アニポケ転生者物語 作:投稿者
翌朝。トウカジムの空気は、昨日とはまた違う、冷徹な緊張感に包まれていた。
センリさんの前には、俺が立っている。
「準備はいいか、ミナト君。……君には、サトシ君の時よりもさらに厳しい条件で戦ってもらう」
「望むところです」
「ルールは3対3のシングルバトル。……だが、私のポケモンたちは昨日以上に『本気』だ。君がカントーの覇者であることを考慮し、手加減は一切しない」
バトルの幕が上がった。
センリさんの先発は、ヤルキモノ。
「ヤルゥゥッ!!」
昨日のサトシ戦で見せた以上の、凄まじい殺気を放っている。その動きには一切の無駄がなく、爪の一振りが空気を切り裂く音が聞こえるほどだ。
「(スピードと連撃か。……なら、こちらはそれを上回る『環境』で迎え撃つ!)」
俺は、最初の一匹を繰り出した。
「行け、ペリッパー!」
「ペリィィッ!!」
大きな嘴を持つペリッパーが現れると同時に、ジムの天井付近に急速に雨雲が発生した。
特性『あめふらし』。
フィールド全体に激しい雨が降り注ぎ、視界が悪化する。
「ほう、天候操作か。……だが、ヤルキモノの動きは止まらんぞ!『でんこうせっか』!」
ヤルキモノが雨の中を残像のように駆け抜ける。水しぶきを蹴散らし、ペリッパーに肉薄する。
「速い……!」
「ペリッパー、上空へ!『あまごい』でさらに雨足を強めろ!」
ペリッパーは翼を大きく広げ、雨のカーテンを厚くした。
ヤルキモノの足元が水浸しになり、ステップが僅かに狂う。
「(今だ!)」
「『しおみず』!!」
ペリッパーが嘴から大量の海水を吐き出した。
雨で濡れたヤルキモノに、高圧の水流が逃げ場なく襲いかかる。
「ヤルッ……!?」
ヤルキモノは水圧に押し流され、壁まで吹き飛ばされた。
「続けて、『ぼうふう』!」
雨の中、巨大な竜巻が発生した。
必中の暴風。ヤルキモノは必死に爪を地面に立てて耐えようとしたが、暴風の威力には抗えず、空中に巻き上げられた。
そのまま地面に叩きつけられ、戦闘不能。
「ヤルキモノ、戦闘不能!」
「……見事な環境利用だ。水技の威力を高め、かつ相手の機動力を削ぐ。……テスターらしい、合理的な戦い方だね」
センリさんはヤルキモノを戻し、二匹目を繰り出した。
「だが、これはどうかな?行け、マッスグマ!」
センリさんの二匹目は、俺と同じマッスグマ。
だが、その毛並みはより滑らかで、全身から『神速』のオーラが漂っている。
113番道路の火山灰で鍛えた俺のマッスグマとは、また違う種類の強さを感じる。
「(同種対決か。……面白い)」
俺は、自分のマッスグマを繰り出した。
「行け、マッスグマ!本物の速さ、教えてやれ!」
「マッスゥッ!!」
二匹のマッスグマが、フィールドを一直線に駆け抜けた。
目に見えないほどの超高速の衝突。
火花が散り、衝撃波がスタジアムを揺らす。
「(速い……!センリさんのマッスグマ、完全に俺の動きを読んでいる!)」
「ミナト君、マッスグマの強さは直線的なスピードだけではない。……その加速を利用した”いなし"だ!」
センリさんのマッスグマが、俺のマッスグマの突進を受け流し、そのまま尻尾で足を払った。
「(しまっ……!)」
トウカジム戦、中盤。
ノーマルタイプの深淵が、俺の前に立ちはだかっていた。
俺はこの「速さの迷宮」を、どう打ち破るか。
仲間との絆が、今、試されようとしていた。