アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第248話

トウカシティ。

ホウエン地方でも有数の歴史を誇るこの街の中心に、トウカジムはそびえ立っている。

和風の城郭を思わせるその建物は、ジムリーダー・センリの厳格さと誠実さを象徴しているようだった。

門の前には手入れの行き届いた松の木が植えられ、静寂の中に威厳を漂わせている。

 

「ただいま、パパ!」

ハルカとマサトがジムの門をくぐる。

「お帰り。……待っていたよ。サトシ君、ミナト君」

 

ジムの奥、道場のようなバトルフィールドで、センリさんは静かに俺たちを迎えた。

その瞳には、かつて出会った時以上の鋭い光が宿っている。

柔和な父親の顔ではなく、一人のジムリーダー、そして「壁」としての顔だ。

 

「バッジを四つ集めてきたようだな。……約束通り、君たちの挑戦を受けよう」

 

まずはサトシの挑戦だ。

「ルールは3対3。私のポケモンは、どれも『普通』のポケモンだ。……だが、それをどこまで極めているか、見極めさせてもらう」

 

センリさんの先発は、ナマケロ。

「えっ、ナマケロ?……やる気なさそうだなぁ」

サトシが拍子抜けしたように言うが、俺は知っている。

センリさんのナマケロは、ただ怠けているのではない。極限まで体力を温存し、一瞬の隙に爆発的な力を発揮する「柔の拳」の使い手だ。

 

「行くぜ!コータス、『かえんほうしゃ』!」

サトシは炎技で攻める。

ナマケロは地面をゴロゴロと転がりながら、信じられないほどの柔軟さで攻撃を回避していく。まるで液体のようだ。

「なんだあの動き!?」

 

「ナマケロ、『なまける』」

センリさんの冷静な指示。ナマケロは攻撃をかわした隙に、あくびをしながら体力を回復させる。

サトシは焦り、さらに攻撃を畳み掛けるが、それが逆にナマケロの『カウンター』を誘発した。

 

「今だ」

受け流された力が倍になって返ってくる。

「コータス!!」

優れたタフネスを持つコータスだが、自分の威力を上乗せされた一撃には耐えられず、ダウンした。

 

「……強い。ただのナマケロが、これほどとは」

タケシが唾を呑む。

 

サトシは次に、スピード自慢のジュプトルを投入した。

「ジュプトル、スピードで翻弄しろ!『リーフブレード』!」

 

センリさんはナマケロを戻し、ヤルキモノを繰り出した。

ナマケロとは対照的に、常に暴れまわるような激しい動き。

「ヤルゥゥッ!!」

ヤルキモノの『きりさく』と、ジュプトルの『リーフブレード』が空中で激突する。火花が散るような高速の斬り合い。

 

「速い……!ジュプトルのスピードに完全についてきてる!」

マサトがポケナビのデータを見ながら叫ぶ。

 

「(センリさんの戦術は、ポケモンの本能を最大限に利用しているんだ。ナマケロの『静』と、ヤルキモノの『動』。この対比に翻弄されれば、勝機はない)」

 

俺は観客席から、サトシの戦いを見守った。隣ではハルカが祈るように手を組んでいる。

サトシは、ヤルキモノの不規則な動きに戸惑いながらも、次第にそのリズムを掴み始めていた。

「ジュプトル!相手の動きを合わせるな!自分のリズムで踊れ!」

 

サトシ独自の「意外性」が、センリさんの完成された戦術に亀裂を入れ始める。

ジュプトルがヤルキモノの懐に飛び込み、渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「ヤルキモノ、戦闘不能!」

 

「……やるな、サトシ君。私のリズムを乱すとは」

センリさんは、嬉しそうに口角を上げた。

 

「だが、ここからが本当のトウカジムだ。……我が最強の相棒、出てきなさい!」

 

センリさんが最後のボールを投げた。

現れたのは、巨大な体躯を持つ森の王。

ケッキングだ。

 

「グォオオオォォォッ!!」

地鳴りのような咆哮。

その圧倒的な質量感に、スタジアム全体の空気が重く沈んだ。

ただ立っているだけで、周囲を威圧するプレッシャー。

 

「(来たな……。最強のノーマルタイプ)」

 

サトシの本当の試練は、ここからだった。

俺は、目の前に立ちはだかる「父親の壁」の大きさを、改めて実感していた。

 

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