。
「サトシ、相変わらず熱いな」
俺の声に、サトシが弾かれたように振り返った。
「あ、ミナト!お前、いつの間に!」
「ミナト君!久しぶり!」
ハルカとマサトも駆け寄ってくる。
数週間ぶりの再会。
だが、その短い期間に、お互いの背負っているオーラは格段に逞しくなっていた。
サトシの肩に乗るピカチュウの瞳には、以前よりも鋭い理性が宿り、彼の腰にあるボールには、新しい仲間が増えている。
「ミナト、お前の方も……なんだかすげえ強くなってないか?」
サトシが俺のポケモンたちを見て目を丸くする。
俺の肩には、優雅なドレスを纏ったキルリア。隣には、風を切るような鋭いフォルムのマッスグマと、空を舞うビブラーバ。
「ああ。……少し、本気で修行してきたからな」
「よし!なら、俺と勝負だ!どれだけ強くなったか、試させてくれよ!」
サトシが拳を握る。
「いいぜ。……俺も、新入りのテストをしたいところだったんだ」
俺たちは、そのまま広場で模擬戦を行うことにした。
サトシが繰り出したのは、パワー自慢のヘイガニ。
対する俺は、白銀の装甲を持つ相棒を選んだ。
「頼むぞ、ココドラ!」
「ココォッ!!」
ココドラがフィールドに降り立つ。カナズミジムでの激闘を経て、彼の鎧はさらに厚く、鈍い光沢を放っている。
「行くぜ!ヘイガニ、『クラブハンマー』!」
ヘイガニがハサミを振りかぶり、猛スピードで突っ込んでくる。
「ココドラ、『てっぺき』!」
ココドラは装甲を固め、ヘイガニの打撃を正面から受け止めた。
ガギィィン!!という激しい音が響くが、ココドラは一歩も引かない。
「それなら、これでどうだ!連続攻撃だ!」
ヘイガニの波状攻撃がココドラを襲う。防御の高いココドラにとって、物理的な打撃は効きにくいが、それでもダメージは蓄積していく。
「ココッ……!!」
ココドラの瞳に、不屈の闘志が宿った。
彼は自分を極限まで追い込むことで、真の力を引き出そうとしていた。
廃鉱山で一人、孤独に岩を叩き続けていたあの頃の記憶。
そして今、信頼できるトレーナーと、競い合える仲間がいる喜び。
その全ての感情が、ココドラの体内で臨界点に達した。
「……来るか」
ココドラの体が、眩い白銀の光に包まれた。
光の中で、彼の体は左右に大きく成長し、四本の足はより太く、強固な支柱へと変化した。
背中の装甲は幾重にも重なり、巨大な盾のようなフォルムへと再構築されていく。
光が弾け、そこには重戦車のような威容を誇るポケモンが立っていた。
「コドラ……!」
「コドォォォォッ!!」
進化したコドラが咆哮すると、フィールドの地面が微かに揺れた。
その重量感、そして圧倒的な防御力。
かつての可愛らしさは影を潜め、そこには戦場を支配する「城壁」の姿があった。
「すっげえ……。進化しやがった!」
サトシが驚嘆する。
「おめでとう、コドラ。……さあ、続きだ。その力、試させてもらうぞ」
模擬戦はさらに白熱した。
進化したコドラの『アイアンヘッド』がヘイガニを圧倒し、サトシも負けじと戦略を練る。
再会の喜びを、俺たちはバトルという「会話」で分かち合った。
バトルを終えた俺たちは、そのままトウカシティへと向かった。
街に入ると、ハルカとマサトの実家であるトウカジム……ではなく、まずは彼らの自宅へと招待された。
「ただいまー!」
ハルカが元気よくドアを開ける。
出迎えたのは、優しい笑顔の母親、ミツコさんだった。
「あらあら、お帰りなさい!……まあ、お友達も一緒ね」
「うん!サトシと、あとミナト君も!」
ハルカは俺の名前を呼ぶとき、少しだけ語尾を弾ませ、誇らしげに胸を張った。
「(……なんだか、パパとママにミナト君を会わせるの、ちょっと緊張するな)」
彼女は内心でそんなことを思いながら、俺をリビングへと促した。
その夜、俺たちはセンリさんの家で豪華な夕食をご馳走になった。
「……いい目をするようになったな。カナズミ、ムロ、キンセツ、フエン。……それぞれのジムで、君たちが何を得てきたか。明日のバトルで確かめさせてもらおう」
「はい!」
その後、俺たちはリビングで旅の思い出話に花を咲かせた。
ハルカは、俺が語る煙突山でのマグマ団戦やヒンバスとの特訓の話を、誰よりも熱心に、そして嬉しそうに聞いていた。
時折、ミナトと父センリの視線が交差するのを見て、ハルカは胸の奥がキュッとなるのを感じていた。
「(パパとミナト君……なんだか、すごく通じ合ってるみたい。……嬉しいな)」
自分の尊敬する父親と、今一番気になっている少年。二人が認める合う姿は、彼女にとって何よりの喜びだった。
「マサト、お前も旅を楽しんでいるか?」
「うん!僕、ポケモンのこと、もっともっと詳しくなったよ!……いつか、パパみたいな強いトレーナーになるんだ!」
マサトが胸を張る。
「そうか。……楽しみにしているよ」
夜が更けていく。
明日は、いよいよ決戦だ。
俺は、庭に出て月を見上げた。
そこへ、ハルカがそっと近づいてきた。
「ミナト君。……明日のバトル、私、全力で応援するからね!」
「ああ。ありがとう、ハルカ」
「……うん。おやすみなさい」
ハルカは小さく手を振って部屋に戻ったが、その足取りはどこか浮き立っているようだった。
トウカシティの夜風が、熱くなった俺たちの体を心地よく冷やしてくれた。
明日、この街で、俺たちの絆が試される。