アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第266話

アクア団のアジトでの死闘を辛うじて潜り抜けた俺たちは、夕闇に包まれ始めたミナモシティの港へと戻った。アオギリたちが奪い去った潜水艇『サブマリン・エクスプローラー1号』は、既に漆黒の深海へとその姿を消しており、レーダーでも追いきれない深度に達している。しかし、ポリゴンZが解析した断片的なログによれば、彼らの目的地は伝説の超古代ポケモンが眠るという『海底洞窟』で間違いなかった。

 

「トクサネシティ行きの定期フェリーは……。よし、まだ最終便に間に合うぞ!」

タケシが掲示板の時刻表を素早く確認し、俺たちを誘導する。トクサネシティは、ホウエン地方の東の果てに浮かぶ島だ。そこには最先端の宇宙センターがあり、そして双子のジムリーダー、フウとランが守るトクサネジムが存在する。

 

「急ごう! 奴らに先を越されるわけにはいかない!」

サトシの言葉に弾かれるように、俺たちは乗船手続きを済ませ、大型フェリーへと駆け込んだ。

 

船がゆっくりと岸を離れる。遠ざかっていくミナモシティの灯火。昼間のコンテストの華やかさと、地下アジトでの殺伐とした光景が脳裏をよぎる。潮風が頬を叩き、戦いの熱を冷ましてくれた。

 

甲板に出た俺たちは、重い空気の中で今後の作戦を練り始めた。

「海底洞窟へ辿り着くには、水深数百メートルの水圧に耐えられる『ダイビング』の技術が不可欠だ」

ハルカが図鑑の機能拡張データを読み上げながら、不安げに呟く。

「ダイビング……。単に泳げるだけじゃダメなんだな」

サトシがピカチュウの頭を撫でながら考え込む。通常のポケモンでは、深海の凄まじい圧力と完全な暗闇には対応できない。

 

俺の手元には、空を統べるペリッパーと、そして美しき水の化身ミロカロスがいる。

「ミロカロスなら、深海という極限環境でも自由に動き回れるはずだ。だが、俺たち人間が同行するには特殊な装備か、あるいはポケモンの不思議な力によるサポートが必要になる」

俺は腰のボールに触れた。ミロカロスの温かな鼓動が伝わってくる。彼女がいれば道は開けるはずだが、それでもなお、深海は未知の領域だ。

 

「俺のヘイガニも、進化すれば少しは力になれるかもしれないけど……」

サトシが悔しそうに言う。実力差を痛感したアジトでの敗北が、彼を突き動かしていた。

 

「焦ることはない。トクサネには、石の洞窟で出会ったダイゴさんもいるはずだ。彼なら深海の地理にも詳しいだろう」

俺はダイゴからのメールを読み返した。トクサネの別荘で待っているという彼の言葉が、今は何よりの頼みの綱だった。

 

船は順調に東へと進み、夜の海を切り裂いていく。時折、海面を跳ねるホエルコの巨大な背中が見え、その雄大さに圧倒される。

やがて水平線の向こうに、ひときわ明るい光を放つ島が見えてきた。トクサネシティだ。

島の中心には、天を衝くようにそびえ立つ白いロケット発射台が見える。

 

「あれが宇宙センター……。海から宇宙へ、本当に不思議な島だね」

マサトが双眼鏡を覗き込み、興奮を隠せない様子で叫ぶ。

 

「ここでの目的は三つだ。トクサネジムのバッジ獲得。深海を征くための『ダイビング』の習得。そして、何としてもアクア団の野望を阻止すること」

俺は自分に言い聞かせるように、決意を口にした。

 

港に到着し、タラップを降りた俺たちの前に、意外な人物が立っていた。

「やあ、待ちくたびれたよ。ミナモでの騒ぎは聞いていたけれど、随分と泥臭い顔をしているね」

街灯に照らされた緑色の髪。赤い薔薇を一輪持ち、キザな笑みを浮かべる少年。ハルカのライバル、シュウだった。

 

「シュウ!? なんであなたがここに……!」

ハルカが驚愕の声を上げる。

「フン、トクサネの近くでも大規模なコンテストが開かれる予定なんだ。ミナモでの君の優勝……あれがただの幸運じゃなかったことを、この僕に証明してもらうよ」

シュウは不敵に笑い、ハルカに冷徹なライバル宣言を叩きつける。その瞳の奥には、彼もまたこの異常な地磁気の乱れを感じ取っているような、鋭い光があった。

 

「望むところよ! 次も私が勝つんだから!」

ハルカも負けじと、リボンケースを握りしめて言い返す。

 

俺とサトシは顔を見合わせた。

「どうやら、想像以上に忙しくなりそうだな」

「ああ。でも、面白くなってきたぜ! 伝説もジムもコンテストも、全部まとめて相手をしてやる!」

 

トクサネシティ。

海と宇宙、そして双子の心が交差する神秘の島。

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