アニポケ転生者物語 作:投稿者
サトシの激闘が終わり、興奮冷めやらぬスタジアムの空気が、ミクリさんの優雅な一挙手一投足によって再び静謐な緊張感へと書き換えられていく。
「さあ、幕開けだ! ……美しき水の調べに乗せて、舞い踊れ、ラブカス!」
ミクリさんの先発は、ハートの形をした可憐なポケモン、ラブカス。だが、その小さな体から放たれるのは、熟練したコーディネーターだけが持つ、隙のない洗練された覇気だった。
「可愛い見た目に惑わされるなよ。……行け、サーナイト! お前の『静寂』を見せてやれ!」
俺は最初の相棒としてサーナイトを選んだ。
「サナッ!」
純白のドレスのような羽を夜風になびかせ、サーナイトが水面に浮かぶ浮島へと降り立つ。彼女の赤い瞳には、既にミクリさんのポケモンの動きを予測する、冷徹なまでの演算の光が宿っていた。
「ラブカス、『てんしのキッス』!」
ミクリさんの指先が空を舞うと、ラブカスが可愛らしい仕草で投げキッスを送る。そこから放たれた無数のハート型のエネルギーが、不規則な軌道を描いてサーナイトに殺到する。当たれば精神を掻き乱され、混乱状態に陥る厄介な技だ。
「サーナイト、視覚情報に頼るな。心の鏡を曇らせるな! 『めいそう』!」
サーナイトは飛来するエネルギーを直視せず、静かに目を閉じて精神を極限まで統一した。彼女の周囲に展開された目に見えない精神障壁が、ハートのエネルギーを霧散させる。
「ほう、心のガードがこれほどまでに堅いとはね。……なら、これならどうだい? 『みずのはどう』!」
ラブカスが水面を尾びれで叩くと、同心円状の波紋が広がり、不規則な波動となってサーナイトを襲う。さらに、ラブカスは『メロメロ』を織り交ぜ、こちらの攻撃意欲を執拗に削ごうとしてくる。
「幻惑と状態異常のコンビネーションか。……だが、俺たちの絆は、そんな小細工で揺らぐほど脆くない!」
俺はデバイスの感度を最大にし、水面の微かな振動データをサーナイトへ直接送り込んだ。
「サーナイト、波の音を聞くな、水の『流れ』を感じ取れ。本体の座標を特定するんだ!」
サーナイトは目を閉じたまま、浮島を伝わってくる微細な振動から、残像を生み出しながら高速移動するラブカスの真の位置を瞬時に弾き出した。
「(そこだ!)」
「『10まんボルト』!」
サーナイトがカッと目を見開き、両手から黄金の電撃を放った。
「なっ、水タイプの対策も完璧というわけか!」
ミクリさんが驚愕の声を漏らす。かつてキンセツシティでテッセンさんから贈られた技マシンによる、特訓の成果だ。電撃は水面を導体にして一気に広がり、逃げ場を失ったラブカスを直撃した。
「キュウッ!?」
ラブカスは全身を痺れに焼かれ、水面で動きを止める。
「トドメだ! 『サイコキネシス』で水ごと拘束しろ!」
サーナイトの強大な念動力が、ラブカスを包む水球ごと空中に持ち上げた。
「そのまま重力を味方につけて、フィールドへ叩きつけろ!」
重圧を受けた水球が弾け、ラブカスは成す術なく水上の浮島へと叩きつけられ、目を回してダウンした。
「ラブカス、戦闘不能! ……素晴らしい。優雅さの中に、計算され尽くした確かな破壊力を秘めているね、ミナト君」
ミクリさんはラブカスを優しくボールに戻すと、満足げに微笑み、二つ目のボールを手に取った。
「だが、私の水のイリュージョンは、ここからが真の本番だよ。……出ておいで、ナマズン!」
二匹目は、地面・水タイプのナマズン。
その愛嬌のある顔とは裏腹に、地面タイプを併せ持つことで、先ほどのサーナイトの電気技を完全に無効化してくる天敵だ。
「サーナイト、一旦戻れ。……相手の土俵で戦う必要はない。相性でねじ伏せるぞ!」
俺はサーナイトを労いながら戻し、次に選んだのは、このホウエンの空と海を知り尽くした相棒。
「雨を呼び、嵐を制する翼。……頼むぞ、ペリッパー!」
「ペリィィィッ!!」
ペリッパーが大きく羽ばたいてフィールドに現れると同時に、ルネの空にたちまち暗雲が立ち込め、激しい雨が降り始めた。特性『あめふらし』による、フィールドの完全制圧。
ミクリさんの得意とする水技の威力を高めつつも、こちらの水技もまた、限界を超えた出力を得る。
「天候の上書き合戦になるか、それともこのまま押し切れるか。……行くぞ、ミクリさん!」
「望むところだ! この雨さえも、私の舞台の演出に変えてみせよう!」
激しく降りしきる雨の中、水上スタジアムでの第2ラウンドが幕を開けた。