アニポケ転生者物語 作:投稿者
二匹のマッスグマによる、限界を超えたスピードバトル。
センリさんのマッスグマは、俺の指示を先読みするかのような完璧な機動で翻弄してくる。
「マッスグマ、『はらだいこ』!」
隙を突いて、センリさんのマッスグマが自身の体力を削り、攻撃力を最大まで引き上げた。その全身から、制御しきれないほどの闘争本能がオーラとなって溢れ出す。
「(一撃で終わらせる気か……! まともに受ければ沈む。なら!)」
「マッスグマ、受けるな! 『しんそく』で真っ向から相打ちに持ち込め!」
俺の叫びに応え、俺のマッスグマもまた極限の加速を見せた。二匹の白い閃光が、フィールドの中央で正面衝突する。
凄まじい衝撃波が観客席まで届き、土煙が舞い上がる。
煙が晴れた時、そこには力尽きた二匹のマッスグマが横たわっていた。
「両者、戦闘不能!」
審判の声が響く。これで俺の残る手持ちは一体。そして、センリさんも次が最後の一体だ。
「……ふむ。相打ちを選んだか。君の決断の速さ、そしてマッスグマの迷いのない突撃。実に見事だ」
センリさんはマッスグマを戻すと、慈しむように最後のボールを握りしめた。
「さあ、真打の登場だ。……暴れなさい、ケッキング!」
「グォオオオォォォッ!!」
地鳴りのような咆哮と共に現れたのは、トウカジム最強の守護神、ケッキングだった。
その圧倒的な質量感と、全身から漂う「王」の風格。サトシを絶望の淵に追い込んだあの巨躯が、今度は俺の前に、超えなければならない最後の壁として立ちはだかる。
「(ケッキング……。まともにやり合えば、伝説のポケモンですら危うい破壊力だ。……だが、俺にはこの日のために鍛え上げた『最強の盾』がいる!)」
俺は、最後の相棒を繰り出した。
「頼むぞ、コドラ! お前の全てを、この一戦に刻め!」
「コドォッ!!」
白銀の重装甲を纏い、より重厚に進化したコドラが、大地を割らんばかりの勢いで踏みしめる。
「ほう、ココドラがコドラに進化したか。……だが、私のケッキングの拳は、鋼の鎧すら紙細工のように粉砕するぞ!」
「ケッキング、『爆裂パンチ』!!」
ケッキングが大きな欠伸をした直後、爆発的な瞬発力で距離を詰めてきた。
巨大な拳が空気を圧縮し、コドラの脳天を狙って真っ直ぐに振り下ろされる。
「コドラ、逃げるな! 衝撃を全て受け止めろ! 『メタルバースト』!!」
コドラは逃げ道を捨て、四肢を地中深くにめり込ませて踏ん張った。全エネルギーを装甲の表面へと集約させ、鏡のような磁場を形成する。
ケッキングの拳がコドラの頭部を直撃した。スタジアムの床が陥没し、激しい衝撃波が周囲の岩壁を砕く。
「コドラ!!」
観客席からハルカの悲鳴が上がる。
だが、砂煙の中から現れたのは、装甲を真っ赤に熱しながらも、一歩も退かずに耐え抜いたコドラの姿だった。
「コォ……!!」
「耐えた……!? あのフルパワーの拳を真正面から!」
サトシが驚愕の声を上げる。
「今だ! 溜め込んだケッキングのパワー、倍にして返してやれ!!」
「コドォォォォォォッ!!!」
コドラの装甲から、眩いばかりの青白い衝撃波が放射された。
ケッキングの怪力、そのすべてをエネルギーとして反射した、不条理なまでのカウンター。
至近距離でその直撃を受けたケッキングが、その巨体を大きくのけぞらせ、呻き声を上げた。
「(まだだ、これだけじゃ終わらない!)」
「コドラ、間髪入れずに『アイアンヘッド』!」
「コドォォォッ!!」
コドラはメタルバーストの反動を根性でねじ伏せ、無防備な胸元へ鋼鉄の頭突きを見舞う。
しかし、ケッキングは倒れない。逆にコドラの体を巨大な腕で鷲掴みにした。
「さすがだ。……だが、我がケッキングのスタミナは底なしだよ。……『なまける』!」
ケッキングが余裕の欠伸をし、その生命力を一気に回復させようとする。
「させるか! ゼロ距離で……『はかいこうせん』だぁぁ!!」
「コォォォォォッ!!」
掴まれたままの状態で、コドラが口内にエネルギーを凝縮させる。
至近距離――いや、密着状態での破壊光線。
逃げ場はない。
スタジアムを埋め尽くす白い光と爆煙。
やがて煙がゆっくりと晴れていった時。
そこには、膝をつき、肩で激しく呼吸しながらも、しっかりと大地を踏みしめて立っているコドラと。
そして、その足元で、完全に力尽きて横たわるケッキングの巨体があった。
「……ケッキング、戦闘不能! よって勝者、挑戦者ミナト!!」
「……やった……。勝ったんだな、俺たち」
俺は膝をつき、震える手で汗を拭った。
ギリギリの、本当に紙一重の勝利だった。
スタジアム中に一瞬の静寂が広がり、直後、それを打ち消すような割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。
その中で、ハルカは両手を胸の前で固く組み、潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「(すごい……。本当に、パパに勝っちゃった。……なんて強くて、かっこいいんだろう)」
彼女の心臓は、激しいバトルの興奮とはまた別の、熱い何かのために激しく鼓動を打っていた。
「よくやった、コドラ。お前は最高のパートナーだよ」
俺が駆け寄ると、コドラは嬉しそうに俺の肩に頭を預け、そのまま心地よい疲労感の中で眠りに落ちた。
センリさんは、静かに拍手をしながらこちらへ歩み寄ってきた。その表情は、負けた悔しさよりも、新たな時代の息吹を感じた喜びで溢れていた。
「……素晴らしい。コドラの耐久力、そして君の土壇場での機転。……君の戦いには、迷いがないね。誇りなさい、シロガネ大会の覇者よ」
センリさんは、俺にバランスバッジを手渡した。
「これで五つ目だ。……このバッジに恥じない、さらなる高みを目指しなさい」
「ありがとうございます、センリさん」
俺はバッジを高く掲げた。
これでホウエン編の大きな山場を一つ越えた。
だが、俺たちの旅は、これからさらに激しさを増していくだろう。
ジムを出ると、サトシたちが駆け寄ってきた。
「ミナト! すっげえよ! あのメタルバーストからのはかいこうせん、シビれたぜ!」
サトシが興奮気味に俺の肩を叩く。
「ミナト君……本当にお疲れ様。……すごかったよ」
ハルカが、少し遠慮がちに、でもしっかりと俺の腕に触れた。
「私、今日確信したよ。……ミナト君は、いつか本当に世界一のトレーナーになるって」
「……ああ。ありがとう、ハルカ。お前の応援、届いてたぞ」
俺がそう言うと、ハルカは顔を真っ赤にしてうつむいたが、その手はしばらく俺の腕を離そうとはしなかった。
「(さて、次はどこへ行こうか)」
俺は、遠く北東の空、ヒワマキシティの方角を見据えた。
そこには、空を統べる強敵。そして、世界を揺るがす二つの組織の巨大な影が待っている。