アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第287話

降りしきる雨が、水上スタジアムの視界を白く染め上げていく。ペリッパーの特性『あめふらし』がフィールドを完全に支配する中、ミクリさんは余裕の笑みを崩さず、二体目のナマズンに指示を飛ばした。

 

「ナマズン、『じしん』!」

ナマズンが巨大な尾びれで水面を叩き、強力な衝撃波をフィールド全体に走らせる。だが、悠然と宙を舞うペリッパーには一切のダメージが届かない。

「ふふ、空に逃げるのは賢明な判断だ。……だが、私の水の世界に逃げ場などないよ! 『いわなだれ』!」

ナマズンの咆哮と共に、どこからともなく出現した巨大な岩石が、降り注ぐ雨を切り裂いてペリッパーへと殺到する。

 

「ペリッパー、逃げるな! 雨雲の層まで高度を上げろ、姿を隠すんだ!」

ペリッパーは俺の指示に完璧に応え、一気に上空の厚い雨雲の中へと姿を消した。降り注ぐ岩石は目標を見失い、虚しく水面を叩いて飛沫を上げる。

「姿が見えなくても、波導で位置は把握できるよ。……『みらいよち』!」

ナマズンの瞳が怪しく光り、数分後に訪れるであろう「必然の攻撃」を空間にセットする。悠長に構えていれば、不意の衝撃に足元を掬われるだろう。

 

「(長期戦は不利だ。天候のアドバンテージがあるうちに決める!)」

俺はデバイスの気流解析データをペリッパーに転送した。

「ペリッパー、今だ! 雨のカーテンを突き抜けて急降下! 最大出力の『ハイドロポンプ』!」

雲を割り、弾丸のような速度でペリッパーが降りてくる。雨で威力を増幅させた極太の水流が、水面に浮かぶナマズンを真っ向から捉えた。

「ナマーッ!?」

地底湖の主のようなタフさを誇るナマズンだが、この一撃には耐えきれず、大きくよろめく。

 

「トドメだ! 雨の中なら必中……『ぼうふう』!!」

ペリッパーが巨大な嘴を開き、局地的な上昇気流を発生させる。暴風がナマズンを水ごと巻き上げ、スタジアムの天井付近まで放り投げた。混乱と衝撃。ナマズンは目を回し、そのまま水面へ力なく落下した。

 

「ナマズン、戦闘不能!」

「……やるね、ミナト君。雨を味方につけた戦い、見事だよ」

ミクリさんはナマズンを戻すと、一瞬だけ表情を引き締めた。その手に握られた三つ目のボールからは、凍てつくような冷気が漏れ出していた。

「では、この重量級の圧力はどうかな? 出ておいで、トドゼルガ!」

 

三匹目は、氷・水タイプのトドゼルガ。

分厚い脂肪でダメージを軽減し、絶対零度の冷気を自在に操る、攻防一体の要塞。ペリッパーにとって、氷技は致命的な弱点だ。

 

「ペリッパー、先手必勝だ! 『ぼうふう』で距離を……」

「トドゼルガ、一瞬で終わらせなさい。……『ぜったいれいど』!!」

ミクリさんの声が冷徹に響く。

瞬間、スタジアムの空気が物理的に凍りついた。ペリッパーが回避行動を取るよりも早く、極低温のエネルギーが彼の翼を、そして体を包み込み、一瞬にして巨大な氷の彫像へと変えてしまった。

「ペリッパー!!」

「……ペリッパー戦闘不能。一撃必殺……恐ろしい技だ」

俺は唇を噛み、相棒をボールに戻した。これがジムリーダー、そしてチャンピオン候補としての「底」のない強さか。

 

「(スピードで、思考の先を行くしかない。……防御を捨てて、一点を貫く!)」

俺は、今回のバトルのために用意していた、最も攻撃的な相棒を選んだ。

「行け、マッスグマ! お前の『速さ』を見せてやれ!」

「マッスゥゥッ!」

白い閃光と共に現れたマッスグマが、低い姿勢でトドゼルガを睨みつける。

 

「マッスグマ、『はらだいこ』!」

マッスグマが自身の腹を激しく叩き、体力を削る代わりに攻撃力を極限……限界以上にまで引き上げた。全身から溢れ出す、制御不能なほどの闘争心。

「捨て身の陣形か。……だが、当たらなければ意味がないよ。トドゼルガ、『ふぶき』!」

トドゼルガが咆哮し、スタジアム全体をホワイトアウトさせるほどの猛吹雪がフィールドを覆い尽くす。視界はゼロ。氷の礫がマッスグマの体力をさらに削っていく。

 

「マッスグマ、視覚を捨てろ! 心臓の鼓動だけを信じて突っ込め! 『しんそく』!!」

マッスグマは吹雪という壁をその身で切り裂き、物理法則を無視した加速でトドゼルガの懐へと肉薄した。あまりの速さに、ミクリさんの目さえも一瞬、その影を見失う。

 

凄まじい衝突音。マッスグマの全体重と速度を乗せた体当たりが、トドゼルガの巨大な腹部を陥没させ、その巨体をスタジアムの壁まで弾き飛ばした。トドゼルガは呻き声を上げる間もなく気絶。

だが、同時にマッスグマも、吹雪のダメージと『はらだいこ』による消耗に耐えきれず、勝利を見届けるようにその場に崩れ落ちた。

 

「……トドゼルガ、マッスグマ、共に戦闘不能! 引き分けだ!」

審判のジャッジが下る。

 

「……相打ちか。君のポケモンたちの、勝利への覚悟……しっかりと伝わったよ」

ミクリさんは静かに四匹目のボールを掲げた。

「さあ、ここからは美しさの真髄、究極の競演といこうか。……舞い踊れ、我が最愛のパートナー。ミロカロス!」

 

眩い光と共に現れたのは、ミクリさんの代名詞、世界一美しいと称されるミロカロス。その優雅な鰭が、雨に濡れてさらに神秘的な輝きを放つ。

 

「(来たな……。待っていたぞ、この瞬間を)」

俺は、自分自身の腰にある、同じ名前の相棒が入ったボールを握りしめた。

「行け、ミロカロス! 俺たちが辿り着いた『美』……今ここで証明してやれ!」

 

「ミロォォォォォォ……」

俺のミロカロスが、虹色の鱗を全身で輝かせながら、対峙するように水面から姿を現した。

フィールドに並び立つ、二体の美しき水神。

観客席からは、息を呑むような静寂の後、割れんばかりの歓声が巻き起こった。

 

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