アニポケ転生者物語 作:投稿者
トウカシティ。
ホウエン地方でも有数の歴史を誇るこの街の中心に、トウカジムはそびえ立っている。
和風の城郭を思わせるその建物は、ジムリーダー・センリの厳格さと誠実さを象徴しているようだった。
門の前には手入れの行き届いた松の木が植えられ、静寂の中に威厳を漂わせている。
「ただいま、パパ!」
ハルカとマサトがジムの門をくぐる。
「お帰り。……待っていたよ。サトシ君、ミナト君」
ジムの奥、道場のようなバトルフィールドで、センリさんは静かに俺たちを迎えた。
その瞳には、かつて出会った時以上の鋭い光が宿っている。
柔和な父親の顔ではなく、一人のジムリーダー、そして「壁」としての顔だ。
「バッジを四つ集めてきたようだな。……約束通り、君たちの挑戦を受けよう」
まずはサトシの挑戦だ。
「ルールは3対3。私のポケモンは、どれも『普通』のポケモンだ。……だが、それをどこまで極めているか、見極めさせてもらう」
センリさんの先発は、ナマケロ。
「えっ、ナマケロ?……やる気なさそうだなぁ」
サトシが拍子抜けしたように言うが、俺は知っている。
センリさんのナマケロは、ただ怠けているのではない。極限まで体力を温存し、一瞬の隙に爆発的な力を発揮する「柔の拳」の使い手だ。
「行くぜ!コータス、『かえんほうしゃ』!」
サトシは炎技で攻める。
ナマケロは地面をゴロゴロと転がりながら、信じられないほどの柔軟さで攻撃を回避していく。まるで液体のようだ。
「なんだあの動き!?」
「ナマケロ、『なまける』」
センリさんの冷静な指示。ナマケロは攻撃をかわした隙に、あくびをしながら体力を回復させる。
サトシは焦り、さらに攻撃を畳み掛けるが、それが逆にナマケロの『カウンター』を誘発した。
「今だ」
受け流された力が倍になって返ってくる。
「コータス!!」
優れたタフネスを持つコータスだが、自分の威力を上乗せされた一撃には耐えられず、ダウンした。
「……強い。ただのナマケロが、これほどとは」
タケシが唾を呑む。
サトシは次に、スピード自慢のジュプトルを投入した。
「ジュプトル、スピードで翻弄しろ!『リーフブレード』!」
センリさんはナマケロを戻し、ヤルキモノを繰り出した。
ナマケロとは対照的に、常に暴れまわるような激しい動き。
「ヤルゥゥッ!!」
ヤルキモノの『きりさく』と、ジュプトルの『リーフブレード』が空中で激突する。火花が散るような高速の斬り合い。
「速い……!ジュプトルのスピードに完全についてきてる!」
マサトがポケナビのデータを見ながら叫ぶ。
「(センリさんの戦術は、ポケモンの本能を最大限に利用しているんだ。ナマケロの『静』と、ヤルキモノの『動』。この対比に翻弄されれば、勝機はない)」
俺は観客席から、サトシの戦いを見守った。隣ではハルカが祈るように手を組んでいる。
サトシは、ヤルキモノの不規則な動きに戸惑いながらも、次第にそのリズムを掴み始めていた。
「ジュプトル!相手の動きを合わせるな!自分のリズムで踊れ!」
サトシ独自の「意外性」が、センリさんの完成された戦術に亀裂を入れ始める。
ジュプトルがヤルキモノの懐に飛び込み、渾身の一撃を叩き込んだ。
「ヤルキモノ、戦闘不能!」
「……やるな、サトシ君。私のリズムを乱すとは」
センリさんは、嬉しそうに口角を上げた。
「だが、ここからが本当のトウカジムだ。……我が最強の相棒、出てきなさい!」
センリさんが最後のボールを投げた。
現れたのは、巨大な体躯を持つ森の王。
ケッキングだ。
「グォオオオォォォッ!!」
地鳴りのような咆哮。
その圧倒的な質量感に、スタジアム全体の空気が重く沈んだ。
ただ立っているだけで、周囲を威圧するプレッシャー。
「(来たな……。最強のノーマルタイプ)」
サトシの本当の試練は、ここからだった。
俺は、目の前に立ちはだかる「父親の壁」の大きさを、改めて実感していた。